次に、キヤノン イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二開発センター 所長である塩見泰彦氏がEOS-1D X Mark IIの技術詳細について解説した。同氏はフィルムカメラの時代からAFやISなどの開発に関わっていたが、EOSシリーズにはデジタルになってから参加したとのことだ。

キヤノン イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二開発センター 所長 塩見泰彦氏

読み出し速度が1.6倍にパワーアップしたCMOSセンサー

EOS-1D X Mark IIのフルサイズCMOSセンサーは新開発された約2,020万画素のもの。前モデルのEOS-1D Xが約1,810万画素なのでスペック的にも向上しているが、中身はそれ以上の進化を遂げているとのことだ。

とくに画像情報の読み出し速度に関しては飛躍的に向上。垂直方向の読み出し、水平方向の読み出しを複線化、高速化することにより、EOS-1D Xに対して約1.6倍の読み出し速度を達成しているという。最高約16コマ/秒(ライブビュー撮影時)、4K/59.94fpsの動画撮影を可能にした背景がここにある。また、内部処理回路をできるだけシンプルにすることでノイズを低減、高感度画質はもとより、低感度における暗部のノイズも減らしているそうだ。

EOS-1D X Mark IIのフルサイズCMOSセンサー

DIGIC 6+ならではの高速&高画質

画像エンジンも「DIGIC 6+」に刷新している。名称末尾に「+」がつけられている通り、DIGIC 6をさらにパワフルにした別物だ。EOS-1D X Mark IIでは、DIGIC 6+をデュアル搭載し、「静止画の高速処理&NR処理」「4K動画対応」「回折補正を含んだ各種光学補正」「高速外部インタフェース」などの機能を実現している。高速外部インタフェースは、USB 3.0やCFの上位規格であるCFast 2.0の接続を可能にしているとのこと。塩見氏は「とにかく高速かつ高画質というのがDIGIC 6+」と語っていた。

デュアルDIGIC 6+を搭載したメイン基板

動体にさらに強くなったAF

AFに関してもフラッグシップ機らしい進化が見られる。測距点は前モデルと同じ61点だが、中央測距エリアは縦に約8.6%、左右測距エリアは縦に約24%にエリアが拡大されており、激しく動く動体がさらに捉えやすくなっている。また、すべての測距点でF8に対応、低輝度限界も-3EVに対応している。

AIサーボも新しい「AIサーボAF III+」となっており、アルゴリズムが強化されている。たとえば、自動車レースでヘアピンコーナーに高速で近づき、突然向きを変えて遠ざかっていくというシーンは今までは苦手だったのだが、被写体の移動速度の変化を瞬時に判定し、複数の移動体予測パターンの中から適合するものをチョイス、それに合わせて直ちにAF駆動方法を変えることで追従性度が飛躍的に向上しているそうだ。

AF性能も著しく向上

高速連写を実現する新メカニズム

EOS-1D X Mark IIの連写機能は、ミラー動作時で約14コマ/秒、ミラーアップ (ライブビュー撮影) 時で約16コマ/秒と秒間2コマほど高速化されている。EOS 7D Mark IIで初めて投入された、モーターの速度制御とカム機構でミラーを動かす方法に変更。これにより、ミラーが上下するときに発生する振動を瞬時に抑制、とくにダウン時における短時間での安定化ができたとのことだ。「たかだか2コマではありますが、この2コマによりさらなる写真表現を提供できるはず」との話だ。とくに今年はリオ五輪を控えている。どのような名シーンがEOS-1D X Mark IIによって切り出されるのか楽しみである。