スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「LPDDR」についてです。

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CPU/SoCが直接アクセスする主記憶装置(メインメモリー)には、高いデータ転送性能とともに省エネ性能が求められます。LPDDRは「Low Power DDR」の略称ということからもわかるとおり、DDR SDRAMの低電圧・低消費電力版という位置付けです。電力消費量にシビアなスマートフォンやタブレット、ノートパソコンにおいて主流のメモリー規格となっています。

SDRAMを含むDRAM(ダイナミックRAM)は、回路規模を小さくして集積度を高めることで、チップあたり記憶容量を増やしてきました。シングル・データ・レート(SDR)SDRAMより低い動作電圧とすることでバス速度を向上させ、帯域幅を倍増させる(ダブル・データ・レート、DDR)ことで高速性を獲得しました。

のちに集積度を高め、より低い電圧での動作を可能にした「DDR2 SDRAM」、その改良強化版としてデータ転送レートを2倍に高めた「DDR3 SDRAM」が登場しました。現在は、クロック周波数とデータ転送レートをより高めた「DDR4 SDRAM」が主流となりつつあります。

DDR SDRAMの低電圧・低消費電力版であるLPDDR(SDRAM)には、データ保持に必要なリフレッシュ動作の間隔を自動調整する機能や、消えてもかまわないデータに対してはリフレッシュ動作を行わない機能、データは失われるが電力消費を極小化できる機能(ディープ・パワー・ダウン)など、消費電力を低減するしくみが盛り込まれています。

どのLPDDRに対応するかは、CPU/SoCの仕様に依存します。スマートフォンの場合は、新世代CPU/SoCの導入にあわせて最新のLPDDRが採用されるというパターンが常です。2016年3月現在は、より低電圧で動作するLPDDR4の派生規格「LPDDR4X」が提唱されており、ハイエンドスマートフォン向けSoCの新製品「Helio P20」が対応を明らかにしています。

DDR SDRAMの低電圧・低消費電力版「LPDDR (SDRAM)」は、スマートフォンの主記憶装置として利用されています(写真はイメージです)