適度な疲労は必要

西多先生によると、「疲労」には大きく分けて3種類あるという。1つめは「肉体的疲労」。2つめは「脳疲労」。3つめは「人とのコミュニケーションによる疲労」だ。いずれも、過度な状態はストレスの原因となるが、適度な疲労は必要だという。

「脳疲労」については、前項の実験結果からも言えるように、まったく何もしないよりは、簡単な作業をしていた方が活性化するようだ。一方、「脳は臨床心理の分野では"メンタル"として捉えている」と西多先生は説明した。つまり、「脳疲労」が過度な状態になると、メンタルに影響を及ぼし、うつ病を発症する危険性があるわけだ。「休憩時間が少ない」「仕事の拘束時間が長い」といった状況は、メンタルへ影響を及ぼす要因となっているという。

「肉体的疲労」については、「身体を動かすと、疲労因子FFと疲労回復因子FRが生成され、適度な運動をすれば疲労回復因子FRの方が多く生成される」とのことだ。

「人とのコミュニケーションによる疲労」については、「現代ではどのような場面でも"コミュニケーション能力"が求められ、それがストレスを生む原因となっている。しかし、人との関わりは人間の幸福感も生み出すもの」と語られた。では、ストレスをためないようにするには、どうすればよいのだろうか? 西多先生は次のように説明した。

「『人から言われてやらされている』『自分のためになっている気がしない』と感じると、ストレスとして認識される。ストレスに強い人は、ストレスを見直す力がある人。『これは自分のためになっているんだ』と思って取り組むことで、ストレスの再設定が行える」

必見! コンピューター関連職に特化したストレスチェック

昨年12月には、「ストレスチェック制度」が施行となり、従業員数50名以上の企業では、従業員のストレスをチェックすることが義務化された。

厚生労働省では、ストレスチェックの項目として、57項目の「職業性ストレス簡易調査票」を提供しているが、西多先生は、コンピューター関係の職種の人に特化したというストレスチェック項目を提示した。これは、大阪経済大学の田中健吾先生が考案したもので、これによる実際のストレス判定の基準などは、まだ具体的に示されていないとのことだが、下記の15項目がこれにあたる。

  • 仕事のスケジュールがころころ変わる
  • 休憩時間が少ない
  • 仕事の持ち場が絶えず変わる
  • 残業時間の多い職種である
  • 納期に追われて仕事をしている
  • 作業時間が長い
  • 将来的にこの仕事を続けているかわからない
  • 雇用形態が不安定である
  • いつも出向先で仕事をしなければならない
  • いくら仕事をがんばっても給与に反映されない
  • 見通しを立てにくい仕事だ
  • 徹夜で残業することがある
  • 緊急のトラブル対処が求められる
  • 対人関係を良好に保つことが難しい業務だ
  • 拘束時間が長い

上記項目に対して、

  1. まったく当てはまらない
  2. あまり当てはまらない
  3. どちらでもない
  4. やや当てはまる
  5. かなり当てはまる

で回答し、その点数によってストレス度合いを測る。

「まだ何点以上からはよくないといった指標はないが、75点満点中70点以上だと、やばいのではないだろうか」(西多先生)

とは言え、なかなか自分で仕事量や勤務時間などをコントロールすることは難しいだろう。こうした問題に対し、西多先生は、「まずできることからやっていくことが重要」だとした。

例えば、肉体面の疲労を抑えるためには、骨盤矯正ベルトやブルーライトカットのメガネなど、現在さまざまな健康機器が販売されており、それらを活用するのは手である。メンタル面に気をつけるには、「休日の間に次の休暇の計画を練ることがポイント」と、西多先生は話した。

「平日だと、休日の計画をする余裕がなくなる。休みのうちに、次の休みの計画をしておくことが重要」(西多先生)

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ブレスト風景

以上が、西多先生による研修の内容となる。

研修後、カヤックでは「カヤックメンバー全員がやりたくなる、健康でいられるアイデア」をお題に、ブレストが行われた。その中で出てきた案が以下となる。

  • オフィスのデスクが卓球台
  • スクワットをしながらブレストする
  • 「お前休み!」と他人から突然言い渡される「どっきり休暇」
  • 自分の名刺に健康法を書く
  • 夢の中で思いついたアイデアが採用されると残業代がつく「夢残業」
  • 雑務をビュッフェ形式でやりながら休憩する
  • 疲れてくるとマウスカーソルが重くなり、自分では気づきにくい疲れを機械で察知
  • 給料の代わりにバナナなどがもらえる「栄養補給(料)」

読者の皆さんも、西多先生の言う通り、「まずはできることから」始めてみてもらいたい。