【レポート】

オバマ大統領も活用した行動経済学理論で、青少年のスマホ依存解消に道筋?

 

スマートフォンに依存しがちな現代生活だが、子供の頃にこの体験をしていたらどんな大人になっていただろうか? もちろん、「適度な利用を心がけて勉強とのバランスを取る」という人もいるだろうが、テレビ漬けの生活だった筆者にとってみれば、「起きている時間はほとんど遊んでいるだろうな」という推測しか立たない。

実際に、内閣府の「平成26年度青少年のインターネット利用環境実態調査」の結果によると、高校生のスマートフォン平均利用時間は1日2.58時間、10人に1人は5時間以上の利用が明らかになっている。さらに民間のデジタルアーツによる調査では、女子高生の3.9%が1日15時間もスマートフォンを利用しており、「朝起きたらスマホ、授業中もスマホ、寝る前までスマホ」という状態になっているようだ。

内閣府調査

デジタルアーツ調査

青少年のスマートフォン利用に対する制限措置では、前述のデジタルアーツが提供する有害サイトブロックなどのフィルタリングサービスや、KDDIが提供する子供向けスマートフォン「miraie」などがある。miraieは、端末の利用時間を制限でき、使えなくすることで勉強時間の確保を行える。ただ、こうした制限は、辞書アプリなどの勉強に有益な使い方さえブロックしてしまうため、スマートデバイスのメリットさえ打ち消してしまう問題がある。

"こづく"で学習の大切さに"気付き"を

そこで、勉強と遊びのバランスを取るためにKDDI研究所が開発し、3月7日に提供を開始したアプリが「勉強うながしホーム」だ。

このアプリは、単なる利用制限アプリ、というわけではなく、Richard H. Thaler氏とCass R. Sunstein氏の共著で行動経済学の「NUDGE」の理論にもとづいている。NUDGEは、"人をこづいて気付かせる"という意味があり、象が鼻でこづくイメージが語源とされているようだ。この理論は公共政策などに取り入れられており、オバマ大統領が積極的に活用していることでも知られている。

NUDGEの考え方は、指導役が子どもたちへ強制的に何かを"させる"のではなく、自ら望ましい行動をとれるように支援する"うながし"を行う。つまり、これをスマホ利用に応用するとするならば、スマートフォンにのめり込んでしまいがちな青少年に、利用制限という強権をふるうのではなく、適切な利用方法を維持・強化しつつも、適正ではない利用を減らすというアプローチになる。

KDDI研究所の健康・医療ICTグループで研究主査 工学博士の本庄 勝氏は「新しい青少年保護の施策として、これまでの青少年のスマートフォン利用をやめさせるような強制的なものではなく、かといってYouTubeなどのエンターテイメントにのめり込みがちな不適セル利用を減らす中間的な、自由度をもたせた枠組みを提案したいと思い、開発を行いました」と、開発の目的を語る。

KDDI研究所 健康・医療ICTグループ 研究主査 工学博士 本庄 勝氏

アプリは"ホームアプリ"であるため、Androidアプリでの提供となる(iOSアプリは検討中)。前述の"うながし"を主眼に、ホーム画面を何でも利用できる「通常モード」と、勉強に集中する「勉強モード」に切り分け、設定時間ごとにモードが遷移する。通常モードと勉強モードにはそれぞれ、利用するアプリを指定し、勉強モードであれば辞書や電卓、勉強サイトのみにフィルタリングしたブラウザと制限を課す。一定の時間を超えれば通常モードに戻し、自由に遊べるようになる。

ここで重要となるのが"うながし"であり、NUDGEにもとづく「Feedback」や「Incentive」「Group Bias」「Min.Monitor」などの"うながしコンテンツ"を独自に用意した。

例えば、Feedbackでは、勉強時間のトータルを把握できるほか、ホーム画面がひび割れするエフェクトをかけることで「勉強モードに戻さなければ」という意識付けを行う。また、わかりやすい例はGroup Biasだろう。いわゆる"同調圧力"にも近いが、「ほかの友達が勉強に取り組んでいるよ」とユーザーの子供に気付かせることで、勉強モードに戻させる。また、保護者キャラクターを登場させるMin.Monitorでは、保護者が仕事で家にいない場合でも一定のお目付け役として機能させるようにする。

このアプリは同研究所でトライアルを行うほか、3月6日に兵庫県猪名川町で行われた「INAGAWA スマホサミット 2016」で、同町の子どもたちによる「うながしコンテンツ」の特別版が公開した。これは、子どもたちのアイデアでうながしコンテンツの独自キャラクターを作るというものだ。

独自キャラクターは、「いかにスマートフォンで勉強と向き合うか」という考えを子どもたち自身が昇華した結果、「キャラクターの成長」というコンテンツ制作に結びついたという。うながしコンテンツのキャラクターが成長すれば、「もっと育てたい」というインセンティブに繋がるわけで、このインセンティブは先ほどの「NUDGE」でも触れられた要素の一つとなる(Google Playでダウンロード可能)。

INAGAWAの独自キャラクターを成長させることで、楽しみを勉強に活かす

本庄氏は最後に、同アプリについて「少し前に、とある自治体でスマートフォンの夜間利用を制限するという話があり、物議をかもした。青少年保護の施策は、対応策がなかなか限定的で、手放し、もしくは厳格化と中間を埋める仕組みがなかなかなかった。親御さんも完全に見放すわけにはいかないし、こういうアプリの提案を行うことで、安心、につなげていただければと考えている。サービスを提供する事業者としても、最終的には青少年保護の一つの手法として、社会に受け入れていただけるようなサービス作りを進めたい」と将来の位置づけについて話した。

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