IBM Watsonとの棲み分けは?

質疑応答には冨澤氏、平野氏の両社長が対応した。価格、販売形態について平野氏は「乞うご期待、といったところ。現在、詰めている」と回答。またプラットフォームにPepperを絡ませる利点について、冨澤氏は「例えば翻訳に関してはPCやスマホなどの端末を使う方法もあるが、人型ロボットを使うことで利用者はより感情移入しやすくなる。また、Pepperには表現力もある。ソリューション全体で考えたとき、Pepperが貢献している部分は大きい」との見方を示した。

記者団の質問に答える冨澤氏(左)と平野氏(右)

海外展開について、冨澤氏は「今秋は日本国内だけで展開する」としながらも、将来的には、グローバルも視野に入れているという。他業種への展開について、同氏は「小売り以外は、介護施設、ハウスメーカーなどから引き合いがあり、例を挙げていけばきりがない。そのうちの一部は、マイクロソフト社との提携になる」と説明している。

このあと冨澤氏は、記者団の囲み取材にも応じた。この中で多くの質問があがったのは、IBM Watsonとの棲み分けについて。ちなみにWatsonとは、情報から学び、経験から学習する米IBMの人工知能システムだ。ソフトバンクではIBMと共同でWatsonの開発を進めており、Pepperへの活用も期待されている。マイクロソフトとの取り組みとIBM Watsonを、どのように使い分けていく方針なのだろうか。

これについて、冨澤氏は「ニーズに適したものを使っていきたい」とコメント。明確な線引きについては触れず、「IBM WatsonはAIであり、Microsoft Azureは分析機能に優れている。利用者のQ&Aに答えるのはIBM Watsonの方が得意で、売上や在庫を的確に分析するのはMicrosoft Azureではないか」と私見を述べるにとどまった。流通・小売はMicrosoft Azure、金融はIBM Watson、などのような使い分けが予想される。

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現在、国内外でロボットによるソリューション開発が進められているが、あらかじめターゲット層と用途を想定して作られた商品が少なくない。もっとも、従来のモノづくりではそれが常識だった。一方でPepperは用途を限定せずに開発された、オープン・プラットフォームのロボットである。業種・企業の枠組みを越えた、新たなソリューションが生まれやすい土壌がある。そこがPepperの強みとなっている。

Pepperが、人間の代わりにショップ店員となる日はいつ来る?

ではPepperを使った取り組みを軌道に乗せるためには、今後どのような課題を克服する必要がありそうか。例えば、世間のロボットに対する認識が進んでいない、という事実は乗り越えなければならない”壁”になることが予想される。Pepperが世間に「おもちゃ」と認識されているうちは、経営者は会社の業績を任せることに躊躇するだろうし、一般の消費者は金融の込み入った相談をPepperにはしないだろう。

来店者には製品をレコメンドし、外国人相手には通訳となり、経営者には在庫管理のアドバイスをする。Pepperが活躍する分野は幅広い

逆を言えばソフトバンクロボティクスでは今後、企業のユースケースを増やし、成功事例をコツコツと積み重ねていく必要がありそうだ。世間の認識が変わったとき、Pepperによるソリューションが軌道に乗り、”Pepper店員”が街のそこかしこに出現するかもしれない。