埼玉県行田市のベーカリー「翠玉堂(すいぎょくどう)」がネット住民をざわつかせている。試しにパソコンに向かって「翠玉堂」と打ち込んでみるや、「脱力系」「異彩を放つ」などのパン屋らしからぬキーワードがヒットしたかと思いきや、「本格パン屋」との絶賛の声も……。はたして店内にはどんなパンが並んでいるのだろうか?

うなぎパン(大=2,500円、小=700円)

季節を"分かりやすすぎる"くらいに表現

四の五の言わず、早速同店のパンたちの"勇姿"を写真でご覧いただこう。まずは季節感満載のパンを1月から順に紹介すると、ていねいに焼いた餅まで挟んだ「お雑煮パン」、おせちの具が詰まった「おせちパン」、年末年始の疲れた胃をねぎらってくれる「七草粥パン」と、1月だけでもお腹いっぱいのラインナップ。

お雑煮パン(300円)

おせちパン2016(1,200円)

七草粥パン(200円)

さらに2月には「節分パン」、3月には「ひなあられパン」と続き、子どもの日をイメージしたのか、「鯉パン」なんてキワモノも。そして冒頭の写真で紹介した、土用の丑を連想させる「うなぎパン」、おはぎに負けじとも劣らぬあんこの量が印象的な「おはぎパン」の登場を経て、12月には「クリスマスパン」「クリスマスパン」「年越しそばパン」まで登場する始末。

左から、節分パン(200円)、ひなあられパン(200円)

左から、鯉パン(800円)、おはぎパン(200円)

クリスマスパン(1,000円)

メガクリスマスパン(2,500円)

年越しそばパン2015(300円)

世界各国の料理もパンで表現

ありものをサンドしただけのシンプルなものから、一つひとつの具にこだわった手間暇かかる一品までバラエティー豊かにそろっているのは、季節もの以外のパンに関しても同じこと。

自家製キムチで作ったチャーハンを片手でいただける「チャーハンサンド」に続き、「カルボナーラサンド」、「ポトフサンド」、「麻婆豆腐サンド」、「かに玉サンド」、「おはぎサンド」、「ナムルサンド」、「コロッケの中身パン」……。サンドひとつで世界各国の料理を堪能できるなんて、まさに「パンの世界旅行や~! 」と叫びたくなるほど。

自家製キムチのキムチチャーハンパン(200円)

左から、カルボナーラパン(200円)、ポトフパン(200円)

左から、麻婆豆腐パン(200円)、かに玉パン(200円)

左から、ナムルパン(200円)、コロッケ中身パン(200円)

パンは「お客さんとのコミュニケーションツール」

それにしてもなんでこんな奇天烈(きてれつ)な商品を思いつくのだろう? その疑問を店主の平川真之さんにストレートにぶつけてみたところ、「季節ものに関しては、誰もが想像できるようなものを挟んでいるだけですが、"挟めるか挟めないか"で商品が誕生するかしないかが決まります」とシンプル極まりない答え。

しかし、基本のパンの材料には、南部小麦、ゲランドの塩、てん菜糖、四つ葉バター、ホシノ天然酵母などを使用。惣菜パンの基盤となるコッペパンもこれに準じるとのことで、パンのおいしさあってこそ、チャレンジングなことをしても客に受け入れられるのだろうと想像させられる。

きっと平川さん自身も、おいしいパンでお客を楽しませることが好きに違いない! そう思って今度は、その勝手な想像をぶつけてみたところ、「もともとはパンを作ることが楽しかったですね。でも今はどうだろう……結構辛い感じです」と言い放ち、お客へのメッセージをお願いしても、「店があるうちにご来店ください」とぽつり。

とはいえ、「平川さんにとってパンとは? 」と情熱大陸並みの熱い質問を投げかけてみたら、「お金をいただくためのもの」としながらも、同時に「お客さんとのコミュニケーションツール」と回答するあたり、やっぱり、作ったパンでみんなが笑顔になることが好きなことを隠しきれていないところが心憎い。

こんなユニークな店主にぜひ直接会ってみたいなら、ぜひ一度ご来店を! 合言葉は「店があるうちに」。ちなみに、店内もつっこみポイント満載なので、来店の際は笑いのツボが合う人との同行がオススメだ。

●information
翠玉堂
住所: 埼玉県行田市行田5-7
アクセス: 秩父鉄道「行田市」駅南口から徒歩約5分
営業時間: 11:00~19:00
定休日: 月~水曜日

※記事中の情報・価格は2016年2月取材時のもの。価格は税込