エフエム東京が既存メディアの枠にとらわれない新たな放送プラットフォーム「i-dio」をスタートさせた。テレビでもなくラジオでもない「第3の放送」として、音声、映像、データを組み合わせた番組を地上波に乗せて配信する。i-dioは我々のライフスタイルにどのような変化をもたらすのか。

デジタルデータなら何でも送信可能

i-dioは地上アナログテレビの放送終了で空いた周波数帯を利用する新たな放送サービス。テレビは「映像」、ラジオは「音声」を送ることが義務づけられているが、i-dioはデジタルデータであれば放送法の範囲内で何でも送信することが可能だという。

放送エリアは首都圏、近畿、九州・沖縄の3地域から順次拡大し、2019年7月までには全国の世帯カバー率を78%強まで引き上げる方針。首都圏では東京タワーから放送波を送信する。

放送を通じたクーポン配布も視野?

まずは音楽が好きな層に訴求し、それからi-dioの浸透を図りたいという藤氏

サービス開始当初は音声5チャンネル、映像1チャンネルの体制だが、新たなコンテンツプロバイダが参加すれば番組も増える。ソフト事業者の1社で番組提供も手掛ける東京マルチメディア放送・代表取締役社長の藤勝之氏は、i-dioの特徴を「多チャンネル」、「高音質」、「パケット(通信料)なし」、「無料放送」の4つと説明した。

番組のラインナップをみると、FM局が主体となって始める放送らしく音楽にこだわったプログラムが並んでいる。コンテンツプロバイダーのTOKYO SMARTCASTが提供するチャンネル「TS ONE」では、小林克也氏や岡村靖幸氏といったDJ陣が独自のプレイリストを発信する番組を準備中。2017年にはハイレゾ級の音質にも対応する予定だ。音声放送と通信の連携により、楽曲情報の提供やECサイトへの誘導なども実施する。

音声と映像の放送では既存メディアとの違いが見出しづらいが、藤氏はデジタルデータを送信できるのがi-dioの強みだと強調する。将来の事業モデルとしては、i-dioを通じたクーポン配布やマイル付与なども視野に入っているという。

色々なものを放送に乗せられるのがi-dioの特徴だ

放送の新たな形を提示するi-dioだが、認知度を高めるには受信端末の普及が不可欠だ。スマホで放送を楽しめると聞けば手軽な印象を受けるが、実際には専用のチューナーが必要であるため、一般に浸透するには時間を要するかもしれない。