まずは前回の記事だが、とある読者から次のようなメールを頂戴した。「某社製PCを使っているが、メーカーから直接『ドライバーを提供しないのでWindows 10にするな』と言われている。これを『変化を厭う人々』と書くのは好ましくない」とのこと。確かに、Windows 10に移行しようにも周囲の環境が整わず、それが叶わずにいるユーザーも少なくはないはず。こうした方への配慮が欠けていたことを、この場を借りてお詫びしたい。

さて、バルセロナで開催されたMWC 2016では、多くのWindows 10 Mobile対応デバイスが発表された。本誌でもいくつかの記事が掲載されているが、Windows and Devices Group EVPのTerry Myerson氏も公式ブログで、既存のトリニティの「NuAns NEO」やVAIOの「VAIO Phone Biz」などに加え、日本ヒューレット・パッカードの「HP Elite x3」、パナソニック TOUGHPADの新モデル「FZ-F1」「FZ-N1」を紹介している。

工事現場など過酷な場所での使用に耐えうる「FZ-F1」「FZ-N1」の個人向け販売は予定していない

トリニティの「NuAns Neo」。Continuum for Phoneについて、当初は"暫定サポート"という表現だったが、最終的に完全サポートに至った

なかでも注目すべきは「HP Elite x3」だ。2015年末時点では、Lumia 950 XLが最高のWindows 10 Mobileデバイスと思われていた。だがHP Elite x3のCPUはSnapdragon 820、メモリーは4GB、ストレージは64GBといずれもLumia 950 XLに優る。Windows Helloの虹彩認証と指紋認証に対応し、バッテリー容量も4150mAhと必要にして十分だ。

国内では、KDDIがHP Elite x3を法人向けに販売すると発表。関係者によればHP自身がWeb直販する可能性もあるというので、我々コンシューマーも購入できそうだ。

Snapdragon 820を搭載したハイエンドモデル「HP Elite x3」。価格や販売経路は現時点で未発表

このように、Windows 10 Mobileデバイスは少しずつ熱を帯びてきた。次はOSだ。先日寄稿した記事でも触れたように、Windows 10 Mobile Insider Previewの開発も進んでおり、次の「Redstone (開発コード名)」に期待が持てる。

残すはアプリケーションだが、この点については2月24日にMicrosoftが買収した「Xamarin (ザマリン)」が大きく寄与するだろう。Xamarinとは、C#や.NET Frameworkを用いてiOS/Android/Mac/Windows(UWP)など各プラットフォームをクロスしたアプリケーション開発を可能にするツールである。

これまで、iOS用アプリケーションをUWPアプリ化する「Windows Bridge for iOS」は順調ながらも、Android用アプリケーションを移植する「Windows Bridge for Android」は進捗状況が見えていなかった。それが今回のXamarin買収によって改善されるとみてよいだろう。

左からXamarin CEOのNat Friedman、共同創業者のScott Guthrie、そしてMicrosoft Cloud and Enterprise Group EVP 兼 Xamarin 共同創業者 CTOのMiguel de Icaza氏(公式ブログより)

Visual Studio 2015 Communityのインストールオプション。今後「サードパーティ」の文字がなくなることになる

日本マイクロソフト 代表執行役会長の樋口泰行氏は、よく冗談めかしながら「弊社は後追いが得意だ」というような発言をする。率直に言うと、筆者もDOS時代から同様の印象を持っていたが、その「後追い」がAndroidやiOSに迫りつつある。Microsoftの新たなモバイル戦略、本当の快進撃はRedstoneリリース以降に始まるだろう。

阿久津良和(Cactus)