今月29日(日本時間)に授賞式が行われる第88回アカデミー賞で短編アニメーション部門にノミネートされている『ボクのスーパーチーム』は、ディズニー/ピクサー最新作『アーロと少年』(3月12日公開)と同時上映される短編映画。同スタジオ初の実話をもとにした作品としても注目のこの作品について、アメリカ・サンフランシスコのピクサー・アニメーション・スタジオで、監督のサンジェイ・パテルとプロデューサーのニコール・グリンドルを取材した。

左からプロデューサーのニコール・グリンドル、サンジェイ・パテル監督

サンジェイ初監督作となる本作は、インド系移民の父親と、南カリフォルニアで育ったサンジェイとの実話をもとにしたストーリー。テレビのスーパーヒーローに夢中な男の子と、ヒンドゥー教の神々への祈りに熱心な父親という対照的な2人を描いた物語で、やがて男の子の頭の中でヒンドゥー教の神々がヒーローのように彼を助けてくれるという空想が始まっていく。

サンジェイ監督は本作を手掛ける以前から、「神々について思いを馳せてみよう」「両親があがめる神々を描きたい」という思いが生まれ、ヒンドゥー教の神々についての本などを製作。「日中はピクサーで仕事をし、夜になると本のイラストを描く」という生活をしており、そんな中で今回、ピクサーが短編の製作を提案してくれたという。「ピクサーは私が情熱を注ぐ2つのことを結びつける機会を与えてくれました」と振り返る。

『ボクのスーパーチーム』場面写真

ストーリーを説明するスタジオ内のプレゼンテーションでは、「どのように私がテレビに映った神々(=スーパーヒーロー)を崇拝し、その一方で、父が寺院でヒンドゥー教の神々に対して祈り捧げていたかということ」や「実際に父親の文化の背景にある物語や芸術を理解できるようになるまでに30年間かかったこと」などをジョン・ラセターに説明。すると、ジョンはストーリーを気に入り、「できる限りパーソナルなものとして伝えるように」とアドバイスをくれたという。そして、映像や音楽など、製作においてさまざまな壁にぶつかりながら、人々の感情に訴える作品が作り上げられていった。

サンジェイ監督は「長い間、私は両親のことを浅ましく思っていました。インドの伝統を恥じていたのです」と打ち明けた上で、「両親が一体何者で、何を信仰しているのかといったことを含め、この映画の製作を通じて私自身のルーツに誇りを持てたのは大きなことでした」と心境の変化を告白。「私の両親、家庭生活といった私の人生の一部、そして彼らが私に与えてくれた命を作品に込められたことを光栄に思います」と感慨深げに語った。

映像や写真を見せながら説明(右写真の中央はサンジェイ監督の父)

また、映画の最後に登場するサンジェイ監督と父親の2ショット写真について、ニコールは「ジョン・ラセターのアイデアだった」と明かし、「実際にサンジェイと父親の姿を目にすることで、この映画が実話をベースにしていることをみなさんに理解してもらい、共感を高めることができると思ったのです」と狙いを説明した。

アカデミー賞にノミネートされた心境を聞くと、2人とも控えめな反応で、ニコールは「サンジェイは非常に謙虚なアーティストで、注目を浴びることを心地よく思わないんです。彼は一人でイラストを描いている時の方が幸せなのです」とサンジェイの気持ちを代弁。サンジェイ本人も「映画を製作できたことが一番うれしかったです。その後に起こることに関しては、私の力の及ぶところではないですからね」と話し、「ピクサーとジョン・ラセターが私のストーリーに信頼を置いてくれたことに喜びを感じています」と感謝の気持ちを述べた。


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