2月15日、エアアジア・ジャパン井手隆司会長(前スカイマーク代表取締役会長)は中部財界の新滑走路建設促進の会で、2020年までの中期計画を発表した。しかし、航空会社を立ち上げた経験のある著者からすると、LCC(低コスト航空会社)の事業運営として「いかに目新しく、かつ壮大な絵を描くか」に腐心した内容のように思われた。そのビジョンと課題を考察してみたい。

エアアジア・ジャパンは2016年7~8月就航を予定している

就航ができない原因

井手会長は今回の発表で、「前経営陣はAOC(航空運送事業認可)を整備管理規程の承認よりも先に取得したが、順序が逆」と述べているが、この点に対して筆者は疑問を感じるところがある。以前であれば、整備管理規程の承認はAOCとほぼ同じ時期になるケースもあったが、現在はAOC取得後というのが通例である。当局が早めにAOCを出してくれたことは、むしろ幸運とすべきものである。

現在就航ができていない原因は手続きの順序の問題ではなく、具体的に飛行機を安全に動かすための社内ルール作り、それを実行するスタッフの確保が遅れているからである。7~8月を目指すとした就航開始が実現できるかは、当局がどうその時点のエアアジア・ジャパンの運航体制を評価するかにかかっており、まったく予断を許さないと言わざるを得ない。

計画は「綱渡り」の連続

こうした状況を踏まえ、15日に発表された就航計画の要旨を見てみよう。まず、2016年8月に中部=札幌/仙台/台北線に就航、2017年に中部=中国・マカオ3路線/グアム線を開設、2018年に成田拠点化で中国/マカオ/札幌/シンガポール線を開設し、A330を導入して中部=シンガポール線を開設する。2019年には台北拠点化で台北=シンガポール/ベトナム線開設、成田/中部=ホノルル線開設、2020年には成田/中部=米国西海岸線、成田/台北=ソウル線の開設を目指している。

「果たして就航すらできるのか」と言われている現状とのギャップは拭いがたい。この計画がいかに綱渡りであるか、内容を点検してみよう。

就航開始1年後の2017年に中国/グアム線を開設するとしているが、まず就航1年目の赤字をカバーするキャッシュの確保ができるのかという問題がある。当初はA320の2機稼動で固定費負担が重く、また、国内・国際線を混在させて事業を開始することの負担も大きい。国内線は日本人旅客、台北線はインバウンド旅客を取り込まねばならないのだが、国内・海外両方にわたる販売体制を構築するのは既存航空会社でも大変な作業であり、JTBなど旅行代理店に担ってもらうにも限界があるだろう。

「日本」を認知してもらえるのか

台北線はピーチ・アビエーション(以下、ピーチ)やバニラエア(以下、バニラ)が就航当初から現地インバウンド旅客を多く取り込んで健闘している路線だが、この背景には「日本の航空会社だから乗りたい」という現地の人々の気持ちが反映されているとされる。台湾の人々から見ればエアアジア・ジャパンはマレーシアの会社であり、当初から「日本企業」として認知されるとは思えない。この初期3路線の事業を安定させるには、よほどうまくいっても2年以上はかかるだろう。

その最中にあたる2017年にグアム線就航を計画している。航空業界には"ETOPS120分"というルールがある。これは、洋上飛行中に双発エンジンのひとつがアウトになった場合、120分以内に着陸できる空港が常に存在する飛行ルートをとって運航しなければいけないというものだ。機材・乗員・運航・整備体制の「ETOPS」適格審査は、一定期間の安定的な運航実績や技量管理体制の確立が必須であり、簡単に終わるようなものではない。

中国/グアム線における課題はマーケット展開にもありそうだ。その点についても考察したい。