国内で、いかにうまくソーシャルメディアを自社のビジネスに活用すべきかについて、広く議論されたのは2010年前後であろう。先進的な企業は、ソーシャルメディアの利用ガイドラインを策定し、将来性を見越してビジネスでソーシャルメディアを活用していく方向に舵を切った。本稿では、そこから一歩踏み込んで、企業がマーケティング活動でどのようにソーシャルメディアを活用していくべきかについて考察する。

マーケターにとってのソーシャルメディアとは?

ソーシャルメディアはWeb/モバイルの利用環境を問わず幅広く浸透しており、デジタルマーケティングに取り組む担当者がカスタマージャーニーにおける購買の兆候を把握する上で重要性を増している。

Salesforce.comが2015年3月に公開した、世界9カ国5000名以上のマーケターを対象に実施した調査「2015 State of Marketing」によると、日本企業のマーケターが予算を増額する分野の上位5項目は「ソーシャルメディアリスニング」「ソーシャルメディアマーケティング」「ソーシャルメディアエンゲージメント」「SMSメッセージ」「ソーシャルメディア広告」であり、カスタマージャーニー環境を構築する上でソーシャルメディアを重要視する傾向が顕著である。

日本企業のマーケターが予算を増額する分野の上位5項目 資料:「2015 State of Marketing」

他国の結果を見ると、予算増額分野として「マーケティングオートメーション」や「モバイルアプリケーション」を挙げている国もあるが、日本がこれほどソーシャルメディア重視なことの背景には、モバイルデバイスの普及率の高さがあると見られる。

モバイルデバイスの利用目的として、ソーシャルメディアは大きな比重を占めるため、マーケターとしてはブランドのファンとつながるための仕組みとして活用したい。また、世界的にWebブラウザにはほとんどアクセスせず、モバイルデバイスのみでブランドとつながるミレニアル世代が台頭してきており、日本においても若い世代からの支持を得ることはマーケターにとっての大きなテーマである。

ソーシャルメディア・マーケティングとは?

「ソーシャルメディア・マーケティング」というと、一部のマーケターは「ソーシャルメディア広告」を真っ先に連想するかもしれない。だが、そのスコープは広く、ソーシャルメディアを介したブランドと人との関係マネジメント全般を指す。

Wikipediaによると、ソーシャルメディア・マーケティングは「Webサイトへのトラフィックもしくはソーシャルメディアサイトへの関心を引きつけるためのプロセスであり、通常は関心を引きつけ、読者にシェアを促すようなコンテンツ作成のための一連の施策」とある。

ここでカギとなるのが口コミ(いわゆるバズ)であり、読者が「他の人にも教えたい」と思うような魅力的なコンテンツの提供である。ソーシャルメディアマーケティングがオンライン上の口コミを活用するところに着目する点は、1990年代に注目されたバイラルマーケティングの考え方に類似する。

バイラルマーケティングは、パーミションマーケティングを提唱したSeth Godin氏が自著において、最初のパーミションを得るための手段として、信頼できる人物の口コミ(紹介や推薦)が有効であると指摘したことから注目されるようになった。口コミの伝播は人為的にコントロールすることはできない。だからこそ、ブランドと利害関係のない第三者が作成し、読者がシェアしたいと思うようなコンテンツは、広告よりも低コストで見込み顧客を引きつけることに役立つ。

能動的なソーシャルメディア運営に向けて

ただし、企業にとって、ソーシャルメディアはこのような受動的な活用だけにとどめておくにはもったいない存在である。ソーシャルメディアの中での会員同士の自発的なコンテンツのシェアやコメントをどれだけ獲得できたかを、メディア運営の評価指標として用いるのは合理的だ。だが、それだけでなく、会員属性を基にターゲットが好感を持ちそうなコンテンツを提供する能動的なソーシャルメディアの運営方法もあってしかるべきではないだろうか。そして、それは明確なターゲットに向けて、適切な内容のコンテンツを提供するコンテンツマーケティングのアプローチと共通する。

この考え方をさらに発展させ、宣伝であることを明記した上で、ブランドが訴求したいポイントをコンテンツとして提供するのがソーシャルメディア広告である。

Facebook、LinkedIn、Twitter、Pinterestの利用者は、プロファイル情報のほか、興味・関心のある分野や、所属している組織やグループといった、マーケターがターゲティングに活用したい情報を登録している。広告は、既存顧客との長期的な関係を維持するためのコンテンツの提供には適していないが、これから顧客になるかもしれないオーディエンスに対して、行動を促すようなコンテンツの提供は得意とするところだ。ソーシャルメディアの担当者には、対価を支払うべきコンテンツとそうではないコンテンツの切り分けを行うような運営が求められる。

余談だが、一部には、最初から広告であることを明示せず、口コミを偽装して拡散されるようなコンテンツを供給するステルスマーケティングと呼ばれる倫理的に問題のあるケースも見られる。この点を踏まえると、ブランドと顧客の長期的な関係の維持というマーケティング本来の目的から外れないよう、管理者には信頼性の高いソーシャルメディアサイトの運営が望まれている。