Uniteシステムを導入する4つの施設

Webテレビ会議システムを導入する拠点は、鯖江市役所のIT会議室、越前漆器の歴史紹介や展示・体験・販売を行っている「うるしの里会館」、商店街のコミュニティスペース「らてんぽ」、IT×ものづくり拠点「Hana道場」という4カ所だ。

鯖江市役所のIT会議室は、政策会議や記者会見など幅広く使われ、すでにiPadを用いたペーパーレス会議を始めている。資料はすべてサーバーから引っ張ってくるそうだ。今後は、WindowsデバイスやAndroidデバイスも増やしていくとのこと。Uniteと合わせて、市長や市職員が市民と交流する場ともなるかもしれない。

鯖江市役所のIT会議室

うるしの里会館では、建物の一角に構える「河和田デジタル工房」に導入される。河和田デジタル工房は、最新技術と機材、伝統の融合がコンセプト。インタービジネスブリッジの3Dプリンタ「Maestro」と、ローランドのデスクトップ型切削加工機「SRM-20」が置かれ、予約制で誰でも利用できる。眼鏡フレームや漆器の原型などを試作する、職人さんの利用が増えているそうだ。新導入のUniteを利用して、作業の様子を別の拠点に配信して大勢の人に見せたり、講習会を開いたりするとおもしろいのではないだろうか。

うるしの里会館(写真左・中央)と、河和田デジタル工房の作業場所(写真右)

3Dプリンタの作例(写真左)と、切削加工機の作例(写真中央)。余談だが、洗面台のシンクも漆塗りだった

らてんぽは、商店街の空き店舗を利用したコミュニティスペースで、小ぶりの公民館というイメージだ。ここも無料で誰でも利用でき、市民の交流の場となっている。基本的に管理人が常駐していないので、防犯や盗難対策が課題となるだろうが、Uniteを用いた交流の拠点としてうってつけに感じた。

商店街の空き店舗を利用したコミュニティスペース「らてんぽ」

最後のHana道場は、今回の記者会見が行われた施設だ。登録文化財の旧鯖江地方織物検査所だった建物で、主にITを使ったものづくり教室を開催している。ボードコンピュータ「IchigoJam」、3Dプリンタ「ダヴィンチ」、レーザーカッター「LaserPro Venus II」などがあり、有料で誰でも利用可能だ。IchigoJamとBASIC言語で簡単なゲームを作るプログラミングスクールが人気。

Hana道場

ボードコンピュータ「IchigoJam」のROMにはBASIC言語を収録。テキストを見ながら、簡単なプログラムを入力してゲームを作る。その昔、プログラムリストが載った雑誌を買ってきて、筆者もよく打ち込んだものだ

鯖江市から発信するライフスタイルとワークスタイル

鯖江市が始めたIT活用やオープンデータ活用は、先述した「第4の中核産業としての地域振興」が当初の目的だったのかもしれない。だが、事業が進み、ノウハウがたまるにつれ、もっと大きなビジョンが見えてきた。

鯖江市の牧野市長は、「鯖江の取り組みが横の展開として、地方自治体に広がっていったら嬉しい」と話す。仮定の話として、オープンデータが事業として成り立てば雇用が生まれ、雇用が生まれれば人が増える。企業の誘致、IターンやUターンの就職・転職にも有利になっていく。

地方都市の発展サイクルはずっと語られてきたことだが、インターネット、特に高品質な通信インフラが整った現在は、テレワーク(*)という手段が生まれた。今回、鯖江市に導入されるデルのハードウェアとインテルのUniteシステムは、テレワークを現実にする強力なソリューションだ。

(*)テレワーク
PC、スマートフォン、タブレットといった情報機器とネットワークを利用して、オフィス以外でも柔軟に働ける形態。在宅勤務などが一例。

デルの塙氏が記者会見で述べたように、現在は多くの企業が多くの働き方を模索している。日本マイクロソフトなども、テレワークを推進している最中だ。日本人の習慣や国民性、企業文化からしてなかなか難しい面はあるが、会社に出勤しなくても仕事はできる……という業種・職種は意外と多いはず。実例を積み重ね、既成の観念を少しずつでも変えていくモデルケースとして、鯖江市には旗振り役を担っていってほしい。

鯖江市のB級グルメ?「サバエドッグ」を食す。ゴハンをソースカツで巻いてあり、意外とボリュームがある