「働くママ」として世の中で紹介されるのは、仕事も育児もバリバリこなすスーパーママのような存在が多いけれど、誰もがみんなそうやって働けるわけじゃない。ママ社員のリアルな悩みや乗り越え方、会社にどういうことを望んだのかなど、様々なWEBサービスを手がけるGMOペパボの社員に話をきいた。

左:EC事業部 杉村文美さん(34)。2004年中途入社のエンジニア。お子さんは6歳の男の子と、4歳の女の子。
右:馬居さん(34)2007年中途入社のディレクター。4歳と1歳の男の子のママ。

「会社を辞めてもメリットはない」

――お二人共、入社されてからお子さんが誕生されているんですね。子供ができて会社を辞めたいと思ったりはしなかったんですか?

杉村:全然考えなかったですね。ちょうど同時期に妊娠した社員が2人いたのですがて、よくみんなで一緒に育休から復帰できるといいねと話していました。

――戻ってきて一番大変だったことはなんですか?

杉村:子供が思った以上に熱を出すことです(笑)。特に保育園入園後は、園で病気をもらってくることもあるので。あとは、10時~19時という勤務だと、保育園のお迎えに間に合わないんですよね。GMOペパボで初めて子供を産んだのが私だったので、人事に相談して勤務時間を8時~17時にして、18時半のおむかえに間に合うような時差勤務制度を取り入れてもらいました。

――馬居さんはいかがでしょうか? 辞めたいと思ったことは

馬居:1人目のときは正直なにもわからなくて、辞めるという選択肢すらありませんでした。会社の先輩ママ達に「仕事をつづけたほうがいいよ」とアドバイスをもらっていました。金銭的にも精神的にも「辞めるメリットはない」って。

杉村:たとえば働いている人だったら、「育児休業給付金」などの雇用保険制度があるので、辞めるとこうした給付も無くなるよ、と(笑)。精神的にも、ずっと家に1人で子育てをするのは大変です。

馬居:会社に先輩ママがいると、いろいろ教えてもらえるし、愚痴も言い合えたり、相談もできるのでとてもよかったです。

――馬居さんが大変だったことは

馬居:私は産後4カ月で復帰したのですが、そのときの役職はマネージャーでした。周りも支えると言ってくれてたし、自分も問題ないんじゃないかと思っていたのですが、産前と全く同じ仕事の仕方をしていたら、私自身が40度を超す熱を何度も出したり体調を崩すようになってしまって。そんなことは初めてで、それまで自分は無理ができる人間だと思っていましたが、普通の人間だと気がつきました。

杉村:馬居さんのときは、ちょうどGMOインターネットグループが提供する託児所「キッズルーム GMO Bears」ができていましたよね。

馬居:会社に託児所があるのはすごく心強かったです。復帰したのが、まだ授乳期中だったので、仕事の合間に託児所にいき、子供にもちょくちょく会えるし、不安なことも託児所で相談できたので。本当に助かりました。でも、授乳をしながら働いたことが、体調を崩してしまった一つの理由だったのかもしれません。特に私が担当していたのは、新規事業だったこともあり、マネージャーである自分がこんな状態ではいけないと思い、信頼できるメンバーに託して、マネージャーは辞めさせてもらいました。それからは、いちディレクターとして働いています。

ものごとが思い通りにならない前提で動くように

――お子さんがいると、「話が通じるだけいい」と、会社の人に怒らなくなるといった話をきいたことがありますが、社内のコミュニケーションに変化はうまれましたか?

杉村:たしかに、子供を産む前より寛容になった気がします。「5歳児よりは話が通じる!」って思うし(笑)。

馬居:若い後輩たちがみんなかわいく思えてきます。ちょっと失礼な話ではあるのですが、年上の男性たちも、「皆赤ちゃんだったんだな」と思うとかわいく見えることもあります(笑)。

――人の育て方がわかったんでしょうか?

馬居:子供を産むまでは、自分の人生を良くも悪くも思った通りに動かそうとしていたのですが、子供は全く私の思い通りにはならないので「今、目の前にあることをいかに円滑にすすめるか」と考えるようになりました。相手が若くても年上でも、仕事ができてもできなくても、みんなでいい方に向かうにはどうしたらいいかと考えて動くようになりましたね。

――実はお母さんはマネージャー向きなんでしょうか?

馬居:子育てを経験したことがある人はマネジメントに向いているかもしれません。ただ現実問題、マネージャーは自分の時間を犠牲にしないといけない事もあるので、難しいことが多いとは思います。子供を育てていると、確かにいろいろなことに寛容にはなるのですが、何かが進まない時に、倍追いつめられるというか。ひとつ歯車が狂うと、全部が狂ってきてしまうんです。でも誰にも迷惑をかけたくなくて、更に追い詰められる。なので今は、日々自分を追い詰めてしまわられないようにバランスを取りながら考えて動いています。

杉村:復帰した当初は、締め切りのある仕事は1人でもたないように、当時の上司が配慮してくれました。上司は子育ての先輩でもあったので、子供に急な発熱が起きることなどに理解があり、万が一その日仕事ができなくなっても、大丈夫なようにと。

馬居:子供は本当に急に熱を出しますからね。でもたぶんそれも2歳くらいまでなんですよね。1歳半くらいから急に風邪をひかなくなるので、そこまでガマンすれば……。それがわかるだけでずいぶん気持ちが楽になります。わからないと、「どこまで続くの!?」と不安になってしまうので。