――日本航空さんでは、「JALなでしこラボ」(以下「なでしこラボ」)という取り組みを始められているそうですが

2015年11月1日に発足しまして、「JALグループが真に女性が活躍する企業」となるべく、時には産・学・官と連携し活動を行っています。大きく2つの取り組みにわかれていまして、「グループプロジェクト」と「なでしこラボプロジェクト」があります。「グループプロジェクト」は、グループ会社のそれぞれが女性活躍推進法に基づいた自主行動計画を策定、実行していくうえで直面する悩みや課題を聞き出し、グループ全体で解決にむけて取り組みを進めていくプロジェクトで、「なでしこラボプロジェクト」はその名の通り研究をしていくプロジェクトです。担当役員も非常に前向き気で、「うすっぺらなものにならないよう、本気で取り組むこと」と言われました(笑)。

「なでしこラボ」という名称ですが、最終的には女性だけでなく、みんなが活躍するにはどうしたらいいのか追求していきます。ただ、どうしても最初は女性が中心になるのは、やはりライフイベントなどの影響を受け、就業継続に壁を感じたりする場合があるからなのです。他の企業など、様々な意見をいただきながら、本当に良い形を模索していきます。

「JALなでしこラボ」

――「ワークライフマネジメント研修」もその一環だったのでしょうか?

「ワークライフマネジメント研修」は「なでしこラボ」よりも先、昨年実施したものでした。来年は「なでしこラボ」とより深く関わっていくことを検討しています。

――ラボと銘打つからには、研究成果を発表していくのでしょうか?

そうですね。ラボプロジェクトの中も3つのチームに分かれておりまして、「意識」「ポジション」「継続性」という視点から、研究を行っています。メンバーは1チーム7名ですが、北海道から沖縄まで、本当にやる気のある人が集まっています。通常の業務と平行しながら、定期的に集まり、7月には社内外へむけて研究成果を発表する予定です。

初年度ですので、どこまで進めるかはわかりませんが、年を重ねるごとにステップアップし、施策などトライした結果を報告していければと思っています。

実際に出てきた課題は?

――もともと女性が多く働いているイメージがありますが、これまでに出てきた課題などは

グループ会社が多岐にわたりますので、空港の旅客業務を担当する会社であれば大半が女性ですが、航空機の整備を行うほとんど男性ばかりの会社もあり、一概にまとめることは難しいのが現状です。例えば客室乗務員は女性も多く、出産しても復帰するのが当たり前になっていますが、男性の多い会社だと、同じような社員が身近にいないこともあり、復帰のハードルが高くなるケースがあるように思います。グループを横断してママが集まる、「ママカフェ」といった研修を通じて、不安を取り除くようにしています。

――課題としては、男性の多い会社の方が大きいのでしょうか。

育児休職後の復帰という点ではそうかもしれません。ただ本当に女性が活躍するためには、やはり男性も育児休職や介護休職をとらないといけないと思います。外資系の企業などは、女性の仕事がノリにのっている時期だと、夫が休職して育児に専念するように、サポートしている所も多いと聞いています。弊社のグループでも、男性が育児休職をとるケースが少しづつですが増えてきました。

だから我々も、「女性の働き方」という話だけではなく、誰にでもフィットするように、幅を広げて研究しようとしています。最終的には女性をはじめとした多様な人財の活躍を目指したいと考えています。

あとはやっぱりモチベーションですね。社員の気持ちの研究をしないで制度だけ作っても、意味がないので、こちらも大きなテーマとなっています。制度を整えることも大事ですが、意識の面が伴わないと、今後成長していくことは難しいでしょう。仕事に対する高いモチベーションを持ちながら、自分の生活も大事にできる会社にしていければと思っています。

――ここ1年で環境は変わりましたか?

世間的にも女性活躍を望む風潮が高まっていますよね。今春からは女性活躍推進法も施行されますが、時代の流れだと思います。私達も研究すればするほど、今頑張らないと、あと何年か後に、本当に働く人数が少なくなってしまうと危機感を持つのです。だからまずは女性がいきいきと働ける職場風土を醸成しダイバーシティをどんどん展開していくことが大切だと思っています。

「なでしこラボ」は女性をはじめとした多様な人財が、それぞれの価値観・能力・経験・感性を生かし、更に輝いて活躍できる会社を目指すための第一歩です。