2020年に実施される「ロボットオリンピック」について、具体的な検討を行う実行委員会と諮問会議が発足、2月2日に、第1回目の諮問会議が開催された。今回は競技分野について選定が行われており、実行委員会からは「B2B分野」「B2C分野」「インフラ・災害対応・建設」の3分野を対象とする案が提出された。

諮問会議に出席した委員。諮問会議は冒頭のみが報道陣に公開された

ロボットオリンピックは、2015年2月に策定された「ロボット新戦略」の中で、実施が決まったもの。東京オリンピックと同じ2020年に本大会、2018年にプレ大会を開催することがすでに決定していたが、具体的な開催形式や競技種目については、2016年までに決めることになっていた。

実行委員会(委員長:佐藤知正・東京大学名誉教授)と諮問会議(委員長:金出武雄・カーネギーメロン大学教授)は2015年12月25日に発足。実行委員会は2016年1月29日に1回目の会合があり、今後、毎月開催する。一方、諮問会議は7~8月頃に第2回、11月頃に第3回を開催。競技ルール、開催場所、開催時期など詳細を年内に決定する予定だ。

予算規模も含め、具体的なところは今後検討していくとのことで、現時点では「ほとんど何も決まっていない」という印象だが、競技分野として、以下の3分野を選定したことが今回明らかになった部分だ。

1. B2B中心の分野

製造業、農林水産業、食品産業などが対象。大雑把にいうと、産業用ロボットによる競技となるようだ。類似した競技会としては、米Amazon.comの「Amazon Picking Challenge」(APC)が参考になるかもしれない。

Amazon Picking Challenge出場ロボット(2015国際ロボット展の三菱電機ブース)

2. B2C中心の分野

サービス、介護・医療などが対象。この分野では、接客/案内ロボット、介護ロボット、生活支援ロボットなどが考えられる。既存の競技会では、「RoboCup @Home」に近い内容があるかもしれない。

3. インフラ・災害対応・建設

橋やトンネルなどのインフラ点検、原発などのプラント点検、災害発生時の被災者発見などが対象になるだろう。同様の競技会としては、「DARPA Robotics Challenge」や「RoboCup Rescue」などがある。

諮問会議は非公開であるが、実行委員である安田篤・経済産業省製造産業局ロボット政策室長によれば、諮問会議の委員からは、おおむね賛同が得られたという。今後、より具体的な内容を詰めていくことになるが、国際性の確保、教育とのリンクなどに配慮するよう、委員から注文があったそうだ。

プレス向けブリーフィングで説明する経済産業省製造産業局の安田篤氏

ところで、東京オリンピックの開催にタイミングを合わせた競技会であるものの、「RoboCup Soccer」のように、スポーツをベースにした競技は考えていないとのこと。「ロボットオリンピック」という名前が一人歩きした感があるが、競技会の正式名称も今後決めていく。

なお競技会の名称について、ロボット新戦略の中では「ロボットオリンピック(仮称)」と表記されていたが、現在、組織としてその名前は使っておらず、単に「ロボット国際競技大会」と呼ばれている。商標の関係で、「オリンピック」という名前を使わない可能性もあるそうだ。

また当初のロボットオリンピックという名称から、ヒューマノイドロボットによる競技をイメージした人も多いだろうが、参加ロボットの形も、競技種目やルールを検討する過程で決まることになるだろう。ヒューマノイド限定の種目も中にはあるかもしれないが、社会実装の側面が強いため、多くの種目は非人間型になるのではないだろうか。

ヒューマノイドロボットの競技もある?(写真は2015国際ロボット展)

ただ、そうすると東京オリンピックと同じ2020年に開催する意味があまり見えてこない。安田室長は「世界から注目される年。ロボットが何をやれるのか発信する機会として一番いい」と説明するが、意義としては少し弱く感じる。利活用が中心とは言え、注目されるためには、盛り上げ方も工夫していく必要があるだろう。

こういった競技会は、ロボットの研究開発を促進するには有効なツールである。しかし、それには継続していくことが何より重要。新競技会も継続していく方向ではあるものの、もし1回で終わるようなことになれば、既存の競技会を混乱させるだけになりかねない。実行委員会には、2020年以降もしっかり見据えた議論を期待したいところだ。