働く女性たちに、キラキラしただけではないリアルなエピソードを聞いていくこのシリーズ。今回は、ある地方都市で働く女性に話を聞きました。

好きな分野の仕事がなかなか見つからない

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カルチャー関係の商品を扱う店舗で10年以上働いたものの、突然のリストラにあったBさん(39歳)。その後は地元で転職活動中とのことですが、以前のように好きな分野での仕事はなかなか見つからないと言います。そんな地方の転職活動について、聞かせてもらいました。

――Bさんは、現在は地方都市で働いていますが、それまではどんな職歴だったんですか?

実は、親戚の伝手で一度は関東の飲食店で働いたことはあるんです。その後、地元に戻って、カルチャー関係の商品を扱う店舗で働いていたんですが、経営が厳しくなり、店舗をたたむか、従業員が辞めるかの二択を迫られてしまいました。

――説明の仕方によっては、不当な解雇になるかもしれないですよね。

ただ10年以上も、好きな仕事に携わってきたし、お店の苦しい状況もわかっていたしで、それに抗うことはできなかったですね。私たちが辞めなくても、お店がなくなれば、どっちみち自分自身は職を失うことになるので。

――不当だとは言えない空気っていうのはありましたか?

職場の環境は、割と自由だし、女性も長く働いていたしで、そこまで窮屈ではなかったんですが。いざというときには、好きでやっている仕事だから、職があるだけでもありがたいことだったよね、だから今更文句を言うなんて……という思いがあったかもしれません。

――Bさんの友達はどんな働き方をしていますか?

仕事を通じて知り合った同じような業種の人は、やはりお店の経営がなりたたなくなって、別の仕事に就く人は多いです。地元で事務職に就いたり、東京に出て、もう一度好きなことをしたり、東京に出たけどまた別の仕事をしていたり。自分が独身なので、独身の友達が集まってきますね。そういう意味では、同じ境遇の友達には恵まれていると思います。

――Bさんは、仕事を辞めてからは、就職活動はしていますか?

やっているんですが、なかなか見つからないですね。私の職歴では事務はできないし、車を運転できないので営業も難しい。となると、やはり接客業になるんですが、それも年齢でやんわり断られてしまったり。田舎は交通網も整っていないので、遠くの地域で募集があっても、私のようにバイクで一時間かけて毎日通うのは物理的に難しい。もちろん、私が以前のように好きなカルチャーの仕事にこだわっていると、仕事はないと思うから、それは捨てて就職活動をしているつもりなんですが、難しいですね。

――確かに、私も地方で働いていて、ひとつめの会社を辞めた後、そのあとも前職と同じモチベーションと賃金が確保される仕事がほかにもあるはずだと思ったら、もう地方にはそんな仕事は見つかりませんでした。

そうですね。都会ならば、転職でキャリアアップということもあるかもしれませんが、地方ではなかなか難しいかもしれません。役職を目指すとか昇給があるなんてことは望んでなくて、同じ職場で年をとっても働けるということだけでも、貴重だと思います。

ずっと続けていられる仕事を探したい

――それでも、何度か短期の派遣やアルバイトをしているんですよね。

百貨店に派遣社員として短期でいきましたが、生まれて初めていじめのようなものを経験しました。というのも、百貨店のパートさん、アルバイトさんの時給よりも、派遣のほうが時給がよかったりするんですね。急な求人であったり、短期の契約であったりするから、仕方ないことだと思うんですが、経験の長い自分よりも、仕事ができない新人のほうが時給が高いことはやっぱり納得いかないんだろうなと思います。

――そうですよね、時給が違うのは、いじめたパートさんの責任でも、新入りの派遣さんの責任でもないのに、その違いのせいで微妙な関係になってしまうと。

それでも、なんとか仕事で迷惑をかけないように、いろいろ覚えようとしていたんですけど、逆にパートさんのテリトリーを奪う行為に見えたらしく、一生懸命に仕事をすることも阻まれて。なんとか派遣の契約期間終了までがんばったけれど、つらかったですね。

――東京には、比較的、地方よりは仕事があるということは、地方から上京して派遣の仕事をしていた自分の実感としてはありますが、上京するということは考えていないんですか?

地方から募集を見て履歴書を送ったこともあるんですが、なかなかうまくいかないですね。腰を据えて東京に住んで履歴書を送るほうがうまくいくのかなと。

――それは私も経験があります。地方から履歴書を出しても、その本気度が見えないのか、返事が来た事はなかったです。もちろん、私のやり方がうまくなかったのかもしれません。ほかの方に聞くと、募集がなくても、好きな業種の会社に熱い手紙を書いて採用されたという話もありましたし。

ただ、今は東京に行こうという気持ちも薄らいでいます。両親がまだ元気で、姉は結婚して子どももいるし、私が突然仕事を失った経緯も知っているので、今の状況には、そこまでうるさく口出ししてはきません。それに同じような仕事をしてきた趣味の合う友達もいるので、思いとどまっているのかもしれません。

――その状況だったら、確かに無理して東京を目指す必然性は感じないかもしれませんね。私の場合は、仕事のない状態で家族とも以前よりギスギスしていたし、友達も結婚ラッシュで、気軽に遊びにいく仲間が少なくなっていたところでした。そういう辛い状況があったからこそ、上京する気力がわいたということは考えられます。

今は、友達が紹介してくれた観光地の飲食店で土日と祝日に働きながら、この土地で長く続けられる仕事を探しています。今まで、ほぼひとつの仕事しか知らなかったし、かつ、それが自分の好きな仕事だったので、そこに甘えていた部分もあったかもしれないなと。今は、いろんな仕事に触れてみて自分に何ができるか勉強する期間だと思ってやっているんです。今度は、好きな仕事ではないかもしれないけれど、ずっと続けられる仕事が見つかればいいなと思っているんです。


西森路代
ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。