【レビュー】

女性活躍が進まないのは「メンバーシップ型雇用システム」のせい? - 『働く女子の運命』

 

濱口桂一郎『働く女子の運命』(文藝春秋/2015年12月/780円+税)

女性の「活躍」の必要性が、今盛んに叫ばれている。2014年6月に改訂された『日本再興戦略』では「2020年に指導的地位に占める女性の割合30%」が掲げられ、2015年8月には「女性活躍推進法」が成立した。この法律により、大企業は自社の女性の活躍の状況を分析し「行動計画」をつくることが義務付けられることになった。

こうして国を挙げて女性の活躍を掲げるようになった背景には、日本であまりにも女性の活躍が進んでいなかったという事実がある。2013年10月に世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数」では、日本の順位は136カ国中105位と諸外国とくらべてかなり低いことがわかる。僕の周囲を見回しても、子育て・出産と仕事の両立という課題で悩んでいる女性は少なくない。なぜ、こんなにも日本では女性の活躍が難しいのだろうか?

本書『働く女子の運命』(濱口桂一郎/文藝春秋/2015年12月/780円+税)によると、女性の活躍が日本で進まない一番の原因は、日本企業の多くが採用するメンバーシップ型雇用システムにあると論じられている。政府でなされている議論を見ていると、どうしても「活躍」という言葉だけが一人歩きしてどこに向かっているのかわからない印象を受けてしまうが、本書を読めば女性の活躍が進まない理由について構造的な理解が可能になるだろう。

メンバーシップ型社会で仕事と家庭の両立はかなりきつい

日本の場合、新卒で会社に就職すると最初にどんな仕事をやらされるのかはわからないことが多い。入社後はじめて配属が知らされ、その後も数年ごとにジョブローテーションという形で部署異動を繰り返し、スキルをまんべんなく身につけていく。賃金は仕事の内容ではなく勤続年数に応じて決まる。会社によって多少の差異はあるものの、概ね「正社員」として働いている人はこのような形でキャリアを積み上げていくことになるだろう。

日本企業では、社員は特定の職務に紐付いているわけではなく、会社に紐付いていると考えることができる。だからまったく経験のない職務への配置転換も行われるし、時には転勤もありうる。今ある目の前の仕事をこなせるかということよりも、数十年に渡って会社の一員として、理不尽な命令にも従ってくれるかという全人格的判断が重視される。このような労働社会のあり方を、本書では「メンバーシップ型社会」と呼んでいる。

このようなメンバーシップ型社会で活躍するためには、ある程度私生活を犠牲にして会社に尽くす必要があるが、それができたのは今まで主婦に家事と育児をほとんどすべて任せた男性たちだった。この事実上の男性コースに入れてもらった少数派の女性たちは、男性と同じように私生活を犠牲にするというルールの下で戦っていかなければならない。そこでさらに育児・子育ても両立しようと考えると、超人的な体力・精神力が必要になる。

活躍している女性のインタビューなどを見るとこういった超人的な人たちばかりがフィーチャーされるが、それは一部の人の特殊ケースであって、すべての人にこのような超人的なライフスタイルを求めるのは現実的ではない。必要なのは社会構造そのものの見直しではないだろうか、と本書は提言しているように見える。

ジョブ型社会の男女平等

日本がメンバーシップ型社会なのに対して、欧米はジョブ型社会だと言われている。ジョブ型社会では、企業の中の労働をその種類ごとに職務(ジョブ)として切り出し、その各職務を遂行できる技能(スキル)のある労働者をはめ込む。

ジョブ型社会ではメンバーシップ型社会のように突然無関係の部署に配置転換されたり、転勤を強制されることは基本的にない。賃金もそのジョブのスキルに対応して払われるので、会社の在職期間が伸びれば自動的に上がるというようなこともない。会社と労働者の結びつきがそれほど強くないので、ワークライフバランスの追求も現実的になる。

ジョブ型社会で男女平等を実現する場合、ジョブへの就労自体の男女平等を促進すればいい。男性の占める割合が多いジョブなら、時には女性を優遇して(アファーマティブアクション)男女比の適正化をはかる。また、男性の多いジョブと女性の多いジョブの付加価値が同様で賃金格差があるというなら、「同一価値労働同一賃金」を適応して賃金の適正化をはかる。メンバーシップ型社会における男女平等よりも話はずっとシンプルになる。

働く男子も必読

日本がメンバーシップ型社会であることから生じている問題は、何も女性の社会進出に限った話ではない。たとえば、日本人が働きすぎていてワークライフバランスが改善しないという問題も、結局は「会社と労働者の結びつきが強すぎる」ことに原因がある。

そういう意味では、本書は働く女子に限らず、男子も読む必要があると言えるだろう。本書をもとに「働きづらさ」の正体について考えてみるというのはいかがだろうか。

<著者プロフィール>
日野瑛太郎
ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。
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