IBMはクラウド企業に変質する過程にある

IBMがターゲットとする動画配信は、エンタープライズ向けということで企業内でのコンテンツ配信だけでなく、おそらくは既存のUstreamのユーザーの多くもその対象になっていると考えられる。もしインターネット放送局やサービス事業者が自ら動画配信を行いたいたいと考えた場合、Ustreamの仕組みを使って、配信用のプラットフォームをIBMのクラウド上に構築できる。また、この配信インフラにWatsonなどのツールを組み合わせることで、マーケティングツールとしての活用や広告配信プラットフォームの強化も期待できるだろう。

いくつかの調査報告によれば、現在北米のインターネットにおける動画トラフィックの比率は7割を超えているといわれており(Netflix、Facebook、YouTubeの3社が中心)、それだけユーザー層の厚い分野で、IBMもビジネスとしての成長性に期待していると思われる。

同社によれば、将来的に1050億ドル規模の市場になると説明しており、同社のクラウド事業の重要ピースとしてぜひとも揃えておきたかったのだろう。また、IBMは直近の決算まで過去15四半期連続で売上が減少していることが知られており、PCサーバなどハードウェア事業をLenovoなどのライバルに売却する一方で、過去2~3年の間に急速にクラウド事業の比率を強化している。

将来は1000億ドル超の巨大市場になると見込む

売上減少とはつまり、過去の資産を切り離してクラウド企業へと変質しつつある過程にあるということだ。Ustreamの買収も思いつきなどではなく、こうしたクラウド事業強化に向けて設定した青写真(Blueprint)の完成に向けたステップの1つだといえる。