人工知能を搭載した初のERP

人工知能のビジネスシーンへの進出は、すでに始まっている。たとえば金融業界で株の売買に使われている売買プログラムも一種の人工知能だ。画像認識等の技術についても、実用化されて業務に利用しているケースも珍しくはなくなっている。

そして、もっと身近なビジネスシーンでの人工知能利用の一例として、ワークスアプリケーションズの「HUE」が登場した。HUEは、企業内におけるヒト・モノ・カネの動きの管理を統合し、情報化によって経営を支援するためのシステム「ERP」(Enterprise Resource Planning)の一種だ。一般ユーザーから見ると、顧客管理や人材管理、文書管理システム、管理会計、プロジェクト管理など、さまざまな機能が統合された社内システムということになる。

HUEのユニークな点は、機械学習型の人工知能を搭載していることと、ビッグデータの解析に対応している点だ。どちらも最近のIT業界では好んで使われるキーワードだが、これをERPに持ち込んだのはHUEが始めてだといえる。

人工知能で何ができるか

具体的には何ができるのか。まず人工知能についていえば、書類作成の手間が大幅に省力化できるようになる。HUEでは、ユーザーが書類を作成する際に、項目や請求する相手を過去の入力データから検索し、相手や項目に応じて、たとえば単価や発送先、個数といったデータも推測して入力してくれる。

これだけなら単に入力履歴から候補を出しているだけのようにも見えるが、HUEの長所は、入力欄や順番を問わない点にある。例えば入力欄の順番を問わずに「マイナビ 請求書 原稿料」と入力すれば、人工知能がどの単語がどの項目にふさわしいかを判断して、適切な部分に配置してくれるのだ。あとは必要に応じて、原稿の単価や担当部署、担当編集者といったデータを追加することで細部が修正されていく。

人工知能搭載EPR「HUE」の伝票入力画面。コピー修理に関する起票の例

勘定科目に「修理費」など関連ワードを入力。人工知能が必要情報を予測。勘定科目のセルから候補を選び、キーボードやマウスを動かすことなく自動振り分け・入力が可能。従来はマウスで位置指定し該当情報の入力が必要だったが、このように単純な入力作業はすべて人工知能が補助し手間を省いてくれる

ワークスアプリケーションズによれば「一般的な作表作業の90%近くを肩代わりできる」というが、デモを見る限り非常に素早く作表でき、また間違いも少ないことから、書類チェックや再提出といったエラー処理まで含めれば、確かに90%短縮というのも現実的な数値に思えてくる。

ビジネスマンの1日の仕事を振り返ってみると、実際の取引や会議などの間に、書類作成の時間がかなり占めているのではないだろうか。1日に1~2時間程度は書類の作成に割かれているかもしれない。こうした時間を人工知能が代わりに作業してくれて、そのぶんをクリエイティブな活動に費やせるというのが、HUEの目指している作業環境だ。