2009年のデビューから次々と話題作に出演し、若干22歳ながら俳優として活躍が目覚ましい菅田将暉さん。現在ヒット中の映画『ピンクとグレー』では、自分と同じ職業である俳優の役を演じ、その中で葛藤する姿を見せる。インタビューでも常に明晰な言葉を操る菅田さんは実際に自分の仕事をどう捉えているのか、話を伺った。

菅田将暉
1993年生まれ、大阪府出身。「仮面ライダーW」(EX)で、デビュー。主な出演作に連続テレビ小説「ごちそうさん」(NHK総合)、ドラマ「ちゃんぽんたべたか」(NHK総合)、「民王」(テレビ朝日系)など。今年は映画「星ガ丘ワンダーランド」「暗殺教室 卒業編」「二重生活」「ディストラクション・ベイビーズ」「セトウツミ」の公開を控える。

刺激のある世界は「熱いけど気持ちいい」

――菅田さんにも芸能界に入ってからの葛藤はありましたか?

僕がバカだったのか、最初は何も考えていなかったです(笑)。でも、地元にいたときにはない世界の広がり方を心地よく感じてました。地元にいた頃は、お風呂で言うと38度くらいで物足りないぬるい感じがあったけど、こっちの世界は41度くらいで、「熱いけど気持ちがいい」という感じで。友達との出会いがあっただけでも、出てきてよかったと思うし、刺激になってます。

――刺激というと、どんなことがありますか。

すべてにおいて感じます。学生時代は、何に対してもそこまで悩むことはなく、悩まないことに対してモヤモヤしていたところもあったんです。でも芸能界には、自分にやるべきことがあって、真摯に向き合って悩める。それが刺激であり、快感でもあります。この世界は自分たちで作ったものを人に見てもらえるし、やったことで評価される。モノづくりが好きな僕にとってこんなありがたいことはないと思います。

社長と新人が一緒に働いているみたい

――映画『ピンクとグレー』で菅田さんが演じた"りばちゃん"は、そういう刺激をありがたがる感じとも違いそうですね。

僕が河田大貴="りばちゃん"を演じるときに心がけていたのが「ふがいなさ」なんです。「男だったらそこは燃えないと」ってところで燃えない。幼なじみの鈴木真吾="ごっち"(中島裕翔)と一緒に撮影に参加したときも、客になってしまっている。自分だったら、同じ道に進みたいのに友達と差が付いてしまったら燃えると思うので、重なる部分はなかったですね。僕は、友人が何かしていたら、「いいな」と思うだけでは終わらせないで、自分もやりたくなると思うタイプなので。

――"りばちゃん"は幼なじみの"ごっち"のおかげで仕事を得ることを拒否したりもするわけですが。

僕も先輩と一緒に出演する機会もありましたけど、「先輩と一緒だわーい!」という感じで(笑)。でも、そうやって同じ事務所の先輩と一緒であることで仕事をもらったとしても、現場に行けば、僕のやる仕事は必ずあるんです。

この仕事って、撮影部さんも照明部さんもメイクさんも、監督も、僕みたいな俳優も、みんな同じ土俵で働いている。それって、会社で言うと、社長と新人サラリーマンが同じ現場で仕事をしているような感じで、すごく面白いことだと思うし、せっかくやるべきことがあって呼ばれたなら、面白がるほうがいいと思うんです。それに、今の自分があるのは、こういうインタビューでの一言だったり、毎日の着る服だったり、小さな選択を色々と積み重ねた結果だと思うんです。

――映画の中で「やりたいことより、やれることをやったほうがいい 」というセリフがありましたが、菅田さんはこのセリフについてどう思われますか?

少し前のテレビ番組で、林修さんが、プラスとマイナス、好きと嫌いで十字になる座標軸を描いていたんですね。その座標軸の中で、だいたいは誰でも「プラスになるし好き」なことはやる、「マイナスになるし嫌い」なことはやらない。でも、林さんは、「プラスだけど嫌い」なことをやるとおっしゃっていて、「やりたいことより、やれることをやったほうがいい 」というのは、まさにそれだなと思いました。

――実際の仕事でそういうものってありましたか?

僕はそもそも大変じゃない仕事はないし、楽なものなんてそうそうないと思っています。最近印象に残っている仕事では、トークバラエティ番組内での再現ドラマで、明石家さんまさんを演じたんですが、さんまさんに似ていないし、内容によっては叩かれそうだし、時間も15分程度だし、大変だとは思いました(笑)。でも、これは面白いぞ、やることに意義があるぞって思えるからやれるんですよね。それに、自分が演じた役として、プロフィールに「総理大臣」「さだまさし」「鬼」「明石家さんま」って並んだら面白いなと思いました(笑)。