ダスキンはこのほど、「花粉・ハウスダストと子どものアレルギーマーチ」と題したセミナーを開催。日本医科大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器科学分野教授で同大学医学部耳鼻咽喉科の教授も務める大久保公裕氏が「アレルギーマーチ」を食い止めるための予防策について語った。

日本医科大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器科学分野教授で同大学医学部耳鼻咽喉科の教授も務める大久保公裕氏が「アレルギーマーチ」の内容と対処法について語った

アレルギーの資質があると、次々と発症していく

「アレルギーマーチ」とは、アレルギーの資質を持つ子どもが成長するに伴い、アレルギー性疾患を続けて発症する現象のことを指す。もともと食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を患っている場合、その後、ハウスダストや花粉が原因のアレルギー性鼻炎になりやすいという。

なぜそのようなことが言えるかというと、食物アレルギーなどを持っている子どもは、IgEという抗体を作りやすいからだ。IgEとは「アレルゲン」に対して働く抗体のことで、これが多く作られていくことで、さまざまな症状を発症することになる。

花粉症を例にとってみると、体内に入った花粉に反応したIgEが、炎症などを引き起こす化学伝達物質をたくわえている「肥満細胞」に付着。花粉との接触を何回も繰り返すうちにIgEが付着した「肥満細胞」が増加していき、それが一定レベルを超えると、くしゃみや鼻水を引き起こす化学伝達物質「ヒスタミン」などを放出するようになる。その結果、花粉症が発症するのだ。

抗原に反応したIgEが「肥満細胞」に付着し、炎症などを引き起こす化学伝達物質が放出されることでアレルギー性疾患が発症する

IgEは食品に反応するもの、花粉に反応するもの、ハウスダストに反応するものなど、さまざまな抗体があるが、アレルギー性疾患の発症の仕組みは、全て同じ。もともとIgEを作りやすい資質を持っている子どもは、食品だけでなく、花粉やハウスダストに反応するIgEも作りやすいということになる。その結果、食物アレルギーだけでなく、ハウスダストが原因の通年性アレルギー性鼻炎、花粉が原因の季節性アレルギー性鼻炎も発症しやすくなってしまう。

さらに、花粉による季節性アレルギー性鼻炎の発症は低年齢化している。1998年と2008年のスギ花粉症の有病率を年代別に調べた調査(馬場廣太郎ほか,Pregress in Medicine 28(8),2008,2001-2012)によると、花粉の量が増えた影響もあるが、5~9歳児の有病率が1998年では7.2%であったのに対して、2008年では13.7%に増加した。「アレルギーマーチ」の進行を止める、悪化させないためには、早めの対処が必要なことがわかるだろう。

布団ダニの駆除には"掃除機"の前に"乾燥"が必要

それでは、どのように対処したらよいのだろうか。最も大切なのは、抗原となる花粉やハウスダストを除去したり、回避したりするということだ。このうち、ハウスダスト、主にダニについては「掃除機がけは1畳あたり30秒以上の時間をかけて行う」「布張りのソファ、カーペット、畳はできるだけやめる」「フローリングなどのホコリの立ちやすい場所は拭き掃除の後に掃除機をかける」などの対策が有効だ。

ダニの除去と回避がアレルギー性鼻炎発症と症状悪化の予防策となる

加えて、ダニの繁殖を防ぐために部屋の湿度は50%、室温は20~25度に保つことも重要となってくる。また、ダニの発生しやすい布団は「週に2回以上干す。困難な時は室内干しや布団乾燥機で、布団の湿度を減らす」「週に1回以上掃除機をかける」ことが大切だという。大久保氏は、「ダニは布団の奥にもぐっているため、掃除機で吸い取るのは難しい」と指摘。布団を乾燥させてダニを死滅させ、たたいた上で出てきた死骸を掃除機で吸い取るという手順が正しいようだ。

また花粉については、外出時にマスクを着用したり、帰宅時に手洗い・うがいと鼻をかんだりするなど、基本的なことを励行しよう。花粉が家に侵入してくるのを防ぐためにも、花粉がつきやすい衣服を避ける、衣服や髪の毛についた花粉を払ってから入室するなどの対策が有効だ。

まずは"ハウスダスト"対策を

既に発症している場合には、症状を悪化させないために、薬物療法や特異的免疫療法、手術療法などを施してもらうことも必要となってくるだろう。いずれにせよ、早め早めの対策が功を奏すことは間違いない。

大久保氏は「まずハウスダスト・ダニによる通年性アレルギーが発症して、花粉症の誘発につながっているというケースが多い」と指摘。ハウスダストやダニを発生させないように配慮し、掃除を励行することで、子どもの生活環境を整えることが最も大切だと語ってくれた。

子どもたちが将来にわたって、数多くのアレルギー性疾患に悩まされないためにも、ぜひ親たちに気を配ってほしい。