【レポート】

「新しい何かを始めよう。」で紹介されたアーティスト・牧かほりさんがApple Store 表参道のイベントに登場

9日、Apple Store 表参道にて、アップルが現在展開している「新しい何かを始めよう。」キャンペーンで紹介されたグラフィックアーティスト・牧かほりさんのトークライブ&ワークショップが開催された。

牧さんは、92年日本大学芸術学部卒業後に渡米。ニューヨークでファインアートを学び94年帰国後フリーランスのイラストレーターとしてキャリアをスタートさせた。COMME des GARCONSの2005 A/Wでペインティングを提供したほか、JUJUやHIATUSのアルバムジャケットなどを手がけ、2008年には文化庁メディア芸術祭でアート部門審査委員会推薦作品を受賞している。

「新しい何かを始めよう。」キャンペーンで紹介された作品"VISIONEO16"。2016年、新しいビジョンへ向けて、という思いが込められている

アップルが同社製品をフィーチャーしたキャンペーン「新しい何かを始めよう。」で、牧さんは、iPhone 6s、iPad Pro、Apple Pencilにスケッチアプリ『Procreate』を使った作品"VISIONEO16"という作品を提供。イベントは、同キャンペーンに採用された経緯についてからの話で始まった。

当日、モデレーターを務めたのは、デジタルテクノロジーとファッションに特化したWebメディア『DiFa(ディーファ)』の編集長・市川渚さん(写真右)。市川さんは、十代の頃に通っていたヘアサロンが、牧さんが通っていたところと同じだったと明かす。その時、店内に飾ってあった作品が、まさに牧さんの作品であったとのことだ

今回、声がかかったきっかけについては、Behanceというポートフォリオサイトに作品をアップしていたところ、アップルの担当者に目がとまったと牧さん。最初に連絡があったときは、唐突過ぎて「嘘のメールが届いた」と訝しく思ったそうだ。

牧さん自身、ペンタブレットのようなデバイスを使って制作した経験はなく、最初、全てをiPad Proで描き上げるのは無理かもしれないと正直に伝えたと、そのときのことを振り返る。だが、アップルは、そういったデジタルデバイスを使った活動をしていない作家を探していたらしい。そこにはiPad Proを渡したら、どんなことになるんだろうという期待と、不安を払拭してくれる使い心地のよさを保証できる自信があったからに違いない。それが、今回、"VISIONEO16"という作品で見事に結実した。

牧さんは、MacとAdobe Photoshopを使って数多くの作品を手がけている。インスタレーションで使った巨大なグラフィックスは、当時、保存も印刷も大変で、プリンティングサービスにデータを受け渡すのが困難だったため、Macをそのまま持ち込んだと述懐した

とは言うものの、牧さんは、MacとAdobe Photoshopを利用していくつも作品を発表している。おそらく彼女にとっては、iPad ProとApple Pencilも、制作に使える「道具」として使えるかどうかという基準しか持っていなかったのではなかろうか。作家にとって重要なことは、手にした「道具」が自分のコンセプトやアイディアを具体的な作品として落としこめるようにしてくれるかどうかということなのだ。その尺度で、アーティストは「道具」を選ぶのである。もちろん、筆だったり、鉛筆だったりしないと描けないという作家もいる。しかし、牧さんの場合、有り体に言ったら進取の気性に富んでいるということなのだろうか、新しいデバイスでも、すぐさまその良さを見つけて、ツールとして取り込んでいるのである。彼女の場合、変わることを躊躇せず、むしろそれを面白がっているような印象がある。変化を恐れず、新しい何かに向かって邁進し、新しい表現方法を獲得しているのだ。

iPad ProとApple Pencilを使って描いた最近の作品。Apple Pencilは軽く、筆などの従来の画材と同じフィーリングで使えるという。ただ、何を描くにもガラスを叩いてる感覚が残るのにはなかなか慣れなかったとも

トークでは、そもそも、デジタルの世界は有限だと思い込んでたところがあったと牧さんは心情を吐露。だが、iPad ProとApple Pencilを使ってみたら、模様を替え、太さを替えといったことができるし、普通のペンが滲むようにApple Pencilも滲む表現が可能であるということに気づき、開発者が無限を目指しているんだなと、自身の認識も変わったと話す。

市川さんを被写体に、写真を素材として利用する

続いて制作に利用したアプリ『Procreate』の紹介に入り、実際に制作のプロセスをレクチャーしながらのワークショップに突入。来場した人々もiPadを手に、その場で写真を撮って、絵を描いていく。最初は『Procreate』ではなく、『Adobe Sketch』を使用。『Procreate』同様、レイヤーも使え、写真を取り込んで加工できるので、絵を描けなくても絵になると説明しながら作業を進めていく。

『Adobe Sketch』より、もっと凝ったことをするのなら、ということで、『Procreate』も改めて紹介。『Adobe Sketch』にはない豊富なエフェクトを利用して、より作品に深みをもたせていく。

ササッと作業を進めていく牧さん。楽しそうに描くさまは、鼻歌が出そうな勢いだ

解説していく中で、印象的だったのは「画力関係ないですからね」という牧さんの言葉だ。牧さんは、ストア内で撮った市川さんの顔写真にペイントを重ねていったのだが、その一連の作業はとても簡単そうで、これなら絵心のない自分にもできるかもと思えるようなものだった。

来場した子供たちが描いた作品。笑いを誘うものも、おおっと目を惹くものも

ワークショップの最後には、来場した子供たちが描いた作品を発表。短い時間ではあったが、iPadを使って絵を描くのを充分に楽しんでいるという様子であった。

牧さんのイベントは、今週の土曜日(1月16日)の14時から、Apple Store 名古屋栄でも開催される。アーティストの創作のプロセスを見られるだけでなく、アイディアの膨らませ方、具体的なテクニックまで触れられるという、またとないチャンスでもある。入場料は無料なので、お近くの方は是非、足を運んでいただきたい。

大盛況のうちにイベントは終了。最後は牧さんの作品"VISIONEO16"の前で、ストアイベント恒例の記念撮影!

人気記事

一覧

新着記事