ジュピターテレコム 執行役員 ケーブルTV事業部門 副部門長 堀田和志氏

ただし、これらの試算は電力自由化前の東京電力と比べたもの。両社とも、発表の時点では東京電力の自由化以降の価格を知らず、本当に価格競争力があるかどうか確信は持てていない。また、このセット販売の施策がどこまで“首都圏電力のガリバー”である東京電力に通用するのか“手探り”といった印象だ。

事実、ジュピターテレコム 執行役員 ケーブルTV事業部門 副部門長 堀田和志氏は、「中期的にエリア内加入率の20%にあたる、100万世帯を獲得したい」とするが、実際どのくらいの年数で達成できるのかは明言を避けた。また、4月の電力自由化開始までに「価格の見直しも考えられる」(堀田氏)と、逡巡している様子もうかがえる。「中期的」と断言していることを捉えれば“3~5年で100万世帯”と考えているといえそうだ。

ジュピターテレコム ケーブルTV 事業部門 ケーブルTV事業統括本部長 高橋邦昌氏

ただ、J:COMの場合、強みがある。それは、訪問販売スタッフやサービスエンジニアリング、ジェイコムショップ、専門チャンネル用番組表冊子の送付、J:COMポータルサイトなど、契約者にダイレクトにアプローチできる“接点”が整っていること。実際、今回の電力サービス開始にあたり「ヒューマンリソースの強化や営業所の拡充といった施策は考えていない」(ケーブルTV 事業部門 ケーブルTV事業統括本部長 高橋邦昌氏)という。これらの接点を効果的に活用して電気サービスを訴求すれば、数年で100万世帯は難しい数字ではないといえる。

1月1日より放映されている東京ガスのCM(東京ガスのプレスリリースより)

むしろ、東京ガスのほうが消費者とのダイレクトな接点探しで苦労しそうだ。自由化までまだ数カ月残しているのに、年末から大規模にテレビCMを打っているのは、その表れといえなくもない。

一方、こうした事業者を迎え撃つ東京電力の戦略はどうか。後編にてお伝えしたい。


全面自由化前夜……夜明けを待つ電力会社の動静

電力小売自由化目前! 過熱する首都圏の需要争奪戦の現状【後編】
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