「さとり世代」と言われるいまの若者。そんなさとり世代のビジネスパーソンは働くことに対してどのような意識を持っているのだろうか。今回お話を伺ったのは「さとり世代」「マイルドヤンキー」などの言葉を生み出した博報堂ブランドデザイン 若者研究所 リーダーの原田曜平さん。12月5日に発表となったウーマン・オブ・ザ・イヤー(『日経WOMAN』主催)で審査員を務めた原田さんに、さとり世代の仕事上での特徴や働く意識などを聞いた。

博報堂ブランドデザイン 若者研究所リーダー 原田曜平さん

さとり世代の働く意識とは

――さとり世代のビジネスパーソンには、働く上でどのような特徴がみられるのでしょうか 

1つは、上の世代から"大人しい"とみられがちなことです。上の世代の方が、努力した分だけ翌年の給料が上がるなど、成果が見えやすかった分ギラギラしていたんだと思います。 そういった時代にギャップがあるので、上の世代からは"馬力がない" "ワークライフバランス重視型" と見られがちです。

もう1つはコミュニケーションの変化です。さとり世代は、メールやSNSの普及によって、テキストのコミュニケーションで育っています。色々な会社の人から、「仕事中、目の前にいるのに、メールで報告がきた」「LINEでスタンプだけが送られてきた」ということをよく聞きます。これまで下の世代に対して言われていたのは敬語の崩れくらいでした。それがメールやLINEスタンプなどの文化によって、よりジェネレーションギャップを生み出しやすくなっているのだと思います。客観的にみても大きな変化ではないでしょうか。

さとり世代は"優しい"

――上の世代と比較して、働く意識はどのように変化してきているのでしょうか

今のさとり世代の特徴として、"優しい子"が増えています。上の世代のほうが、人を蹴落として上がったり、同期へのライバル意識が強かったりと、社内環境がギスギスしていたと思います。さとり世代は、同期同士もすごく仲良くなってきていますよね。ただ、この"優しさ"が、もし仲間うちだけで閉じてしまっているのなら、それはすごく勿体無いことです。

どの世代も長所と短所があると思います。上の世代のように、徹夜して血眼で働くというのが良いのかどうかはさておき、さとり世代ではそういった人達が減ってきているのは確かです。

――さとり世代のビジネスパーソンに仕事に対するアドバイスはありますか

大学を卒業したさとり世代の若者は、"マイルドヤンキー"のような中学の同級生ともSNSでの繋がりを持っているので、色々な人の特徴や家庭の事情をわかっているんですよ。

一方、昔は今よりも、大学時代に他の学校に通う人と接する機会が少なかったと思うんです。自分と近しい家柄の人の考え方くらいしか、あまり触れてこなかったかもしれない。だからこそ、色々な人の気持ちを知っているさとり世代のほうが、今のユーザーに向けたCMや商品をつくれるのかもしれません。その点においては、上の世代よりも優秀であるということを、自分たちの強みとして理解してほしいですね。

今後のさとり世代の働く女性の特徴とは

――これまで若者全体について伺ってきましたが、さとり世代の「働く女性」にはどのような"兆し"があるのでしょうか

専業主婦になりたい女性が増えていると思います。国が「男女参画」「一億総活躍」を掲げる一方、さとり世代は逆行しているんです。博報堂生活総合研究所の調査では首都圏・阪神圏の20代女性の4割以上が「専業主婦になりたい」と回答した結果が出ています。正社員同士で比較しても、女性の賃金は男性の賃金の約7割であったり、出産などのライフイベントでキャリアを中断せざるを得なかったり、女性ならではの大変さを知っているのが理由なのかもしれません。日本は遅れている面もありますので。

――さとり世代の働く女性に何かアドバイスがあれば

昔の女性は選択肢が少なかったと思います。しかし、今の女性は男性よりも選択肢が多く、20代の早い段階で自分のロールモデルを見つけたほうが生きやすくなると思います。専業主婦に幸せを見出すならその道を選択すればいいでしょう。もしそうでないのなら、早く良いバランスで働いている人を見つけて自分も適度な労働環境におけるようにしたほうがいい。「バリキャリ」になりたいのであれば、そういったロールモデルや、活躍できる会社を見つければ良いと思います。

――ありがとうございました