韓国・釜山にある日本語学院・留学センターの若き院長であるソン・ナリさん(34歳)。現役高校生をメインに日本語習得、留学対策を行っており、高い指導力とカリスマ性で多くの韓国人の学生を日本の有名大学に合格させてきました。自らの日本留学・企業勤務経験を生かし日本と韓国のために日々奮闘し、まさに「才色兼備」という言葉がぴったりな彼女に、仕事に対するその思いを熱く語ってもらいました。

ソン・ナリさん/大韓民国・釜山(プサン)在住/34歳/TIS日本語学院・TIS日本留学センター所長

■これまでのキャリアの経緯を教えてください

日本の大学に留学し建築学を専攻しました。卒業後はそのまま日本の建築会社に就職し、その後、2005年に韓国に帰国。日本との関わりが持て、留学や就職経験を生かせる仕事がしたいという思いから、同年、釜山で外国語学院(TIS外国語学院)をオープン。2011年には外国語学院と併設して留学センターも開設しました。

■現在のお給料について教えてください

現在の収入は月によって変動がありますが、韓国では高所得の水準です。もちろん、会社員として勤務していた頃とは大きく異なります。2011年に東日本大震災があった影響で、一時的に学生数が減少するなど状況が悪化した時期がありましたが、現在では震災前の状態に回復しています。

■自分の国の労働環境や今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?

韓国はやはり、日本と近い距離にあって日本語を必要とする企業や仕事も多い点が挙げられます。私の今の仕事はハードな上、生徒の進路を一番に考え神経を使うことも多いので大変ではありますが、それでも一番のやりがいや満足を感じるのは、毎年、多くの教え子たちを日本の有名大学(国立では一橋大、京都大、筑波大、大阪大学など、私立では早稲田、慶応、立教、法政大学など)に合格させていることです。

また、教え子たちが卒業後も学院に顔を出しに来てくれることが嬉しいです。男子生徒で現在兵役中の生徒が休暇を利用して遊びに来てくれたり、結婚式に招待してくれたりした時などは、まるで我が子の成長を見守るような気分になり特に喜びを感じます。

生徒たちと。生徒たちの努力や、教え子が卒業後も遊びに来てくれることが我が子の成長のようで喜びを感じる

■逆に自分の国の労働環境や今の仕事で大変なこと、嫌な点は?

韓国では全体的に勤務時間が長いことが労働環境として大変な点であると思いますが、私の仕事も例に漏れず長時間労働、激務です。生徒が通学して来る昼前に出勤し、帰宅は深夜に及ぶことが多々あります。特に夜間の時間帯は忙しいのでゆっくりと夕食を取る時間もありません。加えて生徒の受験時期などは平日、週末を問わず出勤しますし、多忙故に実は結婚後の新婚旅行も未だに行けていません。また、授業で長時間、話続けるため喉を酷使してしまうことも大変な点です。

■あなたの「マストビジネスアイテム」を教えてください

やはり日本語や留学に関連した書籍や資料が欠かせないマストアイテムになっている感じですね。

学院で使用している日本語テキストや留学に関連した資料の数々

■日本人のイメージは?あるいは理解しがたいところなどありますか?

私は留学とOL時代の7年間を日本で過ごし、本当に日本が大好きになりました。日本での生活を通じて特に感銘を受けたのは、日本人の誠実さと勤勉性です。この国民性は世界一だと思っています。

留学先の大学教授や勤務先の上司など様々な人たちに出会ってきましたが、彼らは私を「外国人だから」「留学生だから」と言った理由で特別扱いしたり、差別したりすることなく、人柄や努力を見ていつも評価してくださいました。私が日本に留学した時代はまだ韓国人留学生が多くなく、建築学部での女子学生も珍しかったのですが、そんな私をいつも熱心に指導し、暖かく応援してくれた特に教授のことは忘れることはできません。私にとって日本での生活はただ、勉強を学ぶだけでなく、努力や忍耐をすることで結果も出るということも学んだと言えます。

韓国に戻ってこの仕事を始めた時に「自信を持ってベストを尽くせば何でもできる!」という、日本で学んだ強い気持ちがよみがえってきました。実は今でもまた日本で生活したいという思いがありますが、最近の日本は高齢化の影響もあってか、少し元気がないように思えるのが残念にも感じます。それでも日本は今の私を作ってくれた第2の故郷だと思っています。

■最近TVやラジオ、新聞などで見た・聞いた日本のニュースは何ですか?

すみません。最近は受験シーズンで特に忙しく、ゆっくりニュースや新聞を見る時間がなく、日本の話題やニュースに疎くなっています(涙)。

■休日の取り方を教えてください

とにかく勤務時間が長く激務なため、休みの日は自宅でゆっくり休み、睡眠不足を補うようにしています。また、現在妊娠4カ月に入ったところなので、特に体調管理には気を付けています。

■将来の仕事や生活の展望は?

私は韓国と日本は決して切れない関係だと思っています。韓国社会もグローバル化が進み文化や価値観が多様化しているので、私のしている仕事が韓国の若者の進路などに少しでも役に立ち良い影響となればいいとですね。

また、2011年の東日本大震災で日本は大きな被害を受け、現在は復興に力を入れていることと思いますが、2020年に東京オリンピックでまた元気な日本の姿を見せて欲しいと思いますし、これがきっかけとなり、韓国の若者たちに日本の元気な姿を見て関心を持ってもらえればと思います。まだまだやるべきことがたくさんありますが、若い世代の未来のためにできるこの仕事が誇りですからこれからも頑張ります!

学院の本棚にずらりと並んだ日本の大学受験関係の問題集や参考書。まるで日本の予備校のよう!?