ソニーの平井一夫社長が、米ラスベガスで開催されたCES 2016の会場でインタビューに応じた。「今年は驚きがないCESだったかもしれないが」と切り出しつつ、「ソニーはコンシューマーにイノベーションを提案し続ける企業である」というメッセージを改めて強調した。また、4Kテレビに関しても「参考展示したBlacklight Master Driveでは、既存製品のイノベーションを示した」と述べた。平井社長にCES 2016の総括に加え、同社のテレビ事業、モバイル事業、オーディオ事業などの取り組みについて聞いた。

CES 2016のソニーブース

ソニー 代表執行役社長 兼 CEOの平井一夫氏

―― CES 2016における、ソニーブースのポイントは?

平井氏:テレビに関しては「HDR」により、コンテンツの魅力をさらに引き出せる4K BRAVIAの新製品「X93D」を発表した。また、超高輝度、高コントラストを実現する「Blacklight Master Drive」を参考展示した。オーディオはハイレゾ製品をさらに強化。ファッショナブルな「h.ear」シリーズの新カテゴリーとして、ワイヤレススピーカーとワイヤレスヘッドホンを投入した。注目を集めているレコードプレーヤーも発表した。また、「Life Space UX」の新製品を日本と米国で発売することも明らかにした。

CES 2016のソニーブースでは、こうしたコンシューマ製品におけるイノベーションや考え方、我々の進化を見てもらえるだろう。SAP(Seed Acceleration Program)によって生まれた新たな製品も展示している。ソニーはこれからもイノベーションを積極的に推し進め、それを商品化していくことにもリスクをとって取り組んでいく。

4K・HDR対応のBRAVIA X93Dシリーズ

―― CES 2016は、ソニーだけでなく、出展したエレクトロニクス企業全体に大きな目玉がなく、次の旗頭が見えない印象を受けます。

平井氏:驚きがないCESだったといえば、そうなるかもしれない。ビジネスの転換期が訪れているのは確かである。主催元がCTAに名称を変え、自動車メーカーが参加し、エレクトロニス業界と自動車業界の接点が増えてきた。BtoBへとシフトしていることを感じるなかで、ソニーがどう変わっていくのかを考えさせられたCESであった。

そのなかで、我々はコンシューマーにフォーカスした展示を行った。ソニーはこの部分にコミットするんだ、というメッセージを強く発信できたと考えている。ソニーは、BtoBを重要なビジネスであると見ているが、コンシューマーに対して商品のイノベーションを提案し続ける企業でありたいと考えている。BtoCをやっていくことを明確にしたかった。

「テレビはまだイノベーションがあるのか」という質問を受けるが、私は確実にあると思う。たとえば、今回参考展示した「Blacklight Master Drive」は、ユーザーに明確な違いがわかってもらえる技術であり、既存の商品分野においても、イノベーションを続けていくという強いメッセージを発信できたと考えている。「KANDO:感動」を提案するためには、やることはまだまだある。そこにソニーのDNAがある。

Blacklight Master Driveと既存製品の比較展示を行った

今、注目を集めている商品のひとつに「PlayStation VR」があるが、これをCES 2016では見せなかった。その理由は、PlayStation VRはゲーム中心のイノベーションであり、それに最適な場で発表するべきと考えたためだ。年間を通じて、見ていただくことでソニーらしさを感じてもらえるだろう。

PlayStation VRは、今回お預けに。ちなみに、E3 2016は6月14日からの開催だ