【レポート】

260兆円市場が静かに広がりをみせる「APIエコノミー」

 

「APIエコノミー」というキーワードをご存じだろうか。はるか昔のIT開発はすべてのコンポーネントを自社開発するのが一般的だった。しかし昨今は、コンポーネントを他社から調達し、開発サイクルの短縮と新たなビジネスモデルを実現している。この仕組みをビジネスチャンスにつなげるのが冒頭のキーワードだ。「API」自体は決して目新しいものではないが、簡単な説明が必要だろう。そもそもAPIは簡潔にコードを記述するための「Application Programming Interfaces」を略し、主にプログラム開発の現場で使われてきた単語である。

かつては、イラストであった会社概要ページの地図も今ではAPIを利用したものへと

例えばMicrosoftがWindowsの機能を呼び出す手続き(=API)を用意することで、ソフトウェア開発者はコーディングの手間を大きく低減できるが、同じことはWeb上でも行われてきた。2000年代中頃から登場した「Web API(=Webサービス)」は、Webの技術を用いて同様の仕組みを構築している。一例を挙げればGoogleマップやBing MapsはWeb APIを有償/無償で公開し、新たなビジネスモデルを生み出してきた。自社の場所を示す地図としてイラストを掲載している企業を見つけるのが難しいことでも、その広がり具合を実感できる。

Deloitte Consulting LLPの各人がAPIエコノミーについて寄稿した「Tech Trends 2015」

これまで表立ってこなかったAPIが「ビジネス化しつつある」と提言するのが、経営コンサルティングを行うDeloitte Consulting LLPのGeorge Collins氏とDavid Sisk氏だ。彼らはAPIエコノミーが「APIは組織が持つコアアセットの範囲を拡大させ、再利用や新たな収益ストリームを生み出す」とWebサイトで語り、APIエコノミーが自社技術の再活用(=エコシステム)や、新たなビジネスモデルの構築を可能にしているという。

Web APIをビジネスとして捉えると、Salesforce.comやProgrammableWebの存在を避けては通れない。前者はCRMソリューションを中心としたサービス提供、後者はWeb上の各種APIリポジトリとして、開発者の間では有名なサービスの1つだ。前者は2000年からWeb APIを顧客に提供し、自社サービスを利用したシステムを運用したCRM系SaaSベンダーとして存在感を示している。

後者は2005年からWeb上の各種APIリポジトリとして、開発者の間では有名なサービスの1つだ。同社は2010年にAlcatel-Lucentが買収したが、現在でもサービスは展開中。買収理由としてAlcatel-Lucentは「APIに携わる関係者のエコシステムを育成し、クラウド時代(当時同社はブロードバンドモバイル新世界と表現)の開発環境を盛り上げる」と当時説明していた。奇しくも同社の予想どおりクラウドベースのSaaS利用が広まり、各種サーバーもオンプレミスからクラウドに移行しつつあるのが現状だ。このような流れは前述したGoogleマップやFacebookプラットフォーム、先頃日本上陸したストリーミング配信サービスNetflixのAPIプラットフォームと多岐にわたる。

SlideShareに掲載してあるRasmus Ekman氏のスライド。Developers Summit 2015 Summerで発表した「APIエコノミーで日本をよくしましょう」の資料(http://www.slideshare.net/rasmusekman/api-51079815)

IBMもAPIエコノミーへ積極的にコミットする企業の1つだ。同社は2013年6月に獲得したIaaS「SoftLayer」や、アプリケーションの開発や管理、運用を可能にするPaaS「Bluemix」などを組み合わせ自社プラットフォーム内で、APIの活用がアプリケーションの価値を少ない工数で高めることが可能であるとアピールしてきた。日本アイ・ビー・エムのクラウドテクニカルサービス クラウドアドバイザーのRasmus Ekman氏も、2015年11月に国内で開催した「IBM FinTech Meetup」で、APIエコノミーを組み合わせると「コンポーザブルな開発が可能になる」と説明している。

API管理ソフトウェアの開発を行っている3Scaleは、スポーツ製品で有名なNIKEが、毎日数百人からのデータを集約してスポーツ用SNSを実現し、世界最大級の建設会社であるBechtelも大規模な監視とITシステムを実践しているといった事例を挙げて、「すでに多くの企業にAPIエコノミーが浸透している」と説明する。

このように広まりつつあるAPIエコノミーだが、IBMは2015年11月の時点で市場は2.2兆ドルと推定し、今後2~3年内にAPIプログラムを持つ企業数は150パーセントの増加を予測している

だが、これだけでは、"APIの提供者が収入を得て、開発を容易にする"という単純な仕組みとなってしまう。APIエコノミーで重要なのは、機能やデータを提供もしくは利用することで、"新たなビジネスを生み出せる"という点だ。技術的側面は十分満たしてきたが、ビジネスにつなげると新たな価値が生まれるというのが、APIエコノミーに対するIT業界の見方である。

ここで重要なのはプロバイダーとコンシューマーが相互的につながっている点だ。このように述べると認証などサイバーセキュリティ面のリスクが頭をよぎるが、これらは既存のセキュリティ対策技術が功を奏す。現在多くの企業がAPIを提供しているが、APIエコノミーという観点から見れば黎明期というべき現状だが、ここからセキュリティ対策に優れたAPI、劣ったAPIといった淘汰が始まるはずだ。

昨今は「エコシステム」という企業間の事業連携協業を指すバズワードが盛り上がりをみせていた。だが、APIエコノミーはより現実的に、提供できるデータで新たなビジネスを生み出せるのか、他企業のAPIを利用すればビジネス規模の拡充につながるのか、といった発想が可能になる。経営者や現場の担当者は新たなビジネスチャンスにつながるAPIエコノミーに注目し、自社で何ができるのかを一考すべきだ。

阿久津良和(Cactus)

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