子宮頸がんの予防法とがん化する前に見つける方法は?

前編では、子宮頸がんの基本知識やステージ、後遺症のリスクについて、女性ライフクリニック銀座の対馬ルリ子院長にお聞きした。後編では、子宮頸がんの予防法や検診の重要性について語ってもらった。特に20・30代の女性の皆さんには、「なぜ若い年代からの子宮頸がん検診が大切なのか」を理解していただければと思う。


子宮頸がん予防ワクチンと検診

現在、子宮頸がんの予防法には、中学1年生~高校1年生ぐらいまでの女子を対象とした予防ワクチンの接種がある。日本では、16型と18型のウイルスに対する抗体をつくるワクチンの接種ができ、同じ種類のワクチンを半年に3回接種することで感染予防効果が得られることがわかっている(※)。

対馬院長は、「検診は子宮頸がんを防ぐ方法ではなく、できるだけ早期で発見するために受けるものです」としたうえで、「日本産科婦人科学会では、予防ワクチンの接種を推奨しています。予防ワクチンはたくさんの人が受ければ受けるほど、メリットがあるものです」と、予防ワクチンの重要性を語る。

また、生活習慣でがん化を防げるかというと、それは難しいという。「がん細胞は1日に何千個となくできています。つまり、人間は毎日がん細胞と戦っているということ。がん化するかどうかは、個人の体の持つ免疫力に関わるのですが、免疫力は自分ではかれるものではありません。がんになってから"免疫力が弱っていたな"と思う人が多いのではないでしょうか」。

だからこそ定期的に検診を受け、がん化する前、がん化した後でも初期の状態で見つけることが重要になる。

※厚生労働省では現在、副反応の報告などにより、子宮頸がん予防ワクチンの積極的な接種推奨を一時的に差し控えている

欧米ではHPVの存在を調べる検査が主流に

子宮頸がんは、子宮頸部の表面にできる「扁平(へんぺい)上皮がん」と、子宮の奥側の粘液を分泌する部分にできる「腺がん」に分けられる。扁平上皮がんが約80%を占めるのに対し、腺がんは約10%と割合こそ少ないが、腺がんは検診では見つけづらいうえに、進行も早い。「半年前の検診で異常がなかったのに、あっという間に進行していた」というケースもあるのだ。

対馬院長によると、アメリカをはじめとする世界各国では、細胞診とHPV検査を同時に行える「液状細胞診」という検査が主流になっているという。いずれも子宮頸部の細胞をブラシなどで採取する検査だが、細胞診では細胞をスライドグラスにこすりつけて形状を見るのに対し、HPV検査では細胞にHPVが存在するかどうかを確認する。

「日本の検診で採用されている従来の検査は細胞診で、HPV検査と同時に行えないところも多いです。日本でも液状細胞診が検診に使えるようになれば、HPVに感染しているか、がんのリスクが高いかどうかの判断ができるようになります」。

20代前半から2年に1回の検診を

前述したとおり、まずは定期的に検診を受ける習慣をつけることが大切だ。そうすることで女性の健康、さらには人生を守る鍵になる。

「乳がんも同様ですが、一般的に子宮頸がんは感染から細胞の変化を経て数年から10年ほどかかります。20代前半から少なくとも2年に1回は検診を受けてほしいですね。よく患者さんで『1回だけは受けたことがある』っておっしゃる方がいるのですが、検診は習慣にしないと意味がありません」。

また、母と娘のコミュニケーションについても言及し、「家庭でも、子宮頸がんのリスクをお母さんから娘さんへ教えてあげてほしいですね。お母さんと一緒に婦人科に行って検診を行う、ということが当たり前に行われればいいと思います。若いうちから自分の体を守る意識を養うことは一生の財産になりますから」と、検診の普及を訴えた。

検診に行かなければいけないとわかっていても、つい二の足を踏んでしまうことがある。その理由は、忙しさだけでなく「怖さ」もあるはずだ。もし子宮頸がんだったら、もし子宮を失って子供が産めない体になったら、もしほかの病気が見つかったら……と想像しただけでも怖いだろう。しかし、進行した子宮頸がんは若い女性の人生を大きく変えてしまう。女性のライフスタイルを輝かせるためには、体が資本だ。健康な体で充実した人生を送るためにも検診を習慣にしてほしい。

※画像は本文と関係ありません

記事監修: 対馬ルリ子(つしま・るりこ)

現職
対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座院長
産婦人科医、医学博士
専門は周産期学、ウィミンズヘルス

経歴
1984年、弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室助手、都立墨東病院周産期センター産婦人科医長などを経て、2002年にウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック(現 対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座)を開院、院長を務める。2003年には女性の心と体、社会とのかかわりを総合的に捉え、健康維持を助ける医療(女性外来)をすすめる会「NPO法人 女性医療ネットワーク」を設立。理事長として、全国450名の女性医師・女性医療者と連携して積極的に活動しているほか、女性の生涯にわたる健康のためにさまざまな情報提供、啓発活動を行っている。現在、東京大学医学部大学院非常勤講師(母子保健)。「ウーマンウェルネス研究会 supported by Kao」の代表も務める。