老後はいくら必要?

――老後資金について、「老後破産」などが話題になっています。「老後に必要なお金は1億円」という話も聞きますが、どれぐらいためておけばいいのでしょうか?

山崎さん:そんなになくても大丈夫です。その数字の中の大きな部分は公的年金でカバーできますから。

――公的年金ですか。正直なところ、若い世代には「年金って本当に貰えるの?」という不信感があります

山崎さん:「日本という国が50年後もあるのか?」と聞かれると「絶対ある」とは言えません。でも、今の制度を前提とすると、公的年金は積立金が枯渇しても、徴収した保険料を高齢者に配っているだけですから、ぽっきり折れることはありません。「30年後には受給額が今より2-4割減っているかもしれない」という現状がおそらくやってきますが、無くなることは考えにくい。

例えば現時点の仕組みでは「厚生年金を20万円くらい貰える」というレベルのサラリーマン夫婦がいたとします。それが30年後には受給額が2~4割減って12万円-16万円になるということはありえます。

――結構減りますね……。「年金保険料を払っても意味ない」という理由で滞納している人もいると聞きます

山崎さん:年金の財源というのは現役世代からの厚生年金や国民年金だけでなく、税金からも賄われています。つまり、年金保険料を払わずにいて給付をもらえないと、自分の納税から年金に回る分損してしまいます。先ほどお話した確定拠出年金も、年金を払っていないと使うことはできません。

――公的年金を12-16万円受け取ると想定すると、自分ではどのぐらい用意しておけばいいのでしょうか?

山崎さん:95歳まで生きるとすると、年金生活をするのは「95歳-65歳=30年間=360カ月」となります。この「360」という数字を使って、今の貯金と老後のお金を繋いで計算するといいと思います。

――「360」で計算するとは?

山崎さん:「今お金が360万円あるとします。「360万円÷360カ月=月1万円」なので、月1万円ずつを公的年金から貰えるお金や老後に稼ぐお金に加えて、蓄えを取り崩して上乗せできるという計算になります。仮に3,600万円貯めておけば、「3,600万円÷360カ月=月10万円」ずつ取り崩せる。ということは、年金が12万円だった場合、自分の貯金から毎月10万円上乗せして、月22万円の予算になるということです。

年をとると、生活費は下がります。その上公的年金があるから、それをきちんと納めていれば、そこまで切羽詰まらなくても大丈夫です。心配な人は手取り収入の2~3割ぐらいを貯めておくといいでしょう。

初心者が投資を始めてみたら……?

――大橋さんは投資を始めて数カ月経ったそうですが、実際に運用してみての感想はいかがですか?

大橋さん:投資を始める前は、投資信託を運用している外資系金融機関のトレーダーや外国人トレーダーってめちゃくちゃすごいと思いこんでいました。でも、インデックスファンドであれば、一般人でもそういった人がやっているのと、そんなに変わらない運用が出来るようになっているとわかりました」。

――「投資の神様」と呼ばれているウォーレン・バフェットさんを始めとする外国人トレーダーや外資系金融機関の人って、ものすごく頭がいい超人というか、別世界の人のようにも思っていました

山崎さん:バフェットさんは、「すごーく運が良かった人」。彼自身もそう言っています。彼は投資家に対し「私のように運用しろ」とは言っておらず、むしろ「インデックスファンドを買え」とアドバイスをしているぐらいです。結局、お金の運用をうまくやり続けるのはすごく難しい話なのです。バフェット氏は「自分は大変運が良かった、恵まれていた」という意識を持っていらっしゃいます。

――そう考えると、投資の神様もおすすめしているインデックスファンドって優秀なのですね。ちなみに大橋さんの今の運用成績はどうですか?

大橋さん:始めたタイミングで丁度チャイナショックがあって、いきなり20万円ぐらい下がって結構ビビりました。本を出した時に「お前が損しているじゃないか」ってクレームが来る……! と思って(笑)。下がった分はじわじわと戻ってきています。今(2015年12月)は外国株式の方がマイナス、国内株式がプラスですね。

山崎さん:本で紹介している「平均5%の運用を目指す」というのは、ちょっと波を打ちながら微増するというイメージです。凹んでもぼーっとしていれば浮上するという気分で気長に運用してください。

――ありがとうございました


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