【レポート】

2015年、私はApple Watchを使い続けた - その価値と意味をぼんやり振り返る

 

昨年もAppleはいろいろなモノで我々を翻弄してくれました。何となくすぐに評価しづらいものが増えている印象ではありますが、象徴的だったのがApple Watchでした。ということで、昨年Apple Watchをお求めになったみなさん、便利にお使いですか? 買ったけれど使わなくなってしまったという話をネット上で見かけることもありましたが、オーナーの腕の上で新年を刻んだApple Watchはどれだけあったのでしょうか。

iPhoneはパソコンか?

新年早々ですが、ちょっと昔話を。iPhoneがじわじわと利用者を増やし始めた頃のこと。ガラケー全盛の時代でしたが、いち早くスマートフォンの面白さに気付いたユーザーたちはいかに使い倒すかを常に探り続けていました。中身がほとんどパソコンな上に常時接続で、カメラもGPSも付いているとくれば、いくらでも遊びようがあったわけです。不可能だったことを可能にする遊びは楽しいもの。ジェイルブレイクする派を横目に、当サイトではよくビジネスやライフハック系のアプリ紹介記事を掲載して、はてブを頂いたものでした。

その後、iPhone 4、4Sでは、それまでソフトバンクだけだったキャリアにauが参入したり、端末実質無料や機種変更しやすいプランが増えたこともあり、オシャレでスタイリッシュなケータイの代表格としてユーザー層をガツガツと広げていきました。この時、SNSがキラーコンテンツとなったことも大きく影響しました。mixi疲れのユーザーがTwitterやFacebookに流れ込んだと思ったら、東日本大震災をきっかけに非常時の連絡手段やグループ活動の拠点として注目され、さらにはデコメ需要を取り込んだLINEがすごい勢いでほぼ標準連絡手段の地位を築いていきました。

iPhoneキャズム超えのカギは、ビジネスやライフハックではなく、コミュニケーションだったわけです。それまで使っていた携帯電話に代えて手に入れたものですから、本質的にコミュニケーションツールとして受け入れられたのも当然かもしれません。その意味でいうと、昨年誕生したApple Watchは「腕時計」だったと言えます。

当初私は、Apple WatchはiPhoneの子機のようなもの、と考えていました。iPhoneとペアリングしなくては使えず、単独で動く機能は少なく、動いても画面上で操作しにくく、通知の受け皿が増えたことは便利だけど、それ以外の利点は見えにくい。ビジネス、コミュニケーション、地図やニュースなど、いろいろなアプリを試してはみたものの、目的がそこなら結局iPhoneがあれば事足りる(むしろそちらのほうが便利)という答えにたどり着きました。唯一、iPhoneになくApple Watchで得られたのは、腕時計としての便利さでした。

小さなパソコンではなくコミュニケーションの道具となった時にiPhoneのポテンシャルが花開いたように、Apple WatchもiPhoneの子機でなく腕時計だと考えるとその本質が見えてきます。時計は時刻を示す道具ですが、ただ表示するだけの壁掛け時計とは違い、腕時計は「次の予定まであと何分」「この作業は何時までに終わらせる」といった、自分の行動に密着してくるものです。なるほど、Apple WatchはムリにiPhone的な用途に合わせず、自分の時間を管理するために使えばいいのだと気付いて、考え方が変わりました。

三日坊主を巡る考察

腕時計を使うようになったのは高校生の頃。何時から部活、何時から予備校、移動に何分、と自主的に時間の管理が必要になったことが理由でした。管理だけなら普通の腕時計で十分できることですが、ではわざわざApple Watchにする理由とは? それは、人間が意識的に管理しにくい部分を通知や記録で補えることにあるのではないでしょうか。意識しにくい部分、無意識にやっている部分、つまり「生活習慣」の管理です。

例えば、Apple Watchに組み込まれている「アクティビティ」アプリでは、自動的にその日の活動量を記録し、目標数値までの達成度をカラフルなリングで表示します。運動不足だなと思った日に、「なんとなくダラダラしてしまった」ではなく「どれくらい足りなかったか」が視覚的に把握できるのはけっこう大事なポイント。さらにその記録がiPhoneの「アクティビティ」でカレンダー表示され、中長期的な活動状況も一目で分かります。

その日の目標達成まであと少しだと分かれば5分遠回りして帰ろうとか、目標達成できない日が続いたから今日は疲れたけどジムに行こうとか、小さな達成を目指したり、ダメならダメなりに可能な範囲の改善を目指すための目印があるというのは良いことです。何も示すものがなければいくらでも気を抜くことはできますから。改善の第一歩は「見える化」です。

活動量に加え、1時間ごとに1分以上立ち上がった回数を記録する「スタンド」機能も意外に大事。1時間座りっぱなしでいると、振動と共に立つことを促す通知が届くのですが、実は座りっぱなしが肥満よりも健康に悪いことが研究で明らかになっているそうで、それを知ってからスタンドもなるべく気にするようになりました。他にも、生活習慣のためのアプリはApple Watchと組み合わせると効果的です。

設定された目標に対し、その日の状況を見える化。目標は体格や生活状況に応じて設定される

気付けば3時間くらい座りっぱなしだった生活が、これでちょっと変わった

毎日の記録をカレンダーで一覧。記録とは過去を残すためでなく、今日を知ることで明日を始めるためのもの

これは単にアプリが便利だという話ではなく、自主的・意識的に管理するのが難しいことをサポートするのにApple Watchを使うのが向いているということです。誰かに言われなくても決めたことを継続できる人には必要ないことかもしれません。しかし、決めたことをすぐに忘れてしまう私のような人間にとっては大問題。やろうと決めたのにできなかった、こんなこともできない、ダメな自分は何をやってもダメ……とどんどん評価が下がるネガティブスパイラルに陥りがちです。

でも、忘れそうな時に誰かに促されれば継続できたかもしれない。継続できれば自分の習慣にできたかもしれない。習慣が変われば生活が少し変わるかもしれない。1時間に1回立って歩くという、たったそれだけでもいいんです。1年間挑戦したのと全くしなかったのでは、何も変わらないと言えるでしょうか。そう考えてから、Apple Watchは機能の便利さを享受するというより、それによって生活習慣を今より良くすることを目的に身につけるようになりました。完璧にはほど遠いとはいえ、続いていることは確か。何もしなかった1年間とはきっと何かが違う……はず! Appleが発表会でApple Watchを「最もパーソナルなデバイス」と言ったのはこういうことだったのかも、と今にして思うのでした。

使用中のフェイス。タイマーもSiriに頼んでよく使う

ジム通いも細々と継続中。Apple Watchを使っている人はまだ見かけない

Apple Watchをあきらめますか?

とはいえ、発売からしばらくするとネット上で「使うのをやめました」という報告がしばしば見られたのも事実。知り合いにも一人いました。その理由は何だったのでしょうか。

米Wristyの調査によると、Apple Watchを使わなくなった理由として最も多く挙げられたのが「価値を見いだせなかった」というもの。分かる話ではあります。次に「できることが限られている」「遅い」といったスペック的な問題に回答が集まりました。技術の粋を集めたプロダクトといえど、人間の生活に自然な形で追従するにはまだ足りない、ということなのでしょう。

スマートフォンが情報通信環境を根底から変え、それが生活をも変えた衝撃から比べると、個人的な生活習慣のサポートは小さくて分かりにくい価値といえるかもしれません。そもそも、ちょっとした習慣で生活を変えようと使う方が意識しなくては気付かない部分。その意味では等しく万人に価値ある品とは言えないし、生活に密着するものだけに、他人の生活習慣に口出しするような気がして気軽に薦めるのも憚られます。ならばCMのように手ぶら通話やナビ等の機能に価値を感じるかというと、だいたいiPhoneで済んでしまう。

そんなジレンマというか、矛盾のようなものを抱えた微妙な立ち位置にいるApple Watch。まだ限られたApple好きのためのプロダクトといった印象で、この社会にとって何者になるのか(あるいはならないのか)は未知数と言えます。まあ、理解されないことにかけては天賦の才を誇ってきたAppleだけに、最近のモノが分かりやすすぎただけかもしれません。数年後に我々が「そうだったのか」と納得するものに成長するのか。できるのか。さっそくこの春には次モデルの登場が噂されているので、スペック面の物理的限界への挑戦も含め、どんな方向を示してくれるのかに注目です。

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