投資で大切なのは「金額でコントロール」すること

――資金がたくさんある人はどうすればよいですか?

山崎さん:投資において大切なのは、「商品の種類」で決めるのではなく、「投資する金額の大小」でコントロールすること。資産がたくさんあるからといって、色々な商品に手を出すのは良くありません。個人向け国債と国内・海外インデックスだけを持って、投資額で調整する。資産が数百万円から数億円までの範囲でなら、これだけ覚えておけば十分です。それが基本的な考えで、1番効率的です。

お金は「スケール」を自由に選ぶことができるものですから、投資する人が変わっても基本的に運用の内容は一緒で良いのです。変えるのはリスクの度合いだけ。この本のボク(大橋さん)のように、気の小さな人だったら元本保証でリスクの低い個人向け国債を多めに持っていればいいし、自分はリスクを取れると思うなら投資信託を買う。1番効率の良い3商品の組み合わせの中で、自分が「ほどほどだな」と思うリスクとリターンを選び、投資すればいいのです。

加えて、「NISA」や「確定拠出年金」など税金が有利になる仕組みをなるべく活用したほうがいいとおすすめしています。どちらも利益が非課税でお得です。

確定拠出年金は絶対にやるべき

――「確定拠出年金」ですが、企業によっては確定拠出年金として積み立てるか給料として現金を受け取る選択制を採用しているところがあります。どちらか選べる場合、積み立てをしたほうが良いでしょうか?

山崎さん:定期預金で貯めた場合は利子に税金がかかりますが、確定拠出年金の運用で出た利益には税金がかかりません。確定拠出年金の範囲外でお金を貯めるくらいなら、確定拠出年金の制度を使って貯めた方が節税になるので確実にお得です。ですから、「できるだけやってみたら?」とおすすめしています。

【確定拠出年金】
給料から年金として積み立てた分を運用する制度。金融商品は定期預金から投資信託まで幅広く、自分で好きなものを選ぶことが出来る。積み立てた分は所得税や住民税の控除が受けられる上、運用で発生した利益は非課税。企業型・個人型がある。年金なので受け取れるのは60歳以降。

【NISA】
満20歳以上で、国内在住者であれば年間100万円までの投資に対する利益が5年間非課税になる制度。例えば100万円運用して20万円の利益が出た場合、その20万円は換金しても税金がかからない。
※2016年より非課税枠は120万円に拡大予定。

(「難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!」より)

――企業拠出がない選択制拠出年金は、損をしている気がするのですが……

山崎さん:選択制拠出年金の分のお金を給与としてもらうと、その分所得税がかかります。一方、税金をとられる前に拠出年金として積み立てると、運用期間中は非課税で運用できます。会社から受け取る時の形が変わるだけですから、損をすることにはなりません。老後資金を貯めるのであれば、確定拠出年金制度を活用しましょう。

――自営業者や勤務先に企業年金制度がない場合、「個人型確定拠出年金」に加入できるそうですね

大橋さん:僕が働いている会社は企業年金がなく、確定拠出年金も導入していないので、個人型に加入しました。SBI証券という手数料が安いネット証券を選んだのですが、正直手続きはけっこう大変でしたね。わからないことがたくさんあって、証券会社に何回も問い合わせをしました。

あと山崎さんにも連絡したりして。先生は楽天証券にお勤めですが、ライバル企業から加入する方法もしっかり教えていただきました(笑)。「確定拠出年金」という名前からハードルが高くて、気軽にやってみようとは思えなかったんですけど、税制上得な制度なので、絶対やったほうがいいですよね。

【後編では、保険と老後についてお話頂きます】


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お金を増やしたい! でも、銀行に預けたころでお金は増えません。だからといって、投資をするのは難しそうだし、減るのが怖いです。じゃあ、いったいどうしたらいいのか? そんな疑問を持った「お金のド素人」が、東大卒、外資系証券や保険など金融数社を渡り歩いた「お金のプロ」山崎元に、『お金の増やし方』を聞いてきました。「お金は銀行に預けてるだけ」「お金は増やしたいが、難しいことはわからない」そんな人は必読です!