ハイレゾ対応ポータブルプレーヤー界に彗星のごとく現れたオンキヨー「DP-X1」とパイオニア「XDP-100R」。前編では両製品の共通点と相違点についてまとめたが、後編では実際に試聴したインプレッションをお届けしようと思う。前編で述べたとおり、キーワードは「バランス接続」。DP-X1とXDP-100R、どちらが自分に向いているのか、判断材料のひとつにしていただきたい。

パイオニアブランドの「XDP-100R」(左)とオンキヨーブランドの「DP-X1」(右)。本稿では実際に試聴したレポートをお届け

いざ試聴、DP-X1とXDP-100Rの違いは?

試聴には、バランス接続・アンバランス接続ともにShureの開放型ヘッドホン「SRH-1840」を利用した。このヘッドホンにはアンバランス型のケーブルしか付属しないが、MMCXコネクタを採用しているためケーブル交換(リケーブル)の余地がある。今回は、DP-X1のデモで使用されたORB製バランスケーブル(試作品)を借り受け対応した。

DP-X1では開放型ヘッドホンShure「SRH-1840」にORB製バランスケーブル(試作品)をつないで試聴した

まずはDP-X1とXDP-100Rの両方をアンバランス接続でテスト。ヘッドホン出力の場合、両機ともDSD再生はPCM変換されることもあり、Ralph Towner and John Abercrombieの「Five Years Later」やSteely Dan「Two Against Nature」などPCM音源(FLAC 96kHz/24bit)を中心に聴いた。当然、イコライザとアップサンプリングはオフ、ゲインはノーマルで試聴している。

DP-X1は、一聴してわかるS/N感の高さが身上だ。Ralph Townerのアコースティックギターは一音一音が粒立ちよく、倍音成分も心地よく聴かせてくれる。中低域の音場感はリアルで、巻き弦の微妙なストロークも精緻に描かれる。Steely Danの曲ではスネアの音がパシッ、スパンと制動よく決まり、ベースラインも濁ることがない。再生機としての個性は主張しないが、筐体内の基板セパレーション構造など徹底したノイズ排除策が奏功したか、開放型ながらモニターライクなSRH-1840の特性が存分に発揮されているようだ。

一方のXDP-100Rは、まとまりのよさが印象的。チャンネルセパレーションという点では、左右独立のフルバランス設計を採用するDP-X1に譲るが、S/N感の高さでは引けをとらない。ボーカルの定位とハリ、エレキベースのドライブ感とスピード感は際だっており、ESS製DAC「SABRE ES9018K2M」の使いこなしを実感させた。音色の傾向はDP-X1と類似しつつも、確とした個性を持たせることに成功している。

DP-X1のGUI(左)。アーティストが設定したプリセットEQが多数そろう

XDP-100RのGUI(左)。High Precision EQや低音を増強する「Club Sound Boost機能」など独自の音質調整機能を用意