【レポート】

羽田空港の機能強化は世界の空に何をもたらすのか - 東京2020に向け変わる羽田

1 羽田国際線を巡る日米航空協議の決裂から見えてくる米国の狙い

 
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2020年の東京オリンピックまで、はやあと4年半となった。競技場やエンブレムの仕切り直しが進行中で納期に間に合うかの議論も盛んだが、もうひとつ、多くの五輪来日客を受け入れるのにどうしても欠かせない議論が、首都圏空港(羽田・成田)における外国人受け入れ体制の整備・拡充だ。特に羽田に着目して、2020年までの展望を考えてみたい。

羽田空港の機能強化は国際線の昼間時間帯に着目されている

日米航空協議はなぜ決裂したのか

羽田に関しては、2015年12月2日~4日に行われた日米航空協議に注目されていた。この協議は2014年3月30日に拡大された国際線発着枠に関して、日米交渉のために保留となっていた昼間時間帯の未使用9枠の活用を決定すべく、再開されたものだ。その結果、合意に至らなかった。

従来から協議が停滞していていたのは米国側の内部事情、すなわち、デルタ航空が過大な枠数を要求したため、協議の着地点が見いだせない背景があったとされている。しかし、デルタ航空としても日米各社で9枠しかないところに、1社で20枠を要求してもかなうはずがないことは重々承知のはずだ。これに対し、米国運輸省や国務省も米国航空会社への事態解決の説得を行わず、米国政府としても日本に対して、今回の協議で妥協する必要性を持たなかったというところだろう。

現在、米国線のための発着枠の残余が9枠しかないことは厳然たる事実であり、2016年夏ダイヤから増便を行うことは、日米双方(政府および航空会社)が暗黙の了解に達しているとされる。とは言え、昼間時間帯の発着でなければ米国東海岸への直行便のダイヤはいびつなものとなり、羽田深夜発/東海岸深夜着になれば成田線に比べて競争力に欠ける。現在は西海岸やハワイ線しか羽田から就航できていないため、このいびつな状態の解消が急務と言える。

日米航空協議の決裂には、デルタ航空の過大な要求も一因している

その中でも今回の合意を見送り、2016年に都内で開催が予定されている次回の協議に結論を先延ばしにしたのには、もっと先の議論が絡んでいたと思われる。つまり、「2020年度までに増枠される『3.9万回』のうち、米国航空会社にどれだけ配分してくれるのか」のせめぎ合いがまとまらなかったのではないだろうか。

「五輪成功」のためタブーに挑む

この「3.9万回」は現在、国土交通省が検討している新飛行経路を運用した羽田空港の昼間時間帯の発着枠拡大の本数である。羽田の深夜・早朝時間帯以外の国際線は年間約6万回だが、新飛行経路を運用すれば、2020年には年間約9.9万回と最大で年間約3.9万回(約1.7倍)の発着回数の増加が可能になる。

この新飛行経路の計画では、運用時間や条件を限定した上で、従来タブーと言われていた「離着陸時の市街地の上空通過の拡大」を行う。2020年までに羽田・成田両空港で7.9万回、羽田においては年間3.9万回の発着枠を増加させる方針を示し、現在、国交省は地元住民への説明会を行っている。

この発着枠の増加策はこれまで何度も検討の俎上(そじょう)に上ったが、実行には移されなかった。本来4本ある滑走路を有効に活用するためには、どんな風向きでも離着陸が効率的に行える管制を行いたいのだが、昼間時間帯の市街地への騒音増加を住民に納得してもらうことの厳しさを関係者は皆実感していたからである。対象区域が大田区(東京都)と川崎市(神奈川県)、そして千葉県にもまたがる広域となるため、損害補償を行うとなれば莫大なものになる可能性がある。

そうした中で「東京オリンピック誘致」という国民的課題が飛来したため、対外的にも首都圏空港容量の拡大が必須の使命となった。地元住民に対しても、「東京オリンピック成功のための協力」をお願いしやすい環境が整ったというわけだ。

敷地の制約等から「井げた状」に並んだ羽田の滑走路は世界的にも複雑な構造となっており、5本目を新設しても費用対効果は高くない見通しとなっている

米国航空会社への配分は最大15枠

話を日米路線に戻す。今後増加させられるのが年間最大3.9万回とすると、1日当たりの離発着(往復)回数は53枠にすぎない。相手国と日本側で折半すると外国航空会社に26.5枠。これを欧米・アジアの参入要望する全航空会社で分け合うのだ。

仮に米国に10枠行ったとしても、現在の未配分枠(9枠を日米で折半するため、米国側は多くて5枠)と合わせて15枠が最大となる。それを3大米国航空会社(アメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空)で分け合って、1社5枠というのが常識的な線ではないだろうか。

日米間の問題は常に政治的にデリケートな問題となる。この際、将来の配分まで決着しようという国交省の意気込みがあるものと思われるが、米国側の着陸点探し(行政および各航空会社間)が見いださせるのかは不透明な状況だ。

国際ハブ空港としての羽田の役割

米国側の航空会社が目先の1枠にこだわらないのには、日米路線特有の事情がある。それは「地点間需要と乗継需要の関係」だ。

日本と米国間の両国間需要(先の乗継がない)は日本人で7割以上だが、逆に米国人は日本行きとその先のアジア行きが半々と言われている。米国航空会社はアジア各国向け需要を東京線に取り込めないと、収支は厳しくなる。デルタ航空が言う通り、「以遠路線の十分なネットワークがないと、日米間の運航便を完全に埋めきれない」のだ。これは、他の米国2社についても同様だ。

他方、利便性のいい羽田の昼間時間帯を日本側で埋められると、自国の米国人需要もごっそり持っていかれる可能性がある。アライアンスを組んで収入プールをしたとしても、自社メタル(機材)で多く運んだ方が有利だ。また、日本側の航空会社は米国以遠の乗継比率が小さいことと、羽田からアジア各方面への共同運航を含むネットワークが米側より充実しているため、羽田からの米国路線の使い勝手は米側よりはるかにいい。

JALとアメリカン航空は共同事業を提携しており、共同運航便のほか機内食などの機内サービスにおいても協力している

日本側の航空会社にとっては、自国がアジアと米国の中間にあるのだから当然とも言えるが、羽田が国際ハブ空港として一定度機能できており、ANAが最近急速に国際線の軸足を成田から羽田に移している背景もよく分かる。このあたりに羽田枠決着に対する日米の温度差があるのだ。

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インデックス

目次
(1) 羽田国際線を巡る日米航空協議の決裂から見えてくる米国の狙い
(2) 「成田縛り」崩壊で成田はどうなる? 羽田の国内線拡大やLCC参入は?
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