【インタビュー】

オシロ+プローブ+ソフトのトータルソリューションを推進 - MDOシリーズでオシロのGame Changerとなったテクトロニクス

計測機器大手のテクトロニクス社は12月9日、スペクトラムアナライザ機能を含む、最大6つの計測器機能を1台に統合できるミックスド・ドメイン・オシロスコープ(MDO)の最新シリーズとなる「MDO4000Cシリーズ」を発表した。2011年に初めてMDOシリーズが発表された当時、同社は同製品をカスタマに向けて「Game Changer」となる製品と説明していたが、あれから4年を経て、本当にゲームチェンジが実現できたのか、そして今後のMDOシリーズはどのような方向性に向かって進んで行くのか、米TektronixにてMainstrearm Oscilloscopes(メインストリーム・オシロスコープ)のGeneral Managerを務めるChris Witt氏に話を聞いた。

オシロスコープもさまざまな性能のものがあるが、同社が規定するメインストリーム領域は、アナログ帯域が100MHz~3.5GHzに対応する機種群で、それ以上をハイパフォーマンス、それ以下をベーシックと呼んでいる。また、各種オシロスコープ本体のほかに、測定に必須であるプローブについても事業部として存在しているが、2015年よりWitt氏がマネージャーを兼任する体制へと変更がなされた。プローブとメインストリームオシロスコープの両方を1人が担当するということは同社としても過去、ほとんど例のないことであるとのことであるが、Witt氏は「顧客にオシロスコープの話を聞きに行くと、チャレンジしていく課題の話題として、どうしてもプローブが出てくる。そういった意味では、オシロとプローブの両方のニーズを1人で聞けるため、今後の開発にスムーズにそうしたニーズを盛り込むことが可能となった」と、時代の要請でもあったことを窺わせる。

米TektronixにてMainstrearm Oscilloscopes(メインストリーム・オシロスコープ)のGeneral Managerを務めるChris Witt氏。手元にあるのが、12月に発表されたばかりの「MDO4000Cシリーズ」

また、MDOはGame Changerとなれたのか、という点については、「なれた」とあっさりと肯定。2011年の発売以降、独特の周波数ドメインと時間ドメインを同時に表示できるという特徴がカスタマから評価を受けて、同社の中でももっとも伸びているカテゴリとなっているという。

そんなMDOシリーズの最新世代となるのが12月9日に発表されたばかりの「MDO4000Cシリーズ」だが、これについては、「2014年にMDO3000シリーズを発表し、そこに搭載した各種機能が好評だったことから、4000シリーズにもそうした機能を搭載したものが4000Cシリーズだ。だから、前世代となるMDO4000Bシリーズを拡張したモデルでもあり、3000シリーズのハイエンド版という位置づけのモデルでもある。そのため、MDO4000Bシリーズでは存在していた帯域100MHzモデルは4000Cシリーズでは提供する予定はなく、MDO3000シリーズにその部分は対応してもらう」とのことで、4000Cシリーズは、4000シリーズとしての性能向上を図りつつ、3000シリーズの利便性を取り込んだ、従来のMDOをうたっていた「6 in 1」からさらに一歩進んだ「6 in 1+」という位置づけにあるとする。

そうなると、ある意味、1つの完成系ではないかとも思えるが、同氏は「決してこれがMDOの最終形態ではない。今後5年間で、さまざまな機能をさらに統合していくことになる」として、さらなる発展が続くことを強調した。

とはいえ、ボトルネックとなるのが性能は高いのはわかるが、価格も高い、という話がカスタマから出てくることも理解しており、「IoT関連を中心にそうした(コスト関係の)ニーズがあることは聞いており、理解もしている。しかし、4000Cシリーズのプラットフォームは高価であり、3000シリーズの価格で、同等の機能を、といわれるとチャレンジな話となる。今後、技術の革新が進めば、やがては対応できるようになると思う」と、さらなる技術開発に意欲を見せた。また、価格という点では、スペクトラム・アナライザ(スペアナ)などの機能は購買の時点で、余分な機能はいらないから、もっと安いものを、といったニーズも一部からあるが、「MDO3000や4000については、他社のスペアナがついていない同等モデルの価格帯と同じであるので、実はMDOを選択したほうが得」としている。ちなみに4000Cシリーズではスペアナははじめからオプション扱いとして提供しているとのことである。

もう1つ、MDO3000/4000シリーズの特徴として、多機能ながら持ち運びが可能、という点があり、事実、サービスマンがクルマに乗せて、客先まで持って行き、そこで計測を行う、といったことも増加しているという。ただし、AC電源に接続する必要があり、バッテリ駆動はできない。「現状、MDOシリーズは消費電力がバッテリで駆動できるレベルほど低くはない(MDO4000Cで最大250W程度)。ただし、AC電源からバッテリに変えることで、ノイズの影響を減らせたり、といったメリットがあることもわかっているし、将来的に、そうしたニーズが高まれば考えていきたい」と、前向きの回答を述べたが、その際は低消費電力用に新規設計を行う必要があり、実現までの道のりは簡単でないことも語られた。

また、「持ち運ぶと、壊れたり、校正し直しが必要になったりするのではないか、という不安を良く聞く。確かに、ぶつけたり、落としたりすれば話は別だが、普通に使ってもらう限りは、高い耐温度性を有しているほか、ちょっとした振動が加わっても精度が狂うことはないので、そうした利用で再校正が必要になったという話はほとんど聞いていない」とするほか、4000Cシリーズからは新たなサービスプランとして、落下や静電気による故障、果ては作業中にコーヒーをこぼして壊した、といった不意の故障をカバーする「トータル・プロダクト・プロテクション(TPP)」の提供がオプションとして開始された。契約はMDO4000Cシリーズ4製品いずれも同じ金額で、3年間もしくは5年間の期間を選択することができる。

「TPPは計測機器メーカーにとって、新たな考え方だ。相当なチャレンジだと思っており、MDO4000Cシリーズ販売開始後の数カ月の間でカスタマニーズを見極める必要があるが、好評であれば、既存のほかの製品群などにも適用するかどうかを検討したい」と、同社でも未知数の施策であり、今後のカスタマからの受け取られ方次第であるとするが、そうした新たな取り組みも積極的に進めていくことで、オシロの活用促進を図りたいとする。

なお、今後のMDOの開発の方向性について同氏は、「MDOがターゲットとしているのは、パワー(電源関係)、(小型の低電力機器から工場設備のような大電力機器まで幅広い)産業分野、自動車、RF市場と幅が広いが、それぞれの市場で要求が異なる。低ノイズ、低消費電力、多機能とその方向性もさまざまで、それらを見極め、新たな取り組みの実施や必要とされる機能や性能の実現を目指して行きたい」としており、オシロスコープのプラットフォームのみならず、プローブ、そしてソフトウェアの三位一体によるトータルソリューションでの開発投資を進めていくことを強調した。

また、「SiCやGaNなどのワイドバンドギャップ半導体など、新たなニーズも次々と登場してきている。また、IoTや自動車のエレクトロニクス化の進展など、新たなトレンドも出てきており、製品開発サイクルの短縮化ニーズも強まっている。カスタマの皆さんには、MDOのような、手軽にアップグレード可能な計測器こそが、色々な用途に長く使ってもらえるものになると信じて積極的に開発を進めており、カスタマのチャレンジに応えられるソリューションを作っていくことを使命にしている」としたほか、日本にも多くのカスタマに向けて、「さまざまなニーズがあることはわかっているし、我々は、そうしたニーズに真摯に向き合って、それにマッチした製品を今後も提供していくつもりだ。ぜひこれからのテクトロニクスに期待してもらいたい」とメッセージを送ってくれた。

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