スタイル、信念に基づいた投稿を続けて世界観を確立させる

――― Instagramを活用する上で注意していることはありますか?

田中氏 : あまり、宣伝臭を出さないよう意識しています。InstagramもTwitterやFacebookと同じく、広告が表示されますが、とくにInstagramにおいては、宣伝要素を含んだ投稿が出ると消費者はネガティブな感情を抱くような気がします。

そのため、一見すると企業広告っぽくないものの、ビジュアルにブランドが含まれていて、消費者が見て「きれいだな」「面白いな」と思っていただけるクリエイティブを出すよう、注意を払っています。

青空の抜け感や水の動きをとくに大事にしていて、クリエイティブ・ディレクターには「今回は水の激しい動きを」「炭酸っぽい水しぶきで」「やさしく見せたい」など、各ビジュアルをどう見せたいか、イメージを丁寧に伝えています。

ちなみに、現在アップしている40数点の画像のうち、広告として出したのは10点ほど。効果の良いものを重点的に出すやり方ではなく、すべてを展開していきました。というのも、今の時期はフォロワー獲得・増加を意識していないからです。

Instagramを通じてブランドのイメージを伝えたい、といった目的から始まっているので、まずはブランドの世界観を作るのが先決。そこに消費者にも参加していただく、といった意図があります。

――― 消費者も、TwitterやFacebookでは得られないコンテンツをInstagramに求める傾向があるのでしょうか?

そうですね。人々がInstagramを見る目的は、他のSNSを見る目的とはまったく異なると感じます。そもそも求めている情報が違うため、Twitterで流行るものをInstagramに投稿しても、あまり反応が良くない印象です。

Instagramは現在、企業だけではなく、個人ユーザーからもアクティブに使われていますが、それなりにフォロワーがついているユーザーに共通していえることは、自身のスタイルや信念に基づいた投稿をし続けているということです。

企業がInstagramを活用するにしても、そういった考え方でやらなければ、上手く使いこなせないですし、共感を得られない気もしています。世界観の統一されたビジュアルを出し続けていると、それらが蓄積した頃に「い・ろ・は・すは◯◯なイメージだよね」との見え方が確立するはずです。

Instagramは、1枚の画像が出回って話題になるというよりも、ある軸に沿って使い続けることで、ブランドのイメージや世界観が定着するプラットフォームだと思います。最初はあまり知られていなかったとしても、徐々に「性格」のようなものがにじみ出てくると良いなと思っています。

人気インスタグラマーの協力で、ブランドの認知拡大や知見獲得に成功

――― 8月にはInstagramを活用したリアルイベントを開催されていましたね

水の日である8月1日に「い・ろ・は・す Meet」を開催し、参加者にはおもいおもいの方法で、水の美しく斬新な一面を捉えた「LOVE WATER PHOTO」を撮影してもらいました。これらの作品は、共通のハッシュタグ「#いろはす Meet」「#LoveWater」から閲覧することができます。

「い・ろ・は・す Meet」の様子

「LOVE WATER PHOTO」受賞作品一覧

この結果、Instagram利用者が集まって写真を撮り、Instagramを楽しむイベント「インスタミート」としては、日本最大規模となる187人に参加してもらうことができました。

また、当日いらした人気インスタグラマーの@halnoさんと@wacameraさんとは、11月の動画キャンペーンでもコラボレーションさせていただきました。

――― なぜインスタグラマーとコラボレーションした動画を展開しようと思ったのですか?

人気インスタグラマーの方々は、各自の決めたテーマやルールに沿って画像をアップしています。これは、い・ろ・は・すがInstagramで行っていきたいことと通じるものがあると思ったのです。

動画の内容については「インスタグラマーがCMを作ってみたらどうか」という発想からスタートしました。実際に放映しているテレビCMでは、阿部寛さんが水源から水を運んで配る様子を描いています。これを参考に、動画では@halnoさんがホーキに乗って水を運んでくる、といったクリエイティブで見せようと思い浮かんだんです。

加えて、普段は静止画を投稿している@halnoさんを動画で見せるのも面白いなと思いました。YouTubeでメイキング映像を公開していますが、@halnoさんには350回以上ジャンプしていただき、その模様を@wacameraさんに撮影いただきました。

い・ろ・は・すの世界観と国内外で支持されるインスタグラマー二人のコラボで、ほかにはない表現方法を打ち出せたと思います。15秒の短い動画とは別に、YouTube上に投稿した30秒の本編動画は29万回再生(2015年12月10日時点)を記録しています。



ちなみに、お二人には企画の段階から入っていただき、相談しながら進めてきました。二人合計で42万人超のフォロワーを抱えていらっしゃるので、力をお借りして認知拡大もできれば良いなとは思っていましたが、Instagram活用における学びをいただけたことが最も大きな成果でした。

――― 最後に、今後の展開を教えてください

Instagram活用のベースは徐々にできてきたので、上手く使いながらも、これからどのようにして活動を進化させるか、模索する段階にきていると思います。

全体のお話をすると、2016年も引き続き、い・ろ・は・すブランドを通じて水の魅力を伝え続けたいです。私たちが森林に対して行っている活動など、まだ大々的にお伝えしていない環境への取り組みを知っていただくような発信をしていきたいと考えています。

根本にある「い・ろ・は・すの水の良さや楽しさを知ってもらいたい」という思いは変わりませんが、真面目すぎるコンテンツにならないよう、いかに面白く伝えるか、消費者を巻き込める施策を行うか、といったことが今後のカギになると思っています。