不妊で悩むカップルの約3分の1は男性に原因があります

「妊娠したい」という理由で産婦人科に来られるのは主に女性ですが、約3分の1のカップルは、男性にも原因があります。今回は、男性不妊の検査と治療法、費用についてお話しします。

検査は「フーナーテスト」と「精液検査」

男性の検査はというと、基本は2つ。「フーナーテスト」と「精液検査」です。それぞれの費用は、フーナーテストのみでは保険適応の場合で数百円。精液検査は男性の方が来院される場合は保険適応で数百円、自費の場合は1,000円~数千円です(特殊検査のぞく)。

まずフーナーテストは、性交渉後の子宮頸管粘液(子宮の入り口に分泌されるもの)の中にある精子の状態を調べる検査です。排卵の頃(排卵前~排卵時)に性交渉をし、その後できるだけ数時間~12時間以内に来院していただきます。診察では子宮頸管粘液を採取し、その中の精子を数えます。そこに高速運動精子がいれば、子宮を通った精子は、卵子と出会うべく卵管まで到達できているはず、と考えます。

フーナーテストが不良になる原因は、子宮頸管粘液が粘調、運動精子が少ない、抗精子抗体陽性などがありますが、いずれも治療法として「人工授精」によるタイミング治療を行います。

人工授精での妊娠の確率

男性が人工授精ですることは、精液検査と全く同じ。つまり、検査用の清潔な容器にマスターベーションで射精していただき、数時間以内にクリニックに持参する、または院内で採精します。いただいた精液は、精液検査の後、精子洗浄液で運動精子を回収し、子宮内にチューブで注入します。名前は「人工」とつきますが、性交渉との違いは、精子が膣に入るか、子宮に入るかだけなので、あくまでもタイミング治療といえます。もちろん、同周期に性交渉をもっていただいて大丈夫です。

人工授精は、挿入できても射精しない「射精障害」や、勃起しない「勃起障害」の方でも可能です。性交渉だと、「この日に」と言われるとなかなかできなかったりしますよね。そんな時でも、マスターベーションで射精できれば、排卵のタイミングを逃さないので有効です。

なお、性交渉によるタイミング治療での1回での妊娠率は、女性の年齢が20代で約20%、30代で約10%。一方、男性因子がある場合、1回の人工授精の妊娠率は約6~7%です。また、累積妊娠率は3カ月で50%以上になりますが、6回程度で頭打ちになります。人工授精は自費治療で、費用は1.5万円から3万円程度が多いです。

後編に続きます。

※自費費用は、施設により異なります
※保険には診察料などが別途必要です
※画像と本文は関係ありません

記事監修: 船曳美也子(ふなびき・みやこ)

1983年 神戸大学文学部心理学科卒業、1991年 兵庫医科大学卒業。産婦人科専門医、認定産業医。肥満医学会会員。医療法人オーク会勤務。不妊治療を中心に現場で多くの女性の悩みに耳を傾け、肥満による不妊と出産のリスク回避のために考案したオーク式ダイエットは一般的なダイエット法としても人気を高める。自らも2度目の結婚で43歳で妊娠、出産という経験を持つ。2013年10月9日、「婚活」「妊活」など女性の人生の描き方を提案する著書『女性の人生ゲームで勝つ方法』(主婦の友社)を上梓。