【レポート】

ノーベル物理学賞受賞者の天野教授が語った半導体の未来 - SEAJ30周年記念講演会

 

日本半導体製造装置協会(Semiconductor Equipment Association of Japan:SEAJ)がこのたび創立30周年を迎え、それを記念して、式典と講演会が東京で12月8日に開催された(図1)。

図1 SEAJ創立30周年記念講演会の様子

図2 牛田一雄SEAJ会長 (ニコン代表取締役社長)

まず、2015年に新たにSEAJ代表に就任したニコンの牛田一雄社長(図2)が挨拶し、「SEAJは、1985年に設立されて以来、最初の20年間は、シリコンサイクルという景気の波に影響を受け、多少の好不況を繰り返したとはいえ、右肩上がりで成長することができた。しかし、2008年のリ―マンショック以降、ビジネス環境は大きな試練に見舞われた。2011年には東日本大震災に見舞われた。このような苦境の中でも、試練を乗り越えることで世界と戦える強さを身に付けた。日本の半導体装置メーカーは世界最先端の技術を開発し、新製品を積極的に海外に展開し、高いシェアを維持している。近年は、政府の成長戦略によりビジネス環境が改善されつつある。これをチャンスととらえて、半導体装置業界もアベノミクスの成長戦略の一翼を担えるよう会員企業が一丸となって世界に挑戦し、頑張っていきたい」と将来への抱負を述べた。

図3 名古屋大学の天野浩教授

次に、名古屋大学未来材料・システム研究所未来エレクトロニクス集積研究センター所長の天野浩教授(2014年ノーベル物理学賞受賞者、図3)が「窒化物半導体デバイスの歴史と今後の展開」と題して講演を行った。同氏は、今から56年前の1959年にドイツでVon H.G. Grimmeissが世界で初めてGaNが発光することを見つけて以来、日本で発光効率の高い、実用的な青色LEDが発明されるまでの長い歴史を紹介した。現在、深紫外LEDの開発に注力しており、これが量産化できれば、簡易型水浄化装置に応用でき、安全な飲料水にアクセスできない開発途上国の人々を救えると意欲を燃やす。

そして、次にGaNのパワーデバイスへと話題を移して、次のように述べた、

「エネルギー問題に目をやると、2023~25年を越えるあたりから、世界のGDPの伸びに電力供給能力が追いつかなくなると懸念されている。この問題を解決するためには、LED照明による省エネルギーだけでは不十分なので、エレクトロニクス全体で貢献しなければならない。1つの可能性として、パワーデバイスの普及がある」

「パワーデバイスの市場規模は、2020年にシリコン系が2兆6000億円規模、これに対して新たに登場してきているSiCやGaN系は未だSi系の1/20から1/10の規模しかないが、将来はどんどん伸びていく。なぜなら、太陽電池の直流出力を交流に換えるにも、電機自動車で電池出力をモーターを駆動するために交流に変換するにはインバータが必要であり、パワーデバイスの出番だ。Siの絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ(IGBT)の変換効率は95%で、電力損失は5%となっている。バンドギャップの大きな材料を使えばサイズを小さくでき、直列抵抗を減らせるので、電力損失はSi の1/6から1/10ぐらいに減らせる」

「現在、パワートランジスタ基板には、SiCはSiより高耐圧、GaNはSiよりハイスピードのスイッチング(MHzから数百MHz)という特徴をそれぞれ生かした棲み分けがある。従来はSiベースのGaN-on-Si基板しか入手できなかったが、最近、GaN-on-GaN基板の開発が進んできた。これを使えば電流を縦に流せるようになるので集積化して大電流を流せるようになる.ので、将来は、高耐圧のGaNデバイスが可能になるだろう」

天野研究室への韓国からの留学生が中心になって3次元構造のGaNデバイスの開発を行っているという(日本ではかつては電子工学分野が一番人気だったが、いまはがた落ちで、特に博士課程へ進学しようという学生は少ない。天野研究室の8人の博士課程学生の内6人は外国からの留学性というありさまだという)。

最後に、日本のエレクトロニクス復権と大学の役割について、「日本の輸出品の長期推移は、大昔は生糸だったが、エレクトロニクスは1990年代にピークを打ち、その後は衰退の一途をたどっている。エレクトロニクスをなんとかV字回復させねばならぬが、大学としても何とかこれに貢献したい。大学のシ―ズ研究はそれなりの評価を受けてはいるが、産業に結びつける所が弱いと言われている。シ―ズ研究と実用化の間に横たわる"死の谷"を超える仕組みが欠けていた。名古屋大学ではその仕組みをつくるために、組織を変えて枠組みを整えつつある。大学で起業家を育てるようにしていきたい」と述べた。

そして、「GaNデバイスに関する研究はいままで各大学でバラバラにやってきた。これを組織化するため、名古屋大学、名古屋工業大学、名城大学、豊田工業大学、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構(NIMS)が中心になってオールジャパンのコンソーシアム("GaN研究コンソーシアム"を今秋設立した。当初の9大学23企業から14大学27企業(2015年12月現在)へと参画する大学や企業が増えてきている。世界をリードする省エネルギーイノベーション(社会的・経済的価値)を起こしたい。新産業創出のため、製造装置開発でSEAJの会員企業の協力をお願いしたい」と述べ話を結んだ。

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