IDTの社長兼最高経営者を務めるGreogory L. Waters(グレゴリー・ウォーターズ)氏

IDTは、12月7日(米国時間)に買収が完了したZMDI(Zentrum Mikroelektronik Dresden)の製品ポートフォリオを取り込んだ新生IDTがどういった方向性のビジネスに向かっていくのかについて、12月15日、同社の社長兼最高経営者を務めるGreogory L. Waters(グレゴリー・ウォーターズ)氏が都内で会見を開き説明を行った。

ZDMIはもともと自動車向け半導体やセンサ関連に強みを有している半導体ベンダで、IDTのコアコンピタンスであるタイミング半導体やパワー半導体、RF半導体などと組み合わせることで、ソリューションとしてのシナジーが期待できるようになるほか、ZDMIが抱えている自動車関連を中心とした顧客は、旧来の顧客と重なるところが少なく、成長性の面でも有利である、という。

これまで同社は、「4G Infrastructure」、「Network Communications」、「High Performance Computing」、「Power Management」という4つのビッグトレンドにマッチする製品群の構築を進めてきた。しかい近年は「4G Infrastructure」、「Network Communications」をまとめて「Communications Infrastructure」という市場として語ることが多くなっており、3つのビッグトレンドといった状況であったが、今回のZDMIの買収により、新たに4つ目のビッグトレンドとして「Automotive」が加わることとなる(正確には、4つのアプリケーション市場「Data Center」、「Communications Infrastructure」、「Consumer」、「Automotive and Industrial」がトレンド、ということとなる)。

新生IDTが狙う4つの市場

Waters氏は、「買収前のIDTの成長率は高く、2015年度も売上高は約20%増となる5億7290万ドルを達成。一方ZDMIの年間売上高は8000万ドルで、これが次年度以降、IDTの売り上げに加わってくるほか、成長機会の幅を広げることにつながる」とし、「ZDMIの買収により、これまでインフォティメント機器向けにタイミング製品を提供する程度であった自動車市場への本格的な参入が可能となる。自動車のエレクトロニクス化が進む現在、さらなる安心・安全の実現に注目が集まっているが、そうしたニーズに対し、我々はメモリ製品を中心に良いポジションにあると考えている」と、自動車分野でのシナジー効果が特に期待できることを強調しており「戦略としては、自動車関連だけで4~5億ドル規模の売り上げ機会を獲得することを5年程度で得ることができると思っている」とした。

IDTのロゴがある部分が自動車(産業向け含む)における同社の従来ソリューション。基本的にインフォテインメント分野のみといった具合であった。これがZDMIの買収により、パワートレイン、ボディ、シャシーといった自動車そのものにもアプローチが可能となる

また、ZDMIは大電力向けパワー半導体も有しており、サーバを中心としたHPC分野に対しても、従来のメモリ周辺のタイミング製品などに加えて、システム全体のインテリジェントなパワーマネジメントの提供なども可能になるとするほか、日本でIDTが強いポジションにあるというコンシューマ関連では、スマートフォン(スマホ)を中心としてワイヤレス給電ソリューションの需要の掘り起こしを進めており、近い将来、スマホのみならず、ドローンやおもちゃ、家庭向け医療機器などでも活用が期待されるが、ZDMIの有するセンサなどをそこに組み合わせていくことで、新たなビジネスの機会も期待できるようになるとする。

HPC分野における新生IDTの製品ラインアップ

ネットワーク分野における新生IDTの製品ラインアップ

コンシューマ関連分野における新生IDTの製品ラインアップ

特にワイヤレス給電に関しては、これまで組み込み開発を行ったことがない企業でも、簡単に開発などができるようにと考えられた開発キットの提供も積極的に進めており、家具や施設などに組み込む、といった従来の組み込みの延長線上では考えられないような業種との連携も進められているという。

5Wのワイヤレス給電を可能とする開発キット。トランシーバとレシーバともに提供している。これを使うことで、これまでワイヤレス給電を扱ったことがない人でも、どういったことができるか、といったことを含めて、色々と手軽に試してみることが可能となる

なお、自動車といえば、日本には世界有数の自動車メーカーやティア1部品メーカーがいることから、日本での成長性について、同氏に確認したところ、「確かに、ZDMIの買収により、日本は成長性としては今まで以上に期待できる市場となった。現状、全社売り上げの7~8%のシェアではあるが、これを気に将来的には2桁%のシェアを獲得するまでに成長してもらいたい」と将来に向けた展望をコメントしてくれた。

新生IDTが公にしている顧客群。日本企業としては、村田製作所やTDK、フジクラ、シャープといったティア1に部品やモジュールの提供を行うメーカーの名前がならぶ