家族向けアプリの開発を行う会社、famitalkは12月10日、コミュニケーションアプリ「famitalk」をリリースした。ビジネスコンサルタントであり、『ソーシャルシフト』『BEソーシャル!』『新ソーシャルメディア完全読本』など多くの著書を持つ斉藤徹氏が新たに立ち上げたfamitalk、一体どういった思いがあったのか、話を伺った。

アプリ「famitalk」

エキスパートが集結した

アプリ開発の発端となったのは、斉藤氏が自分の経営する会社の経営危機をむかえた時期に、家族の支えを実感したできごとだという。それまで仕事人間だった斉藤氏にとって、家族の信頼関係が光明となり、復活の支えとなった。そういった自身の経験から、家族という、一番小さな社会の単位を大切にすることは、働く人にとっての力となると実感したそうだ。更に「家族」とは、子供にとって最初に出会う共同体。そこを大切にすることが、将来社会に出て行く上で力となる。こういった思いが結実し、「お茶の間を復活させる」ことを目的に生まれたのが、「famitalk」だった。

この家族向けアプリが注目されているのは、開発メンバーの豪華さによるところも大きい。現在9名のメンバーで開発を行っているが、たとえば石川淳哉氏は「世界がもし100人の村だったら」「日本の恋とユーミンと」など、誰でも知っているような案件を手がける広告業界のヒットメーカー。また幸田フミ氏はニューヨークで大手ブランドのWebデザインを⼿がけ、Angel of Fashion、A Project Cool Sightingを受賞。Web制作のみならず、ソーシャルメディア活動のエキスパート。現在はウェブサイトのコンサルティングを行うブープラン代表取締役だ。

そうそうたるメンバーが「社会のためになるなら」、むしろ「社会のためにならないならやりたくない」と集まったのが、famitalk」だった。

ちゃぶ台をイメージ

それでは、実際に開発されたアプリはどのようになっているのだろうか。つくり自体は非常にシンプルで、家族全員がそれぞれの端末にダウンロード、ユーザーとして登録し、グループを作成すればすぐに使用できる。「手のひらにお茶の間を」というコピーの通り、家族がちゃぶ台を囲んでいるイメージにこだわっている。

トーク型アプリに必須とも言えるスタンプ機能も実装しているが、特徴的なのは、家族に不和が発生した際に必要な言葉をラインナップに加えている点だろう。言葉のセレクトについては、コミュニケーションアドバイザーの瀬川文子氏が監修を担当している。

家族の不和や対立時に必要な言葉のスタンプ

また、ペットや赤ちゃんなど家族お気に入りのキャラクターを登録できる「アイドルトーク」機能では、お茶の間に彼らが登場するような形となる。家族の誰もが、自分の発言を「アイドル」に代弁してもらうことが可能で、たとえば言いづらいことがあった場合にも「アイドル」の言葉として発信できる。実際に発言したのが誰かは、他のメンバーにはわからない。

その他、家族のメモや予定のシェア、アルバムなど、家族に必要な機能はおよそ実装されている。AppStoreおよびGooglePlayから、無料でダウンロードが可能だ。

「親の場に子供をむかえる」

今回のリリースにあたっては、「ファミトーク応援団」として佐藤尚之氏、佐々木俊尚氏、熊坂仁美氏などのソーシャルメディア分野の著名人がアドバイザーに就任。また、アプリを最初に使う「はじめの100家族」として、サッカー日本代表の清武弘嗣氏や写真家の桐島ローランド氏など、こちらも豪華なメンバーが揃っている。コミュニケーションデザイナーとして活躍する佐藤尚之、通称さとなお氏は「親の場に子供をむかえる大切さ」を語る。

さとなお氏「最初は『既存のトークアプリでいいじゃん』と思っていたんですが、ベータ版を使わしてもらったり、比べている間に、ずいぶん違うなと思っている部分がありました。LINEの場合、子供のツールに親が入ってく、子供が主導権を握っていて、親側が媚びている形になってしまうところがある。本来であれば、親の人生に子供がいて、共有して学ぶものだったと思うんです」

"お茶の間"がなくなり、家族がバラバラに過ごす今、例えば同じニュースを見ても、親がどういう反応をしているのか子供が知ることはできない。さとなお氏は、「親子の対話ができる、という表面的なことじゃなくて、家族のツールに子供が入ってくるというプロセス。親が子供に継承する、そこが既存のアプリにはない機能」と語った。

今回はアプリを使えるような大きな子供のいる家庭が例にとられているが、未就学児を抱えた家庭内での使用、また夫婦両方の実家を交えたグループを作るなど、各家庭の形態に合わせてアレンジが可能だ。できるだけ家族の絆を深めることが、仕事の支えにもなる。シンプルだが、忘れてはいけない視点といえるだろう。