日本酒を仕入原価で提供!

店舗で特注の一合瓶に小分けされた日本酒。呑み切りサイズは酸化防止にもなる

11月に御徒町(東京都台東区)に日本酒を仕入原価で提供する「日本酒原価酒蔵 上野御徒町店」がオープンした。新橋に1号店を開いたのが4月。「入館料」として880円が必要だが、日本酒はすべて仕入原価で提供される。一合瓶に小分けされた日本酒の価格は一升瓶銘柄ならちょうど1/10の価格だ。

運営するクリエイティブプレイスの中村 雄斗社長は「日本酒一合で1,000円もするなんて利益のとりすぎ。これが日本酒の敷居の高さにもなっている。日本酒を仕入原価で提供することで日本酒にふれる機会を広げ、世界に誇る文化としての日本酒の価値を伝えていきたい」と意気込みを語る。

日本酒原価酒蔵 上野御徒町店 店内

4月にオープンした新橋店では半年ほどで45%ものリピート客を得て、売上も安定しているという。新橋という土地柄、客層は男性サラリーマンが多いが、その中でも「20代後半から30代の女性も3割以上、リピーターの女性が上司を連れてきたりもする(同店店長)」と、オヤジっぽいという日本酒のイメージを覆しているようだ。

「(一升瓶で)3000円から3500円あたりの日本酒が、その蔵元が伝えたい日本酒のイメージが強く出る(同店店長)」とする日本酒を三合呑んでも1,000円ほど。これに入館料の880円と料理やつまみをたのんで4,000円前後だ。常時50種を揃えるという日本酒銘柄には、獺祭や而今、十四代、飛露喜、田酒といった名だたる銘柄に加え、精米歩合8%という来福酒造の「来福 超精米」といった逸品が並ぶこともある(さすがに来福 超精米は一合を原価提供とはいえ2,000円を超える価格となる)。特に人気の銘柄は早々に品切れになってしまうこともあるようだが、日本各地の日本酒を一合ずつ楽しむことは、新たな日本酒との出会いになるだろう。

100種類の日本酒が味わえる!

一方で、3000円で100酒類の日本酒が時間無制限で飲み比べし放題!をうたうのが「KURAND SAKE MARKET」だ。都内の浅草・池袋に店舗を構え、この12月には渋谷にもオープンした。気になった日本酒を自由に選んで呑むことができるセルフスタイル形式で、食事の持ち込みも可能となっている。

コンセプトは、まだ表舞台には出てきてない丹精込めて造られた日本酒、美味しい日本酒に出会う機会を提供し、日本酒をあまり知らない人にも楽しんでもらうことだという。

「3000円で100種類の日本酒」というのも話題になったが、ただ日本酒を呑む場というだけではない。KURANDでは、蔵元との交流イベントも定期的に行っており、12月には旭鶴(千葉県)、長谷川酒造(新潟県)、小山酒造(東京都)が参加する。日本酒だけではなく、生産者と消費者がお互いに顔が見えるイベントは、3000円や100種類といった数字以上に日本酒の魅力を高めるきっかけとなるだろう。

ひとりひとりの好みに合わせて日本酒をお届け

千葉県香取市の老舗酒屋 油忠の25代目が新しく始めたサービス「SAKELIFE」は日本酒の定期販売に力を注ぐ。3000円と5000円の2つのコースが用意された定期購入サービスは、コースに応じて四合瓶または一升瓶の日本酒が毎月届く仕組み。

これだけならただの定期購入サービスとさして変わりはないように思えるが、「あなた専属、日本酒コンシェルジュ」を看板に掲げるとおり、購入者から「美味しかった」「先月のは好みでなかった」などのフィードバックをもとに日本酒を選んで届けているという。このほか、日本酒をより美味しく楽しめる猪口や徳利の提供や日本酒イベントの開催など、日本酒をもっと楽しく呑めるように、そして日本酒との新たな出会いを提供するというのがサービスの要となっている。

海外でも注目され始めた日本酒(Japanese Sake)。食わず嫌いならぬ、呑まず嫌いならもったいない。折しも年末そして新年とお酒とふれあう機会も多いこの時期。消費ではなく愉しみとしてお酒を呑む機会があってもよい。ハレの日を日本酒で祝うのも悪くない。

※ 記事内の価格はいずれも税別価格

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