国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集2015年」のなかで年齢階級別の未婚率の推移をみると、ほとんどの年齢層で未婚率が上昇しています。社会で活躍する女性の増大も影響しているともいえそうですが、お金の問題が関連しているのかもしれません。

男女ともに未婚率が高まっている現在、「結婚にはお金がかかる」「家族を養うほど稼ぎがない」という人が増えているようです。またバリバリ働く女性は、「結婚して仕事をセーブしたら損をする」なんて考える人も。愛に損得はないけれど、結婚して生計を一にするとなれば、おカネの問題は無視できません。結婚することの経済的なメリットはあるのでしょうか。

ふたりで暮らせば生活費の節約に

結婚しても共働きを続けるなら、世帯として収入が増えます。一方支出は、よほどの贅沢をしない限り、各人の一人暮らしの合計よりも二人の生活費の方が少なくて済むでしょう。二人の生活のために少し広めの物件に引越しをしても、家賃が二倍になることはなく、光熱費、通信基本料金などで大きく節約できそうですね。

それならあえて結婚しなくても、同棲や事実婚でも良いのでは、という声も上がりそうですが、やはり結婚することによるおカネの特典もあるのです。

「配偶者控除」で税金が安くなる場合も

結婚を機に仕事をセーブして家庭に入るという人もいます。この場合、配偶者の扶養に入ることになれば、「配偶者控除」などの所得控除が受けられて税金が安くなるというメリットがあります。配偶者控除とは、納税者本人と生計を一にする配偶者がいる場合に、38万円まで(70歳以上は48万円まで)控除が受けられるということ。

控除を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。まず収入。扶養に入る側の合計所得額が38万円以下でなければなりません。

「103万円の壁」という言葉を聞くことがよくありますが、合計所得が38万円ということは、例えばパートや派遣で働く人など、給与収入のみの人なら年間の収入が103万円以下なら扶養に入り、配偶者控除を受けることができるということです。というのも、給与所得者には「給与所得控除」という所得控除制度があり、控除額は65万円。103万円から65万円を差し引くと38万円になり、配偶者控除を受けるための所得条件に適応します。

給与所得以外に不動産所得や譲渡所得、一時所得などがある人でも、年間の所得金額が38万円以下ならOKです。

そのほかの条件に、「民法規定の配偶者であること」というのがあります。つまり婚姻届を提出して法的に結婚することが必要で、ここが同棲や事実婚と異なる、結婚のおトクな点なのです。

結婚して生計を一にして、一方が死亡してしまった場合の相続に関しても同様。遺った一方が遺産を引き継ぐ場合、結婚していたら相続になりますが、結婚していないと贈与となってより高い税金を払うことになるかもしれません。損得を考えて結婚するものではないですが、結婚にはおカネに関するおトクなこともあるようですね。

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<著者プロフィール>
武田明日香
エフピーウーマン所属ファイナンシャル・プランナー。南山大学経済学部卒業後、大手印刷会社に入社。2010年に、法人営業の仕事をしながら自己啓発のためにファイナンシャルプランナーの資格を取得。「女性がライフステージで選択を迫られたときに、諦めではなく自ら選択できるための支援がしたい」という想いから、2013年にファイナンシャルプランナーに転身。日本テレビ「ZIP!」やTBSテレビ「あなたの損を取り戻せ 差がつく!トラベル!」「Saita」「andGIRL」等の雑誌、「webR25」「わたしのマネー術」等のウェブサイトなど幅広いメディアを通じ、お金とキャリアの両面から女性が豊かな人生を送るための知識を伝えている。お金の知識が身につく初心者向けマネーセミナー受付中(受講料無料)。