スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「ACアダプタ」についてです。

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ほとんどのスマートフォンはUSBケーブル経由で給電を行いますが、多くの場合ACアダプタが同梱されています。パソコンなどのUSBポートを備える電化製品から給電することも可能ですが、外出時にもコンセントがあれば電力をまかなえるACアダプタは必需品です。

現在普及しているACアダプタは、大きく「トランス方式」と「スイッチング方式」に分かれます。どちらもAC(交流)からDC(直流)に変換するという機能は同じですが、前者の構造はシンプルでノイズが少ない反面、鉄心にコイルを巻いたトランスが格納されているために重く大きくなりがちです。後者は制御回路(IC)や高耐圧部品を必要とするためややコストが嵩みますが、効率に優れるうえ小型軽量化が可能です。

スマートフォンに関して言えば、付属品のACアダプタは大半がスイッチング方式です。この方式では、DC変換のあとスイッチ素子が高速にオン/オフを繰り返す(スイッチング)ことでパルス波の交流に変換、それを数100kHzの高周波に変換することで小型・軽量なトランスで足りるようになり、大幅な小型化が可能になりました。

スイッチング方式をさらに効率化するには、スイッチ素子がオン/オフを繰り返す動作を速める必要がありますが、制御回路の性能や損失電流の問題があります。

先日、富士通研究所が発表したACアダプタは、動作抵抗が小さい窒化ガリウムHEMT(GaN-HEMT、窒化ガリウム高電子移動度トランジスタ)をスイッチ素子として採用、あわせてスイッチングを高精度に制御するICを搭載することで損失電流を抑制し、さらなる小型軽量化と電力効率改善を実現しています。

充電速度も向上します。発表によれば、モバイル機器充電時のACアダプターの消費電力を5割削減でき、従来の3分の1の時間での急速充電が可能になるとのことです。実用化は2017年が予定されていますが、メリットが大きいだけに、充電だけでなく普及の速度にも期待できそうです。

一般的なトランス方式(左側)に並べると、スイッチング方式(右側)のACアダプタの小ささがわかる