デノンが2015年1月に発売した「PMA-50」といえば、発売後しばらく品薄状態が続くほどの大ヒットを記録したプリメインアンプ。そして先日発売された「DRA-100」は、一見して兄弟機とわかる意匠の共通性はあるものの、よく見ればサイズもボリュームノブの位置も異なる。なにが変わってなにが変わらないのか、それともまったく違うのか。DRA-100の開発・企画背景を聞いた。

DRA-100(左)とPMA-50(右)。きょう体サイズが一回り、二回り違う

川崎市・D&Mホールディングス本社にあるデノン試聴室にて取材を行った

DRA-100はここが変わった

インタビューへ進む前に、DRA-100のおもな特徴とスペック、そしてPMA-50との共通項について整理しておきたい。

PMA-50を語るうえで最大のトピックは、クラスDアンプ「DDFA」を軸としたフルデジタル設計と、デノン独自のビット拡張技術「Advanced AL32 Processing」の組み合わせだ。DRA-100はその部分に手を入れず、ランク上の音の実現とネットワーク対応によってリスニングスタイルの幅を広げようという趣旨だ。

ランク上の音を目指すためにとられた手法は、出力アップとシャーシの改良だ。出力は定格出力70W×2ch(4Ω)とPMA-50に比べ約40%アップ、パワーMOSFET前段にゲートドライバーを追加して瞬時電流供給能力も増した。シャーシはPMA-50に比べ大型化され、トップとボトムには厚さ5mm(PMA-50は3mm)のアルミ板が奢られている。

天面のアルミ板は、DRA-100が5mm厚(左)、PMA-50が3mm厚(右)

出力アップとシャーシの改良がハードウェア面とすると、ネットワーク対応はソフトウェア面の変更だ。無線LANがIEEE 802.11nに対応し、背面に有線LANポート(10/100BASE-T)が追加されたことはハードウェアの変更には違いないが、DRA-100ではDLNA 1.5準拠のネットワーク再生がサウンドリスニングの柱となる。ハイレゾ再生を重要視するであろう購入者層を思えば、こちらのほうが変更点としては影響が大きいはずだ。

価格はといえば、実売5万円台のPMA-50に対し、2倍近い11万円。コアであるDDFAは共通なため、DSD 5.6MHz(PCM変換)にPCM 192kHz/24bitという再生スペックは変わらないが、USB-DACが非搭載になるという微妙な点もある。その辺りの考えやPMA-50との製品コンセプトの違いについて、開発・企画メンバーに真意を訊ねることが今回の取材目的だ。

DRA-100の背面。PMA-50と比較すると、有線LAN端子とアナログ入力1系統が追加され、USB B端子が省略されている