【レポート】

中国・北朝鮮の国境貿易地帯にある『鴨緑江断橋』から北朝鮮を見た!

 

中国の新一線都市・大連市から300kmほど東北に進むと三線都市(※)・丹東市に到着します。

※一線都市・新一線都市・二線都市・三線都市、四線都市、五線都市という区分けは、中国ビジネス上で用いられる都市のランクであり、中国の経済誌「第一財経周刊」が中国400の都市を対象として主要な10項目に関する調査を集計したランキングによる分類

丹東市は、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と接する国境の街であり、万里の長城の東の起点としても有名で、人口は約220万人、そのうち朝鮮族の割合が20万人以上を占めているとされています。経済面では中朝貿易最大の物流拠点の地であり、その7割以上が貿易の架け橋となっている『鴨緑江大橋』を通過します。

中国・丹東市と北朝鮮・新義州市の国境『鴨緑江』

『鴨緑江大橋』は全長946.2mの長さで、鉄道と道路が通っている併用の橋です。

さらに『鴨緑江大橋』の下流側の隣には朝鮮戦争時に国連軍の爆撃によって破壊され真ん中で途切れたまま不通となっている『鴨緑江断橋』が残されています。

朝鮮戦争時に国連軍の爆撃によって破壊され真ん中で途切れたまま不通となっている『鴨緑江断橋』

鴨緑江はまさに中国と北朝鮮の国境であり、『鴨緑江断橋』の端からは約400m先にある北朝鮮の第二の都市である新義州市(写真)を確認することができます。そこには、遊園地のようなスポットに観覧車やジェットコースターがあり、そのすぐ近くには工場らしき建物がありました。ですが、丹東の住民の方々のなかには、観覧車やジェットコースターが動いている様子や、工場が稼働している様子を見たことがある人は誰もいないとのことです。

遊園地らしき中にある観覧車。丹東の人々は一度も動いている様子を見たことがないと言う

停泊している大型船。貨物を運ぶなど動いている様子はないと言う

北朝鮮の人たちは、中国・丹東市の輝きをどんな思いで見ているのか…

『鴨緑江断橋』に立ち、右側に高層ビルが建ち並ぶ中国・丹東市、左側に平地が続く北朝鮮・新義州市という構図で一帯(写真)を眺めると、経済格差が色濃く出ています。北朝鮮・新義州市側からの視点で、たった数百メートル先の中国・丹東市を望むと、そこはまさに別世界…夜になるとネオンがキラキラと輝き、暗闇に包まれる北朝鮮・新義州市との格差は一目瞭然となるそうです。北朝鮮の人たちは、その輝きをどのような心境で毎晩、眺めているのでしょうか…。

右側に高層ビルが建ち並ぶ中国・丹東市、左側に平地が続く北朝鮮・新義州市一帯を眺めると、経済格差が色濃く出ている

北朝鮮・新義州市側からたった数百メートル先の中国・丹東市を望むと、そこは別世界。夜はネオンがキラキラと輝く丹東、一方、暗闇に包まれる北朝鮮・新義州市。格差は一目瞭然

この『鴨緑江』沿いをさらに上流に向かって進んでいくと、4階、5階建てのマンションが見えてきます。一見、立派な低層マンションの佇まいですが、地元の方々が双眼鏡で眺めると、窓が存在しないのだそうです。「マンションが建ってますよ」というアピールのためだけに住むことのできない建物が造られたのでしょうか。

4階、5階建てのマンションは一見、立派な低層マンションだが窓が存在しない

そして、約20㎞ほど上流にある万里の長城の最東端『虎山長城』(写真)に到着しました。さらに長城から南側に抜けると、北朝鮮・新義州市との距離がわずか数メートルの『一歩跨』があります。柵はあるものの、目の前には北朝鮮の地が広がっているのです。

万里の長城の最東端『虎山長城』(1)

万里の長城の最東端『虎山長城』(2)

北朝鮮・新義州市との距離がわずか数メートルの『一歩跨』

柵はあるものの、まさに川を跨いで渡れそうな距離に北朝鮮の地が広がっている

数十メートル先には脱北者を見張るための緑色の監視所を確認することができ、独特の緊張感が漂う場所でした。同じ場所には『風』『星』と彫られた石碑があり、中国と北朝鮮には同じ風が吹き、同じ星を眺めているとの意味が込められているのだそうです。

緑の建物は脱北者を見張る監視所

中朝関係好転の兆し--丹東市は北朝鮮との貿易や交流を前提にした都市計画

確かに、10月10日の「朝鮮労働党創設70周年」イベントにおいても中朝関係好転の兆しが見え始め、報道によれば、10月中旬に丹東市で開催された「第四回中朝博覧会」では北朝鮮からは約100社の企業、400人規模の参加があったとのことです。博覧会には、中国と北朝鮮以外には、台湾、タイ、モンゴル、ロシアなどが参加しましたが、日本や韓国の企業は参加していません。

また、現在、完成時期が延期となっているものの、丹東市と新義州市を結ぶ全長約3kmに渡る『新鴨緑江大橋』の建設費、約20億元(約400億円)も中国側が支出しており、北朝鮮に対する経済支援の一環事業として力を注いでいます。丹東市は、北朝鮮との貿易や交流を前提にした都市計画を描いているため、北朝鮮と共存する経済構造にもなっているのです。

丹東市は、北朝鮮との貿易や交流を前提にした都市計画を描いている

北朝鮮政府が経営するレストラン。スタッフは北朝鮮の公務員で、客との写真撮影は禁止されている

今年の9月1日には瀋陽から丹東までの224kmを結ぶ高速鉄道が開業し、わずか80分で移動できるようになりました。また、年末には、大連から丹東の全長約290kmを約2時間弱で結ぶ「丹大高速鉄道」も開通する予定で、中国内陸部から丹東へのアクセスも容易になります。

瀋陽からの高速鉄道に続き、年末には、大連から丹東の全長約290kmを約2時間弱で結ぶ「丹大高速鉄道」も開通する予定。田畑に線路が続いている

中朝国境にある丹東市の動向については、今後も注視したいと思います。

執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。

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