発表会会場に展示されていたメンズ用クロノグラフ

2015年12月8日、イタリアのファッションブランド「ロベルト・カヴァリ」が、日本市場で腕時計を発売するとリリースした。注目したいのは、この腕時計ブランドのムーブメントを、スイスのハイエンド腕時計メーカー「フランク ミュラー」が担当していること。フランク ミュラーといえば“ブレゲの再来”といわれる時計師が創業したブランドで、最低でも数十万円から、高いものになると数億円という超高級腕時計を世に送り出している。

ちなみにブレゲとは1700~1800年代に活躍した時計師、アブラアム=ルイ・ブレゲ本人のこと、または彼が創業した時計メーカーのことを指す。現在の機械式時計に用いられている技術の3/4はブレゲが開発したものといわれているほどの時計師で、マリー・アントワネットから「最高の時計を作って」と依頼され、数十年の歳月をかけて時計を完成させたが、そのときにはすでにアントワネットは“断頭台の露に消えていた”という逸話が有名だ。

そのブレゲの再来と例えられるフランク ミュラーが、5~30万円ぐらいのゾーンで販売されるブランドとコラボレーションするというのだから、“驚き”ともいえる。

日本市場での成功が世界での評価につながる

「ロベルト・カヴァリ by フランク ミュラー」の販売代理店となるミスズの代表取締役、半田晴久氏は、「日本はもっとも腕時計への注文が多く、多数の時計メーカーが切磋琢磨している市場。日本で成功することはグローバル市場での成功を約束してくれることになる」と、同ブランドを日本に投入する意味を語った。

ミスズ 代表取締役 半田晴久氏

ロベルト・カヴァリ・アジア・パシフィックおよびジャパン CEO 今村幸氏

確かに、日本市場には数百におよぶ時計ブランドが海外から進出しているほか、世界初のクォーツ時計を世に送り出したセイコー、多局受信型電波時計を開発したシチズン、高い堅牢性で海外ユーザーからの支持が厚いカシオといった強力な国内メーカーも存在する。この市場で成功することは、海外での事業展開への見通しが明るくなるのは確かだ。実際、フランク ミュラーも日本市場で成功した時計ブランドのひとつ。「フランク ミュラーでは年間約40,000本の腕時計が生産されているが、そのうちの約14,000本が日本で売られている」(半田氏)という。

腕時計をしたモデルによるランウェイも行われた

ただ、ロベルト・カヴァリ by フランク ミュラーの投入は、日本市場へのチャレンジだけではないとする。機械式ではなくクォーツムーブメントを採用することで価格を抑え、若い世代でも購入しやすくするのもねらいだという。「機械式腕時計は高額で、若い世代はなかなか手に入れられない。だが、普及価格帯の製品を購入してもらい、次世代の腕時計ユーザーに“育って”もらいたい」(半田氏)。

ちなみにミスズは、「みすず学苑」に代表されるように教育事業からスタートした企業。“生徒を育てる”ということに触れ、「腕時計ユーザー」および「腕時計ブランド」を“育てる”立場だと強調することも忘れなかった。