だが、単にLNG火力であればよいというわけではない。発電効率の高い最新式のLNG火力へ移行することで、発電コストを押し下げることが必要。特に東京電力は、前述したように重い責任を負っており、ライバル企業以上に利益追求に努力しなくてはならない。

こうした情勢の中、東京電力火力発電のモデルケースといってもよいのが川崎火力発電所だ。この発電所で採用されているのは「MACC」(More Advanced Combined Cycle)と呼ばれる発電プラント。これは、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電システムで、1500℃の高温燃焼ガスによりガスタービンを稼働させ、熱効率約59%を実現している。ちなみに熱効率とは燃料の持つエネルギーを100とした場合、電気エネルギーをどれだけ取り出せたかを示すもの。約59%という数値は、東京電力のどの火力発電所よりも高い。

川崎火力発電所では、現在、1号系列「1軸」「2軸」「3軸」、2号系列「1軸」の計4軸のMACC発電プラントが稼働している。それぞれ50万kWの出力を有しており、計200万kWの発電が可能だ。さらに2号系列「2軸」「3軸」に71万kWの出力となる「MACC Ⅱ」発電プラントを急ピッチで建設中。これはMACCよりもさらに高温な1600℃級の燃焼ガスを利用した発電プラントで、世界最高クラスの熱効率約61%(暫定約58%)を目指す。

なお、この2号系列2基の発電プラントは、「2軸」が平成28年7月、「3軸」が平成29年7月に営業運転開始予定だったが、それぞれ平成28年1月、平成28年10月に前倒しさせた。これは少しでも設備効率化を早め、燃料使用量を低減するためだという。

東京電力 川崎火力発電所 所長 佐藤浩氏。MACC、MACC Ⅱの優位性を解説した

2号系列「1軸」。一番奥から「ガスタービン」「高中圧蒸気タービン」「低圧蒸気タービン」「発電機」と並ぶ

排熱回収蒸気ボイラ

さらにガスタービン稼働時に発生する排熱を回収し、その熱で作った蒸気を付近のコンビナートに提供する取り組みを実施している。通常、各工場はそれぞれ蒸気ボイラを設置して原料の加熱などを行うが、この取り組みによりその必要がなくなる。現在、千鳥・夜光コンビナート地区の10工場が川崎発電所の蒸気を利用。年間で原油換算約2.0万キロリットルの燃料、約4.6万トンの二酸化炭素排出量の削減効果があるという。

高効率の発電プラントを導入したり、排熱を利用した事業を開始したりと、収益向上のための施策を進める東京電力。電力自由化は、原発事故の影響による顧客離れを生む可能性はあるが、これまでリーチできなかった地域にアプローチしたり、グローバルでエネルギー事業を展開したりと、好機とも捉えられる。企業収益力を強化して、福島復興へと役立ててもらいたい。

敷地内ではガスタービン発電施設が解体されていた。これは震災後にタイ発電公社から無償貸与されたもの。役目を終え、解体後に返却される

川崎火力発電所からの眺め。対岸は浮島地区のコンビナートで、JX日鉱日石や日本触媒などの工場・事業所が望める

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