LINEは12月1日、東京都・丸の内にて報道陣向け発表会を開催し、LINEアプリにおける新たな取り組みとして、公式アカウントを利用したニュース配信機能を外部メディア向けに開放する「LINE アカウントメディア プラットフォーム」を発表した。

LINEアカウントを中心とした情報のエコシステムを創る

LINEはこれまで、2013年7月にスマホ向けニュースアプリ「LINE NEWS」を公開したほか、2014年4月にはLINE NEWSの公式アカウント(ID:@linenews)を通じ、ニュースを1日3回ダイジェスト形式にて配信する「LINE NEWS DIGEST」の提供を開始。これによりユーザーは、別アプリやブラウザを立ち上げることなく、LINEアプリ上からプッシュ通信でニュースを受け取ることできるようになった。

「LINE NEWS DIGEST」イメージ

「LINE NEWSの提供を開始した当時、すでにさまざまなニュースアプリが流通していたこともあり比較的に後発組で、差別化を意識する必要がありました。そのため、"やさしいニュース"をキーワードに展開しつつ、さまざまな改良も行ってきましたが、思ったほどの伸びを達成することができず。その際に行ったユーザーインタビューで、ニュースを読むためだけにアプリをインストールすることが手間だと感じるという意見をいただきました」(島村氏)

LINE 上級執行役員 コマース・メディア担当 島村武志氏。同発表会にて、LINEのニュース事業における取り組みを発表した

この結果を受け、同社は「ニュースを読んでもらうことが目的であれば、別アプリで展開するのではなく、LINE上でそういった機会を提供できないか」という発想に至り、LINE NEWS DIGESTの提供に踏み切ったわけだ。

さらに、2015年4月には、より細分化された情報と、ユーザー自身が情報を"取捨選択"できる仕組みを提供すべく「LINE NEWS マガジン」を開設。「東京トレンド」や「野郎メシ」「動物萌え」など、ユーザー自身の好みに応じて選択したマガジンを週1~2回程度公式アカウントからダイジェスト形式でプッシュ配信を行ってきた。これら施策により、ダイジェストの提供時にはMAU600万 / 1,000万友だち登録、マガジンの提供時にはMAU1,200万 / 1,500万友だち登録という大きな成長を実現したという。

「これまでの取り組みで、ユーザー自身に情報の"取捨選択"の機会を提供することが、幅広いユーザーの獲得に繋がるのだという学びがありました。一方で、LINE NEWS編集部が情報を選択している時点で限界も感じていたんです。そのため、"LINEアカウントを通じた情報提供の仕組みを開放"できないかと考え、今回の発表に至りました」(島村氏)

12月1日より開始するLINE アカウントメディア プラットフォームとは、LINEの公式アカウントを活用したニュース配信機能を外部メディア向けに開放するもの。各媒体社やメディアは、自社アカウントを開設後、LINE社より提供されるニュース配信CMSを通じ、各編集部が独自の視点で厳選したニュース記事をダイジェスト形式にパッケージングし、自社の公式アカウントをフォローするユーザーに対しプッシュ配信することができる。

一方、LINE社側は、LINEアプリおよび「LINE NEWS」公式アカウントを通じ、参画メディアのアカウントへの集客(フォロワー増加)支援を行うほか、各メディアが配信するダイジェスト記事内に広告掲載スペースを提供することにより、収益化の支援も実施。同広告枠は原則、発生した売上の50%をメディア側に分配する仕組みを採用する予定だ。

「LINE アカウントメディア プラットフォーム」におけるLINEと各メディアの相関図

なお、取り組みの第一弾として、朝日新聞デジタルや毎日新聞など大手新聞社や通信社、テレビ朝日といったTV局など計24メディアが参画し、同日より公式アカウントの提供を開始。今後も順次、参画メディア数およびメディアジャンルを拡大していく。

LINEアカウントはメディアの救世主となり得るのか

なお、同発表会にて島村氏は、Web上におけるニュースなどの情報コンテンツの"消費のされ方"について言及した。同氏によると「数を増産しようという大きな流れの中で、"非ブランド化"と"偏重傾向"が課題として挙げられる」という。

「PC時代から、ニュースはポータルサイトを通じて配信されてきました。これにより、多くのユーザーがニュースに触れる機会を得ることができましたが、一方で、どこの媒体・メディアがどのような形で提供した情報なのかを認識する機会は減っていったと認識しています」(島村氏)

これは、ユーザーにとっても「ポータルサイトの編集部が選択した」情報に触れていることになり、情報の"取捨選択"が行えるわけではない。そのため、情報に偏重傾向があることは否めないのだと説明する。

また、もう1つの情報消費の場としてソーシャルメディアがあると指摘。ユーザーは、ソーシャルメディアを通じ、ポータルサイトでは触れることの無かった情報に触れる機会を得たが、一方で、嗜好性のあるコンテンツと社会性の強いニュースが混在するタイムライン型となるため、メディアのブランドが認識されづらいほか、友人間の評価により情報の優位性が左右される傾向があるという。

LINE社の考える「現在の情報消費における課題」

「これらによって、媒体やメディア側は、ユーザーにどのような情報を優先的に届けるか、どのような重みで届けるかということを制御できていない現状があると認識しています。LINE アカウントメディア プラットフォームでは、ユーザーが媒体を選択するためブランドを認知した上で情報を得ることができます。また、媒体側も提供する情報を独自に選択することができるため、ファンの獲得にも繋がると考えています」(島村氏)

同プラットフォームを通じ、LINE社は「人の情報のよりよい架け橋」となることを目指していくと説明。"非ブランド化"と"偏重傾向"の解決により、ユーザーとメディアの接点の改善だけでなく、広告効果やマネタイズにどう影響を与えていくのか、今後の取り組みに期待する。