【レポート】

『あさが来た』、なぜハマる人が続出? ポイントは"4要素を絡めた高次元ハイブリッド"

 

11月20日の放送が視聴率25%を記録したほか、毎週の平均視聴率も右肩上がりの朝ドラ『あさが来た』(NHK)。

「なぜここまで高視聴率を記録しているのか?」という理由は、すでにさまざまなメディアで、「時代物の女性一代記」「波瑠と宮崎あおいのダブルヒロイン」「姑イビリ」「ヒロインのキュートな方言」「『びっくりぽん』の決めゼリフ」「前作『まれ』不評からの反動」などが挙げられている。

しかし、今作は数字以上にNHKに寄せられるメッセージやネット口コミでの高評価が目立つ。ここでは「なぜここまでハマっている人が多いのか?」にクローズアップしていく。

女性を前面に出した人間模様

女優の波瑠

作品の中で輝きを放っているのが、ヒロインのあさ(波瑠)と、姉のはつ(宮崎あおい)であることは言うまでもない。幼いころの「おてんばで相撲と木登りが好きなあさ」に対して、「奥ゆかしく琴と裁縫が得意なはつ」。嫁ぎ先では「姑イビリを受け流すあさ」に対して、「正面から受け止めるはつ」。そして、あさの嫁いだ今井家は繁栄し、はつの嫁いだ眉山家は没落。あさが実業家として歩みはじめる一方、はつは農作業をしながら子育てに励んでいる。

そんな2人の生き様と対比がドラマを盛り上げているが、その他の女性キャストも見逃せない。あさとはつの母・梨江(寺島しのぶ)、あさの姑・白岡よの(風吹ジュン)、はつの姑・眉山菊(萬田久子)、女中のうめ(友近)、ふゆ(清原果耶)、三味線の師匠・美和(野々すみ花)らのキャラクターが丁寧に描かれ、女性を前面に出た作品であることがわかる。

ひたすら前へ進むあさと、苦難に耐えるはつ。それぞれのやり方で家を守る3人の母親。けなげに働きながら恋心を募らせる女中。妾の話をきっぱり断り三味線に生きる美和。それぞれの人間模様が描かれる中、「わかる」という共感や、「頑張って」という応援など、男女を問わず感情移入しやすいキャラがそろっている。

かつての少女漫画を思わせる純愛

一方の男性キャストは、あさの夫・白岡新次郎(玉木宏)、舅・白岡正吉(近藤正臣)、はつの夫・眉山惣兵衛(柄本佑)、舅・眉山栄達(辰巳琢郎)、あさとはつの祖父・今井忠政(林与一)、あさが嫁いだ加野屋の中番頭・亀助(三宅弘城)など、優しく見守るキャラが目立つ。唯一、厳格なあさとはつの父・今井忠興(升毅)も、2人が嫁いだあとは見守るというスタンスに変わった。

さらに、あさに影響を与える五代友厚(ディーン・フジオカ)はジェントルマンであり、炭鉱夫の親分・治郎作(山崎銀之丞)も不器用な優しさを見せている。優しい男たちばかりなのはリアリティこそ欠けるが、その分かつての少女漫画を思わせるエンタメ性がある。

それだけに登場人物たちの恋愛模様は、これまでの朝ドラよりも多彩。遠距離恋愛のようにすれ違いの多いあさと新次郎、最悪のスタートから絆を育むはつと惣兵衛の夫婦愛に加え、五代はあさを一途に思い続け、ふゆは新次郎に秘めた恋心を抱き、そのふゆには亀助が淡い片想い。うめと大番頭・雁助(山内圭哉)にもロマンスのムードがある。

いずれも切ない描写が多く、幅広い世代に受けるタイプの純愛。ラブストーリー目当てで見ても十分楽しめる。

ビジネスドラマとしても高品質

もちろん『あさが来た』は、決して恋愛推しのドラマではなく、物語の中心は、実業家としてのサクセスストーリー。あさのモデルとなった広岡浅子は、炭鉱、加島銀行、大同生命、日本女子大を設立した明治を代表する実業家だけに、ビジネスシーンが大半を占める。

あさはどんな男性よりも優秀なビジネスウーマンであり、加野屋の一員として、あるいは経営者として、次々に困難を解決して成功に導いていく。その明るく強い姿は爽快であるとともに、「朝から一日頑張ろう」という力を与えてくれるのだ。

また、明治維新の波にのまれ倒産した眉山家の山王寺屋、新政府に認められ銀行を設立した今井家など、ビジネスの明暗や教訓をしっかり描いているのも重要なポイント。ビジネス面でこれほど骨太な描写があるのは、朝ドラとして希少だ。

『あさが来た』の口コミを見ると「脚本がいい」という声が目立つが、これはそれぞれの家族だけでなく、ビジネスを絡めて描き分けているから。女性だけでなく男性からの支持を集めているのは、こんなところにも理由があるのだろう。

4要素を絡めたハイブリッド作

もう1つ特筆すべきは、『あさが来た』が幕末からスタートしたこと。これは朝ドラ史上初のことだが、スケールアップを呼び込んだ。幕末から明治、大正という激動の時代が続く中、あさたちの日常に、世相の移り変わりや出来事を絡めているのが面白い。

さらに注目すべきは、歴史上の大物たち。大久保利通(柏原収史)、新撰組の土方歳三(山本耕史)、福沢諭吉(武田鉄矢)らを登場させ、あさたちの世界に紛れ込ませて、視聴者を楽しませている。彼らの登場シーンでは、大河ドラマのようなムードを感じた人が多かったのではないか。

ここまで書いてきたように『あさが来た』は、朝ドラらしい「ホームドラマ」に加えて、「恋愛」「ビジネス」「歴史」と全く異なる4つの要素がかけ合わせられている。しかも、それぞれの要素を邪魔せず、生かし合うような高次元のハイブリッドな作品なのだ。あなたがハマっているのは、果たしてどの要素なのか? 「毎朝の放送が待ち切れない」という人は、複数の要素にハマっているのかもしれない。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを毎月20~30本提供するほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。
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