多種多様な候補から自分好みの端末を選択でき高度なカスタマイズが可能、それがAndroidの魅力であり強みです。しかし、その自由度の反面わかりにくさを指摘されることも少なくありません。このコーナーでは、そんな「Androidのここがわからない」をわかりやすく解説します。今回は、『なぜAndroidには"本格派楽器アプリ"がないの?』という質問に答えます。

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結論をひと言でいえば、それは「レイテンシ(遅延)」の問題です。近ごろは改善傾向にありますが、端末/メーカーにより差が激しいうえ、iOSデバイスに比べると不利なことは否定できず、それがAndroid向け"本格派楽器アプリ"登場の障壁となっています。

ここでいうレイテンシとは、ユーザが操作してからスピーカーから音が鳴る(音声信号を出力する)までの時間のことを指します。一般的に、レイテンシが0.01秒(10ms)以下であれば実用に耐える水準であり、演奏に利用しても違和感がないとされますが、現在流通しているAndroid端末の大半は10msを超えています(参考)。

オーディオのレイテンシが大きいと、キーを弾いたりパッドを叩いたりという楽器アプリの操作から遅れて音が聞こえるため、演奏に使うと違和感が生じてしまいます。楽器の音色を変えるエフェクターアプリも、同じ理由で実用に耐えないものになりかねません。

一方、iOSデバイスの大半は10ms以下です。前掲したリンク先にある数値は、端末から発した音声信号が戻るまで(往復)の時間ですから、レイテンシはほぼ問題になりません。これが、"本格派楽器アプリ"がiOS向けばかりになる理由です。

iOSデバイス向けには様々な楽器アプリが用意されています。画像は「iMaschine」

ところで、オーディオのレイテンシに関する問題は楽器アプリに限りません。画面の動きと音のタイミングが重要なゲーム、いわゆる「音ゲー」では致命的な問題となります。音声を利用したチャット(ボイスチャット)も、画面と音のタイムラグが大きいとユーザのストレスにつながります。

Googleはこの問題を認識していますが、サウンドチップ/ドライバーの開発はスマートフォンメーカーの裁量に任されています。オーディオ出力にはOpenSL ESを使うようにするなど、アプリ開発の工夫である程度は回避できるものの、Androidプラットフォーム全体における根本的な問題解決は先のことになりそうです。