キヤノンから「EOS」シリーズ用の新しい小型ストロボ「スピードライト430EX III-RT」が登場した。2008年に発売された「430EX II」の後継であり、軽量コンパクトでありながら、最上位モデル「600EX-RT」と同じく電波式ワイヤレスシンクロに対応したことが見どころだ。電波式ワイヤレスにはどんな利点があるのかを検証しつつ、「430EX III-RT」の機能と使い勝手をレビューしよう。

キヤノン「430EX III-RT」とトランスミッターを装着した「EOS M3」。430EX III-RTの希望小売価格は税別36,000円

携帯性と利便性を両立したミドルクラスの新ストロボ

キヤノンのストロボは、製品名に含まれる数字が最大ガイドナンバー (発光量)を表している。つまり今回新登場した「430EX III-RT」は、最大ガイドナンバーが43であり、その3代目にあたる製品だ。ラインナップ上での位置付けは、ガイドナンバー60に対応した最上位モデル「600EX-RT」に次いで2番目に大きな光量を持つミドルクラスとなる。

外形寸法は、幅70.5×高さ113.8×奥行き98.2mmで、電池別の質量は約295g。先代の430EX IIに比べ、幅と高さ、奥行きのそれぞれが縮小し、重量は25g軽くなっている。希望小売価格は税別36,000円。EOSシリーズではもちろん、先日発売された「PowerShot G5 X」のようにホットシューを備えたPowerShotシリーズでも使用できる。

一眼レフカメラ「EOS 6D」に装着。小型軽量の一眼レフにマッチするサイズと重量だ

ミラーレスカメラ「EOS M3」に装着。やや頭でっかちになるが、バウンス撮影用にはガイドナンバー43の光量がありがたい

先代からの最大の進化ポイントは、カメラから切り離して使うワイヤレスシンクロ撮影の際に、従来どおりの光通信に加えて電波通信が可能になったこと。周波数2.4GHz帯の電波によって、カメラから離れた場所に置いたストロボを発光させる仕組みだ。

これまで、電波通信ができる同社製品は大きくて重い最上位モデル「600EX-RT」しか選択肢がなかった。屋外に持ち歩いて積極的に電波式ワイヤレスシンクロを楽しみたい人にとって、「430EX III-RT」は待望の製品といっていいだろう。

最上位モデル「600EX-RT」(左)に比べると、「430EX III-RT」(右)は一回り以上小さくて軽い

電波式ワイヤレスシンクロを行うには、別途「スピードライトトランスミッター ST-E3-RT」(希望小売価格 28,000円) を用意し、それをカメラのホットシューに装着する。もう1台のストロボ (430EX III-RT、600EX-RT) でも代用可能だ

電波通信のメリットは、光通信に比べて障害物や外光の影響を受けにくく、通信可能な距離が長いこと。光通信の場合、ストロボ側の受信部 (スレーブ) を、トランスミッター側の送信部 (マスター) に向かい合うような位置にセットしなければ、発光しないことが少なからずある。だが、電波通信の場合は送受信部の向きを気にする必要はなく、セッティングの自由度は格段に高いといえる。また日中の屋外では、太陽光の影響を受けて光通信がうまく作動しないことがあるが、電波通信なら明るい屋外でも確実に作動する。

「430EX III-RT」のワイヤレス機能は、電波通信の場合、マスターまたはスレーブとして利用でき、通信可能距離は約30m、制御数は最大5グループ/最大15台となる。電波通信を利用したリモートレリーズも行える。また、昔ながらの光通信で使う場合には、スレーブのみに対応し、通信可能距離は約15m、制御数は最大3グループ/台数無制限となる。

「430EX III-RT」のワイヤレス設定画面。電波通信マスター/電波通信スレーブ/光通信スレーブの3つを選択でき、それぞれTTLオートまたはマニュアルでの発光ができる。上位製品とは異なり、外部調光オートやマルチ発光には非対応だ

電波通信スレーブで使う場合には、液晶画面から「REL」を選択してSETボタンを押すことで、リモートレリーズ( リモコン撮影) が行える。カメラを三脚に固定して、ストロボ発光で静物などを撮る際に役立つ機能だ